「早乙女君の弱点?」
「うむ。この五寸釘光が知りたいそうだ」
「どうも」
九能先輩のちょっとした相談という言葉を信じて、喫茶店にやって来た私は少し悩ましく思える彼らの行動に何かを言いたい気持ちになるものの、相手の弱点を見つけるのはどの分野でも常識だ。
単なる喧嘩の範疇なら問題ない。けど、いきなり九能先輩を伴って早乙女君の弱点を探りに来るのは些か早急すぎる気もする。
「で、早乙女君の弱点よね」
「はい。なにか知っていれば」
「(早乙女君の弱点か……あるのかな?)」
そう思いながら私の髪の毛を抜こうとしたクラスメートの五寸釘光の手を叩き、金槌を振るって木に藁人形を打ち付けに行く彼の後ろ姿を見る。
「僕も知り合ったのは昨日だが、愉快な性格をしているだろう。それに、あかね君を好いているらしくてな。今の内に潰しておきたい」
「本音が滲み出てるよ、九能先輩。そんなに他人の弱みを握って何がしたいのかな?」
「さてな。顔よし、姿よし、頭よし、リッチで幸せ、人格者、その上強くて賢いパーフェクト人間の僕には皆目見当もつかない」
その自画自賛って、まだ続いているんだ。
「九能先輩もまだあかねさんを狙ってるの?」
「ムッ。僕は誠実で真摯な男だ、今は君と交際しているのにあかね君やおさげの女に現を抜かすなど日本男児にあるまじき所業だ」
「ふーん、へー、ふぅん?」
カラカラとアイスコーヒーのグラスをストローでかき混ぜ、少し怪しさと嬉しさの混じった感情が渦巻く。が、すぐに彼の本命は幼なじみだと思い出す。
いつか、会ってみたいものだ。
「ねえ、九能先輩」
「なんだい。切君」
「幼なじみの写真って持ってるの?」
「ああ、持っているぞ」
そう言うと手帳の中に挟まれた写真を見せてくれた。何処かの山の川辺で仲良くピースサインを作っている子供の写真を見せてもらう。
「(あれ?なんかタッチーっぽい?)」
いや、え?
でも、九能先輩は坊主じゃないし。タッチーのお父さんは「日本男児たる者、BOUZUヘアーは必須科目デェース」とか言っていたし。
アロハシャツを着てたから外国人だと思ってた。
「可愛いだろう。僕より年下だったから、ちょうど君と同じか一つ年下だろうな」
「そ、そうですか」
「何故敬語なんだ?」
いや、なんでだろうね。
うーん、向こうは気付いていないし。私も一回見ただけでタッチーと決めつけるのは良くない。そもそも九能先輩が坊主になるわけない。
それに、その子の名前は「しほ」だった。
私と九能先輩は無関係なんだろう。
決めつけるのは良くない事だからね。