────私は岩肌に突き刺さった槍を取らず、近くにやって来た兵士の刺股を奪い取って、突く瞬間に柄をねじり込み、螺旋状になった刺股が強制的に兵士の頭を地面に叩きつける。
「えげつねえ」
「流石はお嬢様です」
「糸色、理不尽的パワー!」
「しつれいかな?」
ちょっとだけ舌足らずになる。
寝ずに動いているせいか。
少しキツく感じるものの、問題なく動ける。いや、むしろ眠っていないおかげで、私の脳は負荷による一時的なゾーン状態を引き起こしている。
「イトシキ、止まれ!」
「止まらないかな」
そう言ってキーマ様の手足を押さえつけるように刺股を奪い取っていき、壁に叩きつけ、刺股を壁にめり込ませて身動きを封じる。
「式尉、武装錬金の使用を許可するかな」
「御意」
私の言葉に彼女は頷いて、核鉄を構える。
「武装錬金」
鈍く輝く銀色の人工筋肉を纏っていき、式尉の背丈は3メートルを越える。代々式尉の家系は近接戦闘に於ける武威を誇り、糸色家に仕える御庭番衆の重鎮だ。
現在、式尉の称号を継ぐ彼女もまた武威を誇る。
「さあ、お嬢様のために道となりなさい」
「姉ちゃん並みだぜ、式尉!」
句君は興奮気味に叫ぶ。
圧倒的な筋肉の存在に畏縮し、鳳凰山の兵士は怯み、攻撃を仕掛けるも筋肉という鎧には勝てず、デコピンの威力とは思えない一撃を受けている。
「パワー!パワーよろし!」
「おのれっ。ムース!リョウガ!コイツらを殺せ!」
そうキーマ様に言われて現れた存在に句君はこめかみに青筋を立て、鎖分銅で脳天を叩きつぶした。それ、下手したら死んじゃうじゃ……。
「仲間じゃなかったのか!?」
「武士道に反する」
そんな時代劇みたいなことなの?と小首を傾げながら、キーマ様は私を見つめてきたかと思えば卵を投げてきた。まあ、一度見れば問題ないかな。
優しく卵を受け止めて、響君とムースの二人を卵に入れて孵化したところにコンパクトの鏡を見せると自分の意識を取り戻してくれた。
「こうなれば奥の手だ!来い!!」
キーマ様の叫び声に応えて現れた人に目を見開く。
「え?」
「キーマよ、僕を呼んだか?」
なんで、帯刀君がここに?
「フフフ、お前の荷物は改めた!そのときに見つけた男を連れてきてやったのだ!」
「そっか、そういうことするんだ」
ゆらりと臨気が立ちこめるのが分かる。
けど、もう私は止められない。
ううん、もう絶対に止まらない。
キーマ様、あなたは絶対に許さない。