「女傑族?」
あかねさん達と別れて借りているマンションに帰った私は直ぐにお父さんに相談したところ。百年前、明治中期に女傑族の秘宝を譲り受け、糸色景様の病気を癒やしたという手記が残っているらしい。
ただ、その手記自体は糸色家に所縁の有る方ではなく糸色景様の友人知人の可能性もある。けど、分かったことはシャンプーという少女のご先祖様のおかげで、糸色景様は延命することが出来た。
言わば私達の命の恩人でもある。
「え?不破一族が盗んだ…」
……どうやら盗んだものらしかった。
不破一族といえば五百年という年月を不敗のまま生きてきた修羅の一族だ。幾度か糸色家の男性は挑み、そして破れ去った話しもある。
お父さんもそうなのかな?と思いながら学校の話やお友達が出来た事を話し、また電話を掛けることを約束して受話器を戻す。
悩ましく唸る声が聞こえたけど。
まあ、お父さんなら大丈夫かな。
「小鎌さん、ちょっといいかな?」
「なに?」
通路を出てリビングに戻ると『相楽左之助 -喧嘩花盛り-』とタイトルが視界の端に入り、クッションを抱き締めて真剣にテレビを見る小鎌さんに話し掛ける。
時代劇をベースとした恋愛ドラマみたいだけど。
「なんで糸色景様が年上なの?」
「?そういえば、そうね。なんでかしら?」
相楽左之助様と出会ったとき、まだ糸色景様は中学生くらいだったと手記に残っている。どうして、二十代という事に?と私達は小首を傾げる。
「……そりゃ二十歳間際の男が中学生と恋愛してたらヤバいものがあるからだろ」
「ああ、そういうことね」
「句君、よく分かったね」
「警戒心を急に無くすのは糸色家の気質なのか?」
そう呟く句君の言葉に私達は顔を見合わせる。ちゃんと警戒心は出しているし、句君の事を信頼しているから無防備にテレビを見ることも出来る。
でも、これは本当のことだからね。
「なんですかこの『私に惚れちゃダメよ』って、糸色景様はもっと淑やかで奥手な方なのに」
「ハンッ!俄がよくやる手段ね!」
「姉ちゃん、テレビに話し掛けるのやめようぜ」
いいえ、これは抗議だよ。
「うわ、露骨に悪役っぽい」
「オープニングで敵側に配役はダメでは?」
「切ちゃん、そっくりだからな」
「この子が悪役出来ると思う?」
「出来ないだろ。器質的に穏やかだし」
私は悪役なんてしないよ?と言いながら「史実に基づいた話し」と小文字で出すテレビに不満を抱きつつ、そんなに黒幕に見えるのかなと思う。
私は一度も黒幕なんて言われたことない。