ムースと早乙女君の戦いも無事に終わり、句君と一緒にマンションに帰ると先に帰っていたのか。小鎌さんの靴と鞄を見つけ、脱衣所を見ると雄々しく雄大な背中が見えました。
何故、男の人の姿で立っているのかな?
「姉ちゃん、ついにソッチに?」
「……熱くてお湯に浸かれない」
乙女のように泣く筋骨隆々な小鎌さんの言葉に困惑し、私はバスタブに手を浸ける。でも、熱すぎて入れないどころかお湯が温くて寒いくらいだ。
しくしくと泣く筋肉ムキムキのお兄さんにどう対処しようかと小鎌さんの手を引こうとした瞬間、私は脱衣所を飛び出して廊下まで飛び退いてしまう。
「どうしたんだ?」
「ち、力が強すぎてビックリしちゃった」
「え?か、軽く握ったつもりなんだけど」
「姉ちゃんも腕力差は分かるだろ。それに切ちゃんは細いから余計に力の差を感じるんだよ。悪いな、怖かったら天道んとこに行っててくれ」
「いや、大丈夫かな。小鎌さんだから」
そう話しながらスウェットパンツを履いて出てきた小鎌さんの背後に周り、ザンバラみたいになった髪の毛をタオルで拭いて上げる。
なんだか顔が赤く見える。
「句、ヤバいかも知れないわ」
「どうした?」
「切さんが可愛すぎる…!」
「えと、ありがとう?」
「ソッチに堕ちたら助けられねえぞ」
一体、何を話しているのかな?と二人の会話を不思議に思いながら、私の身体を簡単に持ち上げてお膝の上に移した小鎌さんに困惑してしまう。
「すんげえ犯罪っぽい」
「やっぱり?」
よくわからないけど、二人とも楽しそうだ。
「……で、どういうことだ」
「分かんない。変なお婆ちゃんに突かれて」
「ババアに憑かれた?」
「コラ、お婆ちゃんだよ!」
句君の言葉遣いを注意しながらも小鎌さんに取り憑いているというお婆ちゃんを探す。けど、妖怪や幽霊の気配は感じず、何も見えない。
しかし、本当にどうして特異体質が急に戻らなくなったのか。いや、それはお湯を被れないからだから何かしらの要因はあるはずだ。
「何かされた?」
「えーっと、笑ってたわね」
「妖怪じゃねえか」
「妖怪なら対策しないとね」
そう話しながら句君のシャツを借りても大きく盛り上がった筋肉のせいでタンクトップみたいになっている小鎌さんの格好は何だか破廉恥に思える。
まあ、そんなわけないよね。
「切さん、出来れば鍵をかけてね」
「え?」
寝室の事を言っているんだろうけど。もしものときを考えて、鍵は小鎌さんが頼んで全部なくなっているんだけれど?