「ッ、ハァ、ハアッ…!」
「フン。余を相手に良く粘ったものだ」
臨気も激気も闘気も根こそぎ吸い取られ、人間の身体に戻ってしまった身体を引きずり、熱湯の中から這い出て、サフランを睨み付ける。
サフランの肉体に於ける闘気の許容量を完全に越えているはずだ。
私の闘気は自慢じゃないけど。普通の人よりも多い。それを全部吸い取っても気力の乱れも何もなく、むしろ力を増して強くなってしまっている。
「貴方と言い、ロンと言い、なんなの?!」
「ロン?……あの気狂い龍と余を一緒にするでないわ。余は永遠を生きる鳳凰。───余こそ十二幻獣の一角たる幻獣フェニックスなるぞ」
また、幻獣……!
その流派の名前を忌々しく思いつつ、私は動かない身体を壁に預けて彼の事を見据える。繭という絶対防御の形態を維持し、私の闘気も吸い尽くした結果が、最悪を招くかも知れない。
「その幻獣って、一体何なの…?」
「座興だ。教えてやろう、余を含め、この世には幻獣という十二の不老不死の生き物が存在する。人のために生きるもの、退屈を持て余すもの、狂ったもの、如何に尊き存在であろうと恐れは有る」
サフランの背丈が、伸びる。
「余の場合は民草の嘆きだ。愛しき我が子等の悲しみなど見続ける事は出来ぬ。故に、余は一刻も早く元の身体に戻らねばならぬのだ」
「じゃあ、他の人はどうでもいいの?」
「余は余の民草しか救えぬ」
サフランの背が、私を越える。
だんだんと大人に近付いているんだ。倒すためには何か彼の力を削ぐことの出来る技か、武器が必要になる。私の蛮竜を使えば削ぎ落とせる…!
「来なさい、蛮竜!」
青白い雷撃が此方に飛んでくる刹那、誰かの手が蛮竜の柄を握り締め、私のところにやって来る蛮竜を無造作に受け止めた。
「あまり動いて暴れて貰っては困りますよ」
「何のようだ。ロン」
「なに、貴方の完全復活を妨げるものを排除しに来て上げたんですよ。それに、あの世の加護を受けている人間を見るのは二度目です」
「があっ…っ、ぐぅ…!」
金色の闘気が揺らめき、ロンの手が首を絞める。
「其奴を寄せ。それは余の相手だ」
「……サフラン、何度も言っているでしょう。人間なんて我々にとって蟻同然の生き物。何人潰したところで一眠りする間に数百倍に増える」
「二度言わせるな。蚯蚓風情が」
「そういう貴方は満足に孵化も出来ない卵でしょう。まあ、面白いものを見れそうなので良いですが」
「ゲホッ!ゲホッ…!」
手が離れ、空気を吸い、呼吸を繰り返す。