「キーマ様のために!」
「お前達を倒すだ!!」
見事に刷り込みを受けてしまった響君とムースの二人の攻撃を受け流し、防御の姿勢を取りながらサフランと呼ばれた男の子を見遣る。
キーマ様が傍に控えている。
やっぱり、ロンと同じ闘気を感じる。
「食らえ!獅子咆哮弾っ!!」
「ばっ、こんなとこで使うんじゃねえ!?」
早乙女君の言葉も空しく、響君の放った獅子咆哮弾は通路を破壊し、私と早乙女君は地面に向かって落ちていく。バット拳のおかげで飛べる私と違って、早乙女君は必死に手を動かしている。
「早乙女君、掴まって」
「どこに!?」
「手とか足とかだよ?」
「そ、そうか」
地面に激突する前に早乙女君を受け止めて、ゆっくりと身体を動かす。下手に考えるのはイヤだけど。今、戦えるのは私と早乙女君だけ。
句君と式尉は私のせいで動けない。
そんなことを考えながらサフランが取り返せと言っていた早乙女君の持っている杖も気になる。ひょっとしたら、槍に変わるかも知れないかな。
「……糸色、もしものときはおめえだけでも日本に逃げろよ。こんな秘境じゃ誰も助けられねえ」
「大丈夫かな。そろそろ身体の感覚も戻るし、此方も武器を使うつもりだからね」
そう言って私はマスター・シャーフーに預かっていたスクラッチ社謹製「試作型激気増幅手甲」を差し出す。激気を物質化し、スーツに変換する能力を搭載するとは聞いていたけど。
無事に使えるのかは怪しい。
いや、むしろその方がいいのかな?
「シャーフーのほうが爺よりオレの師匠っぽいんだよな。無差別格闘獣拳流にしてやろうか」
「フフ、玄馬さんが起こるんじゃないかな?」
私が言葉を返すと悩み始めてしまった。
そこまで悩むの?と小首を傾げながら、早乙女君に案内されて呪泉郷へと一時的に撤退し、次の戦いに備えて武器や体力を回復するために移動している途中、ボロボロにされたあかねさんが見えた
「あかね!?」
「なんで、ここに?」
困惑する私と裏腹に早乙女君は気を失っているあかねさんを抱き締めたまま、激気の流れが怒りに染まり掛けていたところを軽く頭を叩いて正す。
流石に、三人と戦うのはキツいかな。
「早乙女君、連れて帰るよ」
「ああ、オレのあかねを傷つけやがった報いは絶対に受けさせる。アイツら纏めて手羽先にしてやるから、覚悟しやがれッ!」
結局、怒る早乙女君に止めた意味はなかったかな?と思いつつ、あかねさんから僅かに嗅いだことのない香りがしたように感じる。