青白い激気の白虎を纏い、鳳凰のサフランと渡り合える早乙女君の強さに少し嫉妬してしまう。出会った頃は互角、今はもう彼の方が上だろう。
金色の闘気を感じて、岩山に腰掛けるロンを見つけると彼の目はキラキラと耀いていた。まるで、新しいオモチャを貰った子供のように純真な眼差しが、サフランと空中で殴り合う早乙女君の事を射貫く。
「獣拳。成る程、あの様な成長もあり得るのか」
白虎の咆哮と鳳凰の羽ばたき。
衝突する闘気の奔流にスカートを押さえて、二人の戦いを見守る。刹那、サフランの身体がぐらつき、早乙女君の振るった地面へと落ちる竜巻がサフランを呑み込み、龍の石像から水が吹き出す。
「……あかねさん、良かった…」
ほうっと安堵の吐息をこぼしながら、早乙女君に中華服を借りている彼女の姿を見つめ、笑顔になる。しかし、こんなところで指輪を渡すのはどうなのかな?
「乱馬、貴様ぁーーーっ!!!」
「おめえも相手いるだろうが!」
「え?浮気してるの?」
「男の風上にも置けんな」
「んだ」「お前もね。ムース」
いつの間にか戻っていたシャンプーに安堵し、句君の方を見るとキーマ様に追われていた。あの卵を間違えて、割っちゃったのかな。
なびきさんに言ったら、怒るかな。
「全く本当にドタバタと騒がしい奴らだ」
「フフ、でも楽しいかな♪︎」
「それは、そうだが」
ちょっとだけ困ったように笑う帯刀君と一緒に喧嘩を始めた早乙女君達を止めるために岩山を降りるとき、ロンは何処かに消えていた。
あの早乙女君の事を見つめる目は何だったのか。
ただ、あの目はオモチャを壊す目だった。
糸方褸を思い出した。
私に稽古だと言って、目を見えなくした。
彼と同じ顔をしていた。
それだけに不安が脳裏を過る。
「どうした?切君」
「何でもないかな。それに、早乙女君を助けないと危ないかも知れない」
私の言葉に気づいた帯刀君が手近にあった木の棒を振るって早乙女君と響君とムースの頭を叩いて、しっかりと反省するように言っている。
「おいたわしや、サフランさま」
「……フン。余の負けは負けだ」
そんな会話が聞こえて岩影を覗くと赤ちゃんになったサフランをお爺さんが抱っこしていた。
「それよりも腹が減った」
「はっ。しかし、乳の出るものは」
私が立ち止まっていることに気づいた早乙女君達も集まり、いつの間にか赤ちゃんのサフランにご飯をあげる話しになってしまっている。
「糸色、余に乳を寄越せ」
「貴様、赤子と言えど斬るぞ!?」
「? 其奴は子を宿しているだろう?」
「そ、それはまだ内緒だったかな!」
慌てて赤ちゃんのサフランの口許を塞ぐも、みんなの私を見つめる視線にハッとし、恐る恐る後ろに振り返ると帯刀君が石化していた。
「糸色、早う寄越せ」
「えと。みんな、向こう行っててね?」
「あ、あたしも見てていい?」
「……あかねさんなら、良いかな」
そう言って私は岩影に移動する。