数年前に起こった大戦の折、少なくとも防衛に参戦していた事は覚えているけれど。あの家系は糸逢家より血は薄く糸色景様の血脈ではないはずだ。
正式には糸色姿様の子供の子孫。
宗家の小鎌さんと句君と違って、糸色家の家名を欲しがって「糸」の名字を授かっているという話しは何度か聞いたことがあるけど。
まさか私を狙うのは予想外かな。
「とんだ災難だぜ」
「女の子の方の早乙女君」
「乱馬ってば九能先輩の起こした水柱を受けて、こうなっちゃったのよね。それより切さん変な奴らに襲われてたみたいだけど、大丈夫?」
「あれぐらい平気だよ」
そう言って力こぶを作って見せようとした瞬間、私のもたれ掛かっていた壁の真横が砕け、巨大な錘を持つ薄紫色の髪の毛を揺らす女の子が現れた。
「乱馬、殺す」
「しゃ、シャンプー…!?」
ゆっくりと私はあかねさんの隣に移動し、シャンプーと呼ばれた女の子が錘で女の子に変わった早乙女君を攻撃する姿を眺める。
「中国での彼女かしらね」
「乱馬に?!」
「んなわけあるか!オレはッ、こんなやつと付き合ってられるかぁー!」
風呂敷を広げて投げつけると同時にロッカーに逃げ込んだ早乙女君を庇い、あかねさんは砕けた壁を指差しながら「逃げたわよ」と告げる。
成る程、ウソの情報で助けたわけね。
「怒畜生!」
ロッカーを殴って歪にひしゃげさせた彼女は更衣室を出ようとしたその時、私の事を見つめたかと思えば古びた写真を取り出して、交互に見比べ始める。
「お前、
「すーすぁ?」
「中国言語の糸色だよ。スースァで合っているよ」
「写真と同じ、不思議ね」
ジロジロと私の事を見て観察するシャンプーと呼ばれた少女は満足したのか。あっさりと早乙女君を追いかけるために走り去ってしまった。
「糸色も狙われてんのか?」
「うーん、多分違うと思う。あの目はようやく見つけたみたいな感じだったから、昔に糸色家の誰かが中国に行ったときに会ってるんじゃないかな」
それに彼女は「写真と同じ」と呟いていた。
───つまり、あの写真に映っているのは糸色景様かしとりお婆様、ひとえお婆様の誰かだろう。蛮竜の件か、別の武具の話しかも知れない。
我が家に伝わる物にも大陸出自と思えるものは幾つか存在するし、それを取り返しに来るかも知れないわけだからね。