「長野から来た糸色切さんと本条句君だ。みんな、仲良くするようにな」
「初めまして、糸色切です」
「本条句、よろしく頼むぞ」
ペコリと今日からクラスメートになる人達に頭を下げようとした瞬間、パチパチと拍手を繰り返す音が聴こえ、そちらに視線を向けるとカメラを構えた爺やが感涙の涙を流していました。
「爺や、何しているの?」
「定期連絡に仕込む写真を撮っております」
「……そう、土にお還りなさい」
窓枠に革靴を添えて座る爺やを無視して窓を閉めると彼は普通に落下していく。私の顔は糸色景様に瓜二つだそうだけど。あまり重ねるのは止めてほしい。
そう思いながら先生に席を教えて貰い、天道さんという方の隣の席に着席する。
「糸色切です、よろしくね」
「天道あかね、よろしくね」
ほとんど同時に右手を差し出して挨拶をして、思わずクスクスと笑ってしまう。なんだか親近感を感じる私に訝しげに視線を向けるおさげの男の子と目が合う。
彼も今月転校してきたばかりの転校生だったわね。あとで挨拶しておこうかな?と思いながら、教科書を開いて一時限目の授業を待つ。
「(しかし、何故あんなにも私を見るのか)」
何かしたかな?と小首を傾げる私の疑問は私の真後ろに座っている句君で解決した。おそらく彼が話していた「らんま」というのが彼なのだろう。
「乱馬、切ちゃんをあんまり見るな」
「見てねえよ。お前じゃい」
「そうか」
私と天道さんの後ろで起こる壮絶な足蹴による戦いに苦笑を浮かべつつ、これが男の素直になれない友情というやつなのねと納得する。
「早乙女、本条、喧嘩するなら廊下に立ってろー」
「教師の許しも出たな」
「けっ。今日もブッ倒してやらぁ」
今日も?ということはすでに句君は「さおとめらんま」くんとお友達になっていたのね。まだ貴方と貴方のお姉さんしか知り合いのいない私には羨ましい限りです。
「アイツも天道狙いか!?」「転校早々モテるな!」「あかね、実はモテ期だったりしない?」「ちょっと、怖いこと言うのはやめてよ!」
いきなり騒がしくなった教室に驚きつつ、みんなに急かされて私も一緒に着いていく。この風林館高校は生徒同士の喧嘩を黙認しているのかな?
そう思って生徒手帳を確認する。
「……ハワイ旅行中とは?」
校長先生の名前の横に「現在ハワイ旅行中」という文字があり、校則を綴ったページも殆んどメチャクチャな事ばかり書いてある。
これが、東京の学校…!!
「ややっ、君は今朝の可憐なお嬢さん!」
「かれん?私の名前は糸色切ですよ?」
「いとしき?まさか、君があの糸色!?」
「えと、はい?」
コテンと私は小首を傾げ、驚愕する彼を見上げる。