「ウ~ム、困った事になった」
「そうだね」
喫茶店のテラス。
私の真向かいに座る九能先輩は深刻そうに呟きつつ、顔や首に大量のキスマークを身に付け、両膝に一人ずつ、右肩に一人。合計三人の女の子を侍らせている。
別に本当に付き合っている訳じゃないけど。ほんのちょっとだけムカムカとしてしまう。フッ、と私に勝ち誇った顔を向けた一人の顎先を撫でて意識を刈り取る。
視認できない速さで打てば女傑族の掟を受けることも無いだろうと思いつつ、ベタベタと女の子に纏わり付かれて唸るばかりの九能先輩に溜め息をこぼす。
「私、帰るね」
「待て。まだデートの途中だぞ?」
「女の子を侍らせてデートするかな?」
「確かにその通りだ、すまない。君達もそろそろ離れてもらえるか?」
そう言うと九能先輩は彼女達を傷つけないように優しく引き剥がし、立ち上がるなり私の右手を握り締め、ビシッ!と私の顔を指差す。
「彼女は僕の
リーレン?リーエレン?と初めて聞く言葉に私は小首を傾げながら九能先輩を見上げつつ、物凄いショックを受けている女傑族の三人が私を睨み、唸る。
「分かった。相手になるよ」
私の言葉を理解している一人が真っ先に飛び掛かってきた刹那、彼女の背後にネコ科動物めいた闘気が吹き荒れ、気弾として私の真横の地面を抉り取った。
今のは中国拳法史上で体得した者は十人と居ない伝説の流派「
槍は使えない。
「おまえ、殺す!」
「じゃあ、死なない程度に殴る」
パキッと指の骨を鳴らしながら竜頭拳に構えた次の瞬間、私目掛けて鉄扇が真横から放れ、後ろに跳んだその反対から繰り出された
「三対一、手を貸すか?」
「大丈夫かな。それにもう数は意味ない」
手すりの残骸を軽く払い、カバンを九能先輩に投げ渡して三人の女傑族を見据える。九能先輩に負けた後だからと手加減なんて考えるのは失礼だった。
人差し指と中指を伸ばし、構えを変えると同時に気弾を放った彼女の肩関節に指を差し込み、双肩の関節を自然に捻って外す。
「破傀拳奥義」
痛みに呻く前に顎を弾き、鉄枴を持つ少女の鳩尾に肘鉄を打ち込み、唾液を吐く前に顎を掠め撫でる。鉄扇を構えて迫り来る彼女の手首を突き、軽く動脈を絞める。
「四面楚歌」
「無血制圧、見事だ。攻撃を受ける直前も何かしていたが、アレは糸色家の秘中か?」
「似たようなものかな」
けど、これは弁償しないとだよね。