放課後。
最近は定番化したようにやって来たシャンプーに遂に怒ってしまったあかねさんと二人は勝負する事になってしまい、私は先に帰るように言われた。
二人とは友達だから仕方ないけどね。
「小鎌さんも帰り?」
「えぇ、なびきのおかげで面白い本も見つかったから読んでおこうと思ってね。……それより護衛の句は何処にいるの?」
「食堂の大食い大会に出場しているかな」
「あの愚弟ェ……!」
頭を抱えてワナワナと震える小鎌さんの怒り具合に「大丈夫。私はそこそこ強いから」と付け加えつつ、学校に戻ろうとする彼女の肩を押さえる。
そういうのは本当に危ないからやめよう。
「…それで、後ろをつけているのは?」
「さあ、何処の人かは知ら……ああ」
そう言って私は後ろに振り返ると、あからさまに電柱に隠れている人影が見えた。左右に飛び出た大きな身体を収めるには電柱は細かったらしい。
「響君、何してるの?」
「ついにストーカーになったのね」
「なっとらんわ!!…道に迷ったから風林館高校に連れていって欲しいのだが、話しかけるタイミングを失っていただけでやましい気持ちはない」
断言する響君のお腹に小鎌さんが正拳をめり込ませ、苦悶の声を吐く彼の襟首を掴んで彼の真後ろに建つ風林館高校に放り投げた。
ナイススローイング。
「アイツ、横恋慕しているわね」
「横恋慕」
「あかねの事を狙っているって事よ。それから男は胸の大きな女の子が好きだから無闇矢鱈に近付かない!切さんは抜けすぎているのよ!」
「そんなつもりはないんだけどなあ」
少し困ったように彼女の言葉に苦笑を浮かべながら、私は「抜けている」のだろうかと悩む。そもそも抜けているというのは、なんなのだろうか。
「そういうところよ」
抜けている。うーん、難しいかな。
けど、私を心配してくれているということは何となく分かるし、小鎌さんが優しくしてくれるのも分かる。やっぱり、小鎌さんは良いお姉さんだ。
「しかし、句はホントに何してるのかしらね。お父さんに頼まれた仕事をホッポリ出して、自分を鍛えること以外に興味がないのかなぁ……」
「心配だから強くなる。句君の目的は小鎌さんが怪我しないように強くなって、守るためだと私は思っているんだけど。違うの?」
「いや、あってるぞ」
私の問いかけに食堂の大食い大会を制覇したであろう襷を掛けた句君が答えてくれ。小鎌さんは大きく膨れた句君のお腹にパンチを繰り出し、ぷいっと顔を背けると早足で帰ってしまった。
恐ろしい、腹痛パンチを残して。