「似合うわね」
「そうかな?」
腰に手を当てて、構える。
少し胸が出すぎているように思いながら、キーマ様の後ろを着いて歩いていたとき、ドタバタと階段を駆け上がってくる音が聴こえ、そっちに顔を向ける。
「糸色!?」
「早乙女君」
「チッ。泥棒避けの通路を通ってきたのね。おまけに、貴様の持っているソレはサフラン様の金蛇環!!あの方に何をした!!」
そう言って闘気を高めるキーマ様の真横に立ち、いつものように槍を取り出して構えた瞬間、早乙女君達が鼻血を噴き出し、私を見ないように視線を逸らした。
「お、おめえ、なんつう格好してやがる」
「おのれ、お色気の術とは卑劣なッ」
「ち、乳がこぼれそうで、いや!?違うだ、オラにはシャンプーがいるじゃあ!」
「あら、私のイトシキにドギマギしているのね。日本の格闘家は随分とオマセだこと」
クスクスと笑って、キーマ様は私の頬を撫でる。
「……まさかシャンプーにしたように糸色もテメェの僕にしたってえのか!?いや、それよりも糸色と一緒にいた句と式尉のヤツはどうした!!」
「あの二人なら彼女が倒したわ。ズタズタにね」
「死んでないかな。急所は外しているし、御庭番衆の人間は核鉄を持っている、あの程度の傷ならもう追い付いてもおかしくない」
私がそう告げるとキーマ様は驚愕と困惑に顔色を変えて、早乙女君達も私の違和感に気付いてくれた。あと数分で私はこの刷り込みに慣れる。
「イトシキ、あなたまさか!?」
「キーマ様、私は糸色切だよ。どんなに強い呪いだろうと支配だろうと関係ないかな。蛇は寸にして人を呑む。妙様や類様に認められた私が、貴女ごときに支配できると本気で思っていたの?」
「刷り込みは絶対だ!?」
「糸色景様が言っていたかな。世界は自分を中心に回っている。そう思った方が楽しい。私を自由に出来るのは、この世で私だけ、私こそが糸色切だよ」
そう言って笑顔を見せる。
────強者は、常に笑顔で在れ。
これは、糸方褸の言葉だけど。
蛇の笑みは威嚇に相当する。
「くっ。謀ったか!!」
「違うかな。私は、ただ私だからだよ」
そもそも今もキーマ様の命令に従ってしまおうとする意識を無理やりねじ伏せているだけで、もっと深く意識が沈んでいたら危なかったかな。
眼鏡に反射した自分の瞳を見て良かった。
ゆっくりと身体の調子を確かめる。
───刹那、カチッと嵌まった瞬間に右腕を振り抜いて二重の極みを撃つ。が、当たる寸前にマサラとコルマが間に割り込み、キーマ様の事を庇った。
「クソっ、覚えておけ!」
「覚えてるかな、ずっと」