体育の時間。
男子はサッカー。女子はテニス。其々の場所で授業を受けていたとき、チリンチリンと自転車の鈴の音を聞き、そちらに視線を向けた瞬間、ゴンと句君の頭に自転車に乗ったシャンプーが着地していた。
「シャンプー?」
「句君、首折れてないかな?」
あかねさんもシャンプーに気付いたらしく、テニスラケットを持ったまま動きを止め、私もテニスボールを持って二人のやり取りを見つめる。
婿とか嫁とか聴こえるけど。
まさか早乙女君はあかねさんを捨てて、シャンプーと結婚するつもりなのかしら?と小首を傾げながら、杖を巧みに操って動く小柄な老婆に目を見開く。
強い。
物凄く強い人だ。
「二度と会うか、この妖怪ばばあ!」
悪口を叫びながら石で出来た整地ローラーを蹴り飛ばす早乙女君だったけれど。素早くお婆ちゃんとローラーの間に割り込んだ人によってローラーは両断され、彼の頭に綺麗に二つとも激突した。
流石に死んだかな?
そう思いながらも私達は倒れた彼の周りに集まったとき、「シャンプー!」と早乙女君に張り付いている彼女の名前を叫び、フラフラと立ち上がった。
意外と人間って頑丈なのね。
「会いたかったぞシャンプー!」
サササッと早乙女君に抱きつき、熱烈な抱擁と口付けをしようとする男に早乙女君も恐怖を感じ、力付くで引き剥がして頬を伝う汗を拭う。
本当に怖かったんだと思う。
「な、なんで避けるだ!おらだ!ムースだ!」
「オレはシャンプーじゃねえ!」
「なにっ……誰じゃ貴様ァ!!」
グルグルと瓶底みたいな眼鏡を掛け始めた男、ムースと名乗った彼は早乙女君を殴り飛ばし、その衝撃で眼鏡が外れ、今度はあかねさんに抱き付いた。
「ソイツもシャンプーじゃねえ!」
「なんなのよっ、あんたは!」
「……し、失礼しただ。オラはムース、シャンプーの婿になる男じゃ」
「なに勝手なこといってるか。ただの幼なじみね」
「ムース。お主は既にシャンプーに負けておるではないか、の…う……
早乙女君のちかくにいたシャンプーを見ようと此方に振り返ったお婆ちゃんは私を見るなり、焦ったように目を見開いて近付いてきた。
「……お主、名は?」
「私は糸色切だけど…ジンではないかな」
「
曾孫?と私と句君は顔を見合わせる。
このお婆ちゃんは私を誰と間違えているのかな?
流石に、お婆ちゃんと知り合えるほど知人友人は多くないから何も言えないから、どうにかして教えて貰えると助かる。