九能先輩と五寸釘君による早乙女乱馬の弱点を探ろうという会話を聞いてしまった響君も作戦会議に加わり、マンション近くの喫茶店は会議室代わりだ。
「ごめんね。マスター」
「なに、構わないさ。ウチの居候も積極的に学生の活動くらい動いてくれたら良いんだがな?」
そう言ってコポコポとコーヒーを蒸らす喫茶店「アミーゴ」の渋い壮年の男性、立花ゲンジロウの笑う顔は楽しそうだ。
この街に引っ越した初日に小鎌さんや句君と一緒に食事したりしたのも、この喫茶店だったから通いたくなる気持ちが増している。
「そういえばマスターが何時も話してる居候って二階にいるの?」
「ん?ああ、今は地下の現像室だ」
「写真家なの?」
「あー、まあ、似た者だな」
少し曖昧に答えるマスターの言葉に小首を傾げる。マスターもアロハシャツを着ているし、ひょっとしたら居候の人がタッチーだったりするのかな?
いや、九能先輩は写真を持っている。
「だからあかねさんは貴様のモノではない!」
「君のではないですよ」
「うむ、良き豆を使っている」
響君と五寸釘君の喧騒を聞き流してコーヒーの香りと味を楽しんでいる九能先輩はカウンター席に座っている私の視線に気付き、にこりと笑った。
キラーンと歯を光らせて。
アレってどうやっているのかな?と思いながら本を取り出そうとした瞬間、釘とバンダナが飛んできた。ぶつかる寸前に払おうとした私の肩を引き、マスターがバンダナを捻って釘を絡め取った。
「全く俺の店は遊び場じゃないぞ」
ゴンッ!と響君と五寸釘君の頭に拳骨を落として、二人に釘とバンダナを返したマスターの手際の良さに感心する私の隣にいつの間にか九能先輩が移動していた。
「すまない。恋仲の君を守り損ねるとは!」
「いや、別に大丈夫かな」
私の手を握って謝る九能先輩の目は真剣その物で、本心からそう思ってくれていることは分かる。けど、流石に気にしすぎかなぁ……。
一応、九能先輩より私は強いし。
……本当にタッチーなのかな?
九能先輩って、九能帯刀だからタッチーとは読めないし。せめてあの写真に映っていた彼の父親に会えれば分かるのかも知れないけど。
校長先生は行方不明だと壬生先生は言っていたから、九能先輩は小太刀さんと二人暮らし。いや、忍びの人や使用人も何人かいたから大丈夫か。
「デートしよう。切ぐぶんっ!?」
「ひゃんっ!?」
飛んできた灰皿に押されて九能先輩が私の胸に頭を埋めて動かなくなる。モゴモゴと動かれると擽ったくて恥ずかしくなる。
「は、はなれてっ」
「す、すまないっ!!」
「……独り身のオッサンの前でイチャイチャしないでもらえるかね?」
「してません!」「しとらん!」
思わず、二人でそう叫ぶ。
今のは二人の悪戯ですねぇ?!