天道さんの家は道場を経営しているらしく、私も格闘技を習っている事を教えたら手合わせをすることになった。やっぱり東京だと勝負は当たり前みたいだ。
柔道や空手を彷彿とさせる上下共に白い胴着に着替えた天道さんに更衣室を借り、袴と胴着に着替えて道場に戻ると何故か小鎌さん達もいた。
「句君、どうしたの?」
「折角だから見学しに来た」
「私は付き添いとなびきに呼ばれた」
なびき?と小首を傾げる私に天道さんがお姉ちゃんだと教えてくれ。あの髪の毛を短く切り揃えた女の子がそうなのだろうと納得し、パンダに視線を向けてしまう。
パンダ、家でも飼えるものなのね。
「切ちゃん、気を付けろよ。乱馬とおんなじ無差別格闘流を使うらしいぞ」
「無差別?早乙女君と同じ流派なのね」
「ウム、源流たる祖は同じではあるが我が天道流は正攻法の戦闘を得意とする!」
ちょび髭の素敵なおじ様の解説に「成る程、他流になるのはろくあることね」と私も理解し、ゆっくりと両の手を竜頭拳(人差し指と中指の第一関節を突き出した拳種)に構えて、動きやすいように爪先で立つ。
「では、始め!!」
その言葉と同時に私が前へと踏み出した瞬間、天道さんは真っ直ぐ顔を狙った上段正拳突きを繰り出し、私の攻撃の出だしを挫く。
正拳を崩して手刀に構え直しながら、ジリジリと間合いを詰める天道さんの足を見る。流石は実践型の格闘技、蹴り技や小足先の騙し討ちは通じない。
「そういえば私の流派を言っていなかったですね。私は糸色流古武術、特に秀でているのは関節を破壊する技。掴めば即座に脱骨するからね」
正確には本家の書庫に保管されていた糸色流古武術の指南書に載っている「破傀拳」や「仙術」に関する物に興味を惹かれて、無理を言って学んだものだけど。
「行くわよ、天道さん」
「いつでも良いわよ!」
振り下ろしの手刀打ちを半歩退いて躱し、肩の関節に向かって竜頭拳を打つ。が、寸でのところで膝蹴りから、伸びるように跳ね上がった蹴り上げが前髪を掠める。
蹴りの威力で数本切れた前髪に自然と笑みが浮かび、もっと深く踏み込むために腰を沈め、突撃するためにしっかりと天道さんを見据える。
「あかねのヤツ、オレと戦ったときより動きが良くねえか?」
「フッ、気づいたかね。乱馬君、あかねは焦りさえしなければ普通に強いのだよ!」
「お父さん、どういう意味よ!」
「天道さん、私に集中してほしいわ!!」
「してるわよッ、糸色さん!」
彼女の前に踏み込めば見えない蹴りが素早く飛んできて、気を抜けば一撃で気を失うかも知れないという緊張感にゾクゾクとしてしまう。