「ゔっ、うぅ……」
三日も海風に煽られ、潮の香りと吐き気に耐えて、無事に中国へとたどり着いた私は気持ち悪さを押さえるために深呼吸するも独特の香りでまた気持ち悪くなる。
口の中を濯ぎ、水を吐く。
早乙女君達はプラムちゃんと先に進んでいる。私も急いで追いかけないといけない。少しだけ速く走るために荷物を置いて行こうかな。
「……っ、はあ、式尉、此処は何処かな」
「青海省です。お嬢様のご期待に添えるのは此処まで。暫し、私は彼方の相手をしてきます。句君はいつものように護衛を」
「分かった」
そう思っていた矢先にカラスやハト、キジのような羽の生えた集団が現れ、港の近くに集まっていた人達も突然の出来事に悲鳴を上げている。
「待っていたわよ。イトシキ」
「キーマ、迎えに来てくれたのかな」
「口の減らない小娘だこと」
まだ、酔いが治っていない。
戦えるには戦えるけど。
少し無理しないとキツいかな。
ゆっくりと槍に手を伸ばそうとした刹那、式尉がお店のメニュー看板を蹴り飛ばし、彼らの視線が逸れる。身体中に隠していた五十本の槍を引き抜き、一斉に五十本の槍を空を飛ぶキーマ達に投げつける。
「本日の天気は、
「切ちゃんは逃げて欲しかったぜ!」
石突きに括り付けていた鋼線を引き絞り、変則的に槍は動きを変えてキーマ達の羽に絡み付き、地面へと引きずり落とす。
句君の振るう鎖が二十本に増え、鉤状の分銅が鎖の輪に絡み、動きを止める。
「私の出番はありませんでしたね」
「ううん。注意を逸らしてくれなかったら攻撃のタイミングは無かったから、助かった。ありがとう、式尉。句君も合わせてくれて、ありがとう」
「おう」
そう言って振り返った瞬間、卵が此方に飛んできているのが見え、「危ない!?」と句君と式尉の二人を突き飛ばし、私の胸に卵がぶつかり、糸が溢れる。
パキッ、パキリ……!
眩しい?
「イトシキ、私を見なさい」
「キーマ……」
「様を付けなさい」
さまをつける?
「切ちゃん!」「お嬢様!」
私の事を呼ぶ声に意識が変わる。
「キーマ様」
「えぇ、そうよ」
「くっ。ありゃあ刷り込みか!?」
「不味いな。お嬢様は殴れる」
ゆっくりと私の頬を撫でるキーマ様の手が眼鏡に触れ、私の左目に気付いたのか。「成る程、あのときは敢えて視力の弱い方を使っていたのね」と呟く。
「切ちゃん、悪いが手加減抜きだ」
「面白い。イトシキ、私への忠誠としてお前の仲間を倒してみせろ」
「はい、承知しました」