「グッ、ゴフッ…!」
「流石は、お嬢様ッ…ガフッ…」
ポタポタと指先を滴り落ちる二人の血を振り払い、キーマ様の立つ後ろに振り返って微笑みを向けると、ドン引きしたような表情を浮かべていた。
「う、うん、帰るわよ。イトシキ、お前はマサラとコルマの二人に運んでもらえ」
「分かったかな……えと、だれ?」
「オレ達だ」「此方だ、掴まれ」
私の事を抱き上げるカラスとキジの二人に連れられ、私は句君と式尉の二人を一度だけ一瞥し、直ぐにまた前を向く。あの程度の傷なら直ぐに治るかな。
キーマ様の刷り込みは完璧だけど。
私の自我は残っている。
ほんの少しだけ命令を受けると優先してしまうけど。これに慣れてしまえばキーマ様の命令を受けても命令に背けるようになる。
シャンプーも見つけないといけない。
多分、早乙女君達と戦うことになるけど、
今回は手加減や意識的に抑えている部分、使っていなかった技も使わざるを得ない。それほど、この刷り込みの強さは深く根強い。
「? イトシキ、顔色が悪いわよ」
「鳥臭くて、気持ち悪いっ…」
「……私が、運ぶわ。流石にポテンシャルを下げるのは避けたいし。あとお前達はしっかりと風呂に入れ!」
「水浴びの方がいい」「分かる」
「キーマ様の命令でも風呂を浴びるのは個人の自由だと思うんすけど。どうしても風呂に入らないといけない感じですか?」
やいのやいのと文句を口々に告げる鳳凰山の兵士に向かって蛇の激気を放つと気絶し、そのまま地面へと落ちていくのが見えた。
「……蛇は天敵ね」
そう言って私の事を抱き上げて、更に高く飛ぶキーマ様の手が胸に食い込み、ちょっと痛く思いながら、羽毛に包まれて池の群生地の上を飛び越えるとき、早乙女君達が見えた気がする。
いや、あれは早乙女君達かな。
プラムちゃんも一緒にいたっていうことは、おそらくあそこが呪泉郷で間違いないんだろうけど。まだ上手く動かせない身体に集中する。
「……貴女の衣装も用意しないといけないわね」
「セーラー服じゃダメなのかな」
「シチュエーションというものは大事よ。やっぱり敵の手に落ちたら、ちょっとエッチなコスチュームや衣装を身に付けるのは嗜みとも言えるわね」
そうなんだ。
じゃあ、帯刀君がいつもそういうのを着てほしいとお願いしてくるのは自分のお嫁さんだって他の人にアピールするためだったのかな?
そんなことを考えながら、私はゆっくりとキーマ様の腕の中から降りて、クローゼットを開けて、衣装を取り出し始める彼女の事を見つめる。