「乱馬も手紙貰ったのか?」
「なんだ。句も貰ってたのか?」
「ああ、姉ちゃん名義だ」
「こっちは、あかねだな」
自席の机の中に仕込まれていた手紙を見つめる二人を私とあかねさんは遠巻きに見つめる。どうせ、また五寸釘君の作戦だろうと思う。
そう思いながらも何かあったら危険だから私とあかねさんも呼び出された体育館に着いていく。壇上の上には簡素なハリボテの小鎌さんと、どこで手に入れたのか分からない女子の制服を着た五寸釘君がいた。
「来てくれたのね、乱馬!」
「どういうつもり!?」
真っ先に飛び出したあかねさんの質問は当然の問答だね。けど、句君は「オレの姉ちゃんをこんなハリボテで代用しただと?」と困惑している。
まあ、それも当然の反応ではあるかな。
小鎌さんに気付かれる前に隠そうか。
「あかねさんも……あれ?」
「三人なら落ちたぞ」
句君の指差す穴を見ると沢山の猫に囲まれた早乙女君とあかねさんと五寸釘君がいた。ニャーニャーと響き渡る猫の大合唱に句君は「どうやって集めたんだ?」と不思議そうにしている。
確かに、気になるかな。
一体、どうやってこれだけの猫を集めて来たんだろう?と考える私達にも聴こえるほど高笑いを始めた早乙女君はギコギコと壊れた玩具のように動き、五寸釘君の事を「あかね」と呼んでしまった。
「あ、虎だ」
「虎か。そういえばまだ戦った事ないな」
普通の人間は虎とは戦わないんじゃないかな。そもそも虎と勝負するなら、もうちょっと筋肉を増やさないと力で負けて食べられるよ。
そう思っていた刹那、強烈すぎる爪撃を受けて私は右手に鋭い引っ掻き傷に似たものができ、あれほど勇ましく唸っていた虎も「にゃあぁ~~~ごぉ」と鳴き出した早乙女君を敬意している。
「切ちゃん、ちょっと離れてろ。流石に服を裂く攻撃を女の子が受けるのは不味い。それに、今の乱馬は完全に意識が飛んでやがる」
「それって、一種の夢想拳?」
「どっちかと言えばトランス状態だッッ!?」
私の言葉に答えようとした瞬間、早乙女君の鋭く強力な蹴りが句君の頭を蹴り飛ばし、体育館の床を転がる彼を追い掛けていく早乙女君に、剛刀「風林火山」を携えた九能先輩が攻撃を仕掛ける。
剣道の面と小手を的確に使い分け、ここぞの瞬間に横薙ぎの胴を繰り出している。だけど、ただの剣道では早乙女君を捉えることは出来ない。
それほどまでに脅威的な速さだ。
「おのれ。早乙女乱馬っ、ちょこまかと!!」
「九能先輩、突き技を!」
「突きィ!!」
そう叫ぶと同時に振るわれた木刀は凄まじい突風を巻き起こし、早乙女君の事を体育館の外に吹き飛ばしてしまった。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者に関する事を解説します。
【
本名「壬生林太郎」。
年齢は三十代半ば。身長176cm。
「1ポンドの福音」の世界に一般家庭の長男として生誕した転生者。ごくごく普通の人間と自称し、普段は風林館高校の1年F組の担任教師として勤務するその傍ら、プロボクサーとして活動している二足のわらじ生活。
愛妻家で恐妻家。いわゆるかかあ天下だが、夫婦関係は良好。既に「ドクトル・バタフライ」と接触し、交流しているものの。それなりに同じ時代を生きている転生者と出会っている。
転生する際に選んだ「特典」は「普通の生活を送りたい」と「刺激的な人生を歩みたい」。
一つ目の特典「普通の生活を送りたい」は一般家庭の長男として産まれ、平和に過ごしていけるものだったが、普通すぎる平坦の人生でもあり、危険な物事が常に舞い込みやすくなっている。
二つ目の特典「刺激的な人生を歩みたい」によって人生を取り巻く全ては激しすぎる激動に襲われ、病んだ妻や個性まみれの職場、変な友人が増えた。