早乙女君と小鎌さんは依然として性別の変わったまま過ごしている。マッチョな小鎌さんは女の子のときと違って、食事量も変化しているため、私は毎日十人前の料理を二人分作っている。
そのおかげで料理の腕前は上達した。
「すまない!待たせただろうか?」
「ううん、今来たところ」
九能先輩に指定したショッピングモール近くに建つ銅像の前に立っていると息切れを起こすほど早く走ってきた九能先輩の汗をハンカチで拭き、さっき買っておいたペットボトルのお茶を差し出す。
「ありがとう。切君」
はにかみ笑う九能先輩の髪の毛を刈り取って坊主頭に変えたら分かるかな?と思いつつ、私の手を握って歩き出す彼は私に歩幅を合わせてくれる。
細かい気遣いだけど。
車道側を歩いて、私が転ばないように此方を逐一見てくる。あんまり見つめられるのは得意じゃないから恥ずかしいかも知れない。
「今日はどこへ?」
「うむ、交際した男女たるもの。遊園地に行こうと思うのだが、どうだろうか」
「遊園地。フフ、良いですね。面白そう」
「そ、そうか!」
私の反応に一喜一憂する九能先輩と一緒に歩いていたその時、シャンプーの自転車に乗った早乙女君と、句君の掴んだ人力車の後ろに座して腕を組む小鎌さんが見えた。
「おのれ。早乙女乱馬、性懲りもなく僕と切君の邪魔するつもりだな!?今すぐこの場で、我が剛刀によって成敗してくれようか!!」
そう言って木刀を触ろうとする九能先輩。しかし、彼の手は空を切った。デートするからと木刀を持たずに来てくれたのは嬉しいけど。
ちょっと抜けていたみたいだ。
「くっ、失念していた…!」
「九能先輩は、おっちょこちょいかなぁ」
「………」
クスクスと笑う私を見上げたまま、なにかに気付きかけて?何かと見間違えたように、目を見開いて戸惑うそぶりを見せる九能先輩に小首を傾げる。
「どうかしたの?」
「いや、何でもない」
そう言うと九能先輩は私の手を握り直しながら考えるように首を傾け、頭の上に「???(クエスチョンマーク)」をいっぱい作り出している。
あれ、どうやったら出るのかな。
不思議に思いつつも私は車道に出そうな彼の行き先を誘導する。何を考えているのかはわからないけど。九能先輩も考えたくなるときもあるよね。
そう納得しながら私は彼と手を握って歩いていたとき、私に向かって無数の視線が突き刺さる。また私に向けての刺客か何かかな。
「切君、
「
思わず、そう言葉を返した。
「切君、君が……しほちゃんなのか?」
「……」
これ、どうしたら?
・とびっくら
信州弁。かけっこを意味する言葉。
・おにっこ
信州弁。鬼ごっこを意味する言葉。