明治中期、九能帯刀先輩(そう可愛く呼んで欲しいと、九能先輩御本人に頼まれた)のご先祖様と私のご先祖様は大変仲良しだったらしく。
そのときに私のご先祖様から幾つか譲り受けた水墨画や錦絵など芸術作品が沢山先輩のお家にあるそうです。でも、本当なのかしら?
「これもまた運命。よし、交際しよう!」
「光彩?」
私の手を握る九能先輩の言葉に小首を傾げていると全速力で走ってきた小鎌さんがアスファルトを蹴り、軽やかに宙で回転しながら九能先輩の顔を蹴り抜いた。
見事な体躯操作と重心移動だ。
「綺麗な空中回し蹴り!」
「切さん、不注意すぎる!!」
「お、おのれ、転校生…!僕の顔を蹴ってまで交際を阻止するとはいじらしい!僕に勝ったら君と交際してあげよう!!」
「くっ、無駄にハンサムだからグラつく」
ハンサム。
早乙女君の事もそう言っていたけど、小鎌さんはカッコいい男の人が好きなのだろうか。確かに九能先輩はカッコいいけど、私の琴線には触れない。
もっと翳りのある感じの人が好きかも?
「姉ちゃんに」「ちっちぇのに」
「「不埒な真似してんじゃねえ!!」」
パンチとキックが九能先輩の顔にめり込み、あっさりと倒してしまった。句君と早乙女君はさっきまで戦っていたんじゃなかったの?と思いつつ、校庭を見ると地面が抉れて凸凹になっていた。
「じゃあ、続きをやろうぜ。
「掛かってこいよ、乱馬」
学生服の袖口から無数の分銅を出して旋回させる句君の間合いを見計らう早乙女君。二人とも強いのに相手に集中しすぎている。
「無差別格闘早乙女流必殺奥義!」
そう叫ぶと同時に地面に向かって渾身の正拳突きを繰り出し、アスファルトを粉砕する。───いや、違う。砕けたアスファルトの瓦礫が礫として分銅の動きを前方防御に固定しているんだ。
「猛虎爆砕拳ッ!!」
「ぐごおっ!?クソ、瓦礫を利用したか!?」
早乙女君はアスファルトの礫を防壁に見立て、句君の巻き起こす分銅の結界をすり抜け、句君の顎を叩き上げ、素早く構え直した。
「獲物を狩るが如く跳ねる猛虎。地を爆裂し、破砕する拳の組み合わせとは中々に奇襲じみた技ね。切さんは真似しちゃ駄目よ?」
「うん、正攻法で倒すのが一番ね♪︎」
「分かるわ。あたしもそっちの方が良いもん」
「まあ、天道さんも分かるのね!」
きゃっきゃっと三人で楽しくお話ししながら句君と早乙女君の勝負を見守りつつ、彼の奇拳めいた動きに翻弄される従兄弟の事を見つめる。