「お茶どうぞ」
「ありがとう。かすみさん」
おっとりとした声で、私に湯呑みを渡してくれた天道かすみさんに軽く頭を下げてお礼を言いつつ、二人の女の子に挟まれて、まともに相手の顔を見れていない早乙女君を静かに見つめる。
早乙女玄馬は多少なり掠り傷を負って帰ってきたかと思えば華麗に息子の修羅場を無視した。まあ、当然の判断と言えば当然だけど。
「あかね、邪魔よ。退くね」
「あたしの家だけど?」
「日本語分からないね」
「くっ…!」
居間の床にうつ伏せに倒れ伏すように身を縮める早乙女君の視線の先は私の足元だった。
サッとスカートの裾を押さえた瞬間、あかねさんとシャンプーの鉄拳が早乙女君の頭を思いっきり二人同時に力強く叩いた。
……まあ、そうなるわよね。
「わ、わざとじゃねえ…」
「あら、切ちゃんのパンツ見たかったの?乱馬君」
「あの、やめてくれます?」
ピラピラと私のスカートの裾を摘まんで動かす天道先輩を睨み付けるも私が手当たり次第に暴力に訴えない事を知っている彼女は笑顔のままだ。
いっそのこと本当に殴ろうかな。
流石に何も習っていない彼女の事を攻撃するつもりはない。が、こうも変にイタズラを受けると仕返しをしたくなるものです。
「すみません。切さんを迎えに来たんだけど」
「だれだ、あのマッチョ」
「小鎌さん、遅かったね」
私がそう言うと早乙女君まで句君の服を着ても太く逞しく雄々しく猛々しく筋骨隆々と盛り上がった鋼のボディを持つ小鎌さんを見上げる。
本家の武道場の掛け軸を思い出す見た目だ。
二重の極みを開眼せし不動明王。悠久山安慈様の様に猛る肉体を隠しきれていない。たまに、こうして男の人になることもある。
大体、私を守るためらしいけど。
「ホホウ。良く鍛え上げた肉体だな」
「無駄な筋肉ではなく全て実戦用に仕上げておる。乱馬よ、これもまた武の真髄よ」
そう言って小鎌さんの究極的な肉体を見上げる男性陣の筋肉信仰に小首を傾げながら、確かに男の人の筋肉はカッコいいと思う。
いわゆる、筋肉フェチというやつだ。
私は、腹直筋。簡単に言えば腹筋が好き。
お母さんがお父さんと結婚したのも筋肉が決め手だって言っていたけど。その真偽は不明。けど、少なくともお母さんは家柄でお父さんを選んでいない。
しかし、本当に小鎌さんの筋肉はすごい。
いくら強くても私の筋力は男の人に劣るし、特異な神通力や体質を持っているわけじゃない。当主様は生身で大妖怪を倒したのは知っている。
でも、私にはまだ無理だ。