何だかんだと恋運ぶ呪いの花   作:SUN'S

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恐怖の指圧拳 序

女傑族の掟に従って異性を連れて帰るつもりで虎視眈々と準備を進める女傑族の四人を放置し、私は少し怒っているあかねさんと過ごしている。

 

「やあ、こんにちは」

 

「壬生先生、こんにちは」

 

少し窶れた私達の担任教師の壬生先生と挨拶を交わしながら愛妻弁当を中庭で食べ進める先生の表情は至福その物だが、何だか疲れている様子だ。

 

何かあったのかな?と私とあかねさんは顔を見合わせ、お弁当箱を持ったまま先生に問いかける。何か困り事なら聞いてあげるぐらいしたい。

 

「先生、悩み事?」

 

「え?ああ、いやね。また試合が近くてなったら減量しなきゃいけないのがなぁ……」

 

そう憂鬱そうに溜め息を吐く先生のお箸を持つ手は分厚く硬質化している。部位鍛練の稽古を積んだ空手家の様にも見えるけど。

 

あちらは更に大きく硬そうに見える。

 

「先生も格闘技を習っているの?強い?」

 

「切さん、切り込み早すぎない?」

 

「強いかは知らないけど。ボクシングだよ。まあ、君達は分からないかも知れないが、僕の人生は『1ポンドの福音』で出来ているんだ」

 

そう言うと先生はお弁当箱の蓋を閉じると左右の拳を顔の近くまで上げ、左足を前にしたオーソドックスな右利きの構えを取った。

 

キュッとスニーカーの擦れる音が聴こえたかと思った瞬間、鋭く疾く重い左突き。ボクシングだとジャブやリードブローと呼ばれるパンチを先生は打つ。

 

「あはは、生徒に何を言っているんだろうね」

 

いつものように壬生先生は笑い、振り返った。

 

「─────けど、糸色さんはこれだけは覚えておいたほうが良いかもね。何せ、僕みたいなのがそれなりにウヨウヨといる。この時代は正しく魔境だ(・・・・・・・・・・・)

 

僕みたいなのが、という言葉も気になる。

 

だけど。それ以上に気になるのは茂みから顔を出している女の人だ。先生の奥さんなのは知っている。でも、なぜ当たり前のように校内にいるのかな。

 

いや、そういうものなのでしょうね。

 

「あかねさん、あれって」

 

「しっ。先生はまだ気付いていないから」

 

それは、そうかもしれないけど。

 

あのまま放置して、いいのかな。

 

チラチラと私は先生の後ろを着いて……憑いて歩く奥さんの事を見送りつつ、お弁当を食べる。句君と小鎌さんも食べている頃か。

 

「ボクシングの減量って辛いのよね」

 

「多分、たまにお父さんがテレビで見てるし」

 

「「勝つと良いね、次の試合」」

 

そう私達は先生の勝利を祈る。ついでに今後とも壬生先生が安全に生きていることも願う。

 

 

 




【概要用語解説】

本作の単語や転生者、その親族を解説します。

糸色切(いとしき きり)


【挿絵表示】


本名「糸逢切(しほ きり)」。繋ぎ読みは「絶切(たちき)
年齢は16歳。身長161cm。
「さよなら絶望先生」および「るろうに剣心」に登場するニ家の血筋を受け継ぎ、生誕した現地人。緋村後(ひむら しとり)の子供の一人が興した「糸逢家」の一人娘であり、現在は本家の家名を名乗っている。

糸色景の遺した武術教典「民明書房」を愛読し、独自に嵌合して体系化した「糸色流」の使い手。槍術の腕前は糸色の血筋のため達人級。徒手空拳は関節破壊を旨とする「破傀拳」を多用するものの、本来は違う流派を学んでいる。 

好物は里芋の煮っころがし。

・糸色流

五百年続く大名家「糸色」の歴史の一つ。

組討甲冑術を始めとした様々な流派を嵌合し、より効率的に相手の無力化を極めた家伝体術。糸色本家の秘伝「二重の極み」は至宝であり、未だ糸色切本人は学ぶ機会を正式に得ていない。


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