夕飯を済ませた後、のんびりと民明書房を読んでいたとき、いきなり天道家に呼ばれ、私達は突然訳の分からない事を告げられた。
「あかねさんの記憶が無くなった?」
「そーなの。乱馬君の記憶だけね」
「……早乙女君、また何かしたの?」
「オレじゃねえよ!?」
「乱馬、認めろ。お前の日頃の行いだ」
天道先輩の言葉に私は訝しげに早乙女君を見つめ、句君の励ます様に聴こえる煽り文句に早乙女君は怒り、またパンチを繰り出そうとした瞬間、彼の正拳を真下から掬うように手が現れ、攻撃は止まった。
「私を挟んで喧嘩しないで貰える?」
あかねさん、記憶は無くても強さは変わらないのね。それなら安心できるのかな?と思った刹那、私の方に向かってパンチが繰り出された。
拳の持ち主はあかねさんだ。けど、いきなり彼女に攻撃される覚えも記憶も私にはない。むしろ友達を心配してやって来た側の人間だ。
「……どういうつもりかな。あかねさん」
「……わからないけど。倒したいって気持ちが沸き上がってくる!」
正座の状態のまま素早く足を組み替えて、足払いからを躱すも瞬時に後ろ上段回し蹴りが私を両腕を交差させて固めたガード諸とも蹴り飛ばす。
何度か稽古で戦った事はあるけど。
流石は無差別格闘天道流の後継者。早乙女君のお嫁さんになる予定の実力者は本当に強い。チラリと小鎌さんの傍に置き忘れたカバンを見る。
此処だと槍は使えない。
「天道早雲、道場を借りるわよ」
「あ、ああ、好きにしてくれたまえ」
その言葉を聞いた私は庭の石灯籠に着地し、塀を伝って天道道場に走り出すと私の事を追いかけてきたあかねさん。その後を何故か追いかけてくる早乙女君に少し呆れながらも笑みを向ける。
折角、考える時間を作っているのに着いてきたら意味がない。まあ、それだけあかねさんのことを心配しているのなら問題ないのかな?
うん、それなら問題ないかな。
「おいで、あかねさん」
道場の出入り口で振り返って両手を広げる。すると、あかねさんは一切の躊躇いたく私に向かって爪先を固めた飛び蹴りを放ち、私の胸を打ち抜いた。
「痛ッ、らぁっ!?」
「なッ、くぅっ!?」
自分の身体を真後ろにのけ反らせ、道場の中に向かってあかねさんを放り投げる。受けなくても良かったけど、あかねさんの本気のキックは受けておきたかった。
多分、早々やり合える相手じゃない。
ゆっくりと手を伸ばして身体をほぐす。破傀拳では対処できないし、無差別格闘流が相手なら攻撃パターンも変えておこうかな。