翌日の学校。
中庭に呼び出された私は九能先輩の謝罪を受けとり、窓から私達の事を見つめる風林館高校の教師と生徒達の野次馬根性というものに呆れてしまう。
人の恋路……恋路なのかな?
いや、多分、恋路なんだろうけど。
「僕と結婚を前提に付き合おう」
「九能先輩は本当に律儀だよね」
「うむ、九能家の男児たる者。ウソも偽りもなく好きだと伝えるのは当然の事だ」
「……ばかじゃないの。ばーか」
「なぜ罵倒を?」
不思議そうに首を傾げる九能先輩に少しだけ呆れながら指笛やクラッカーを鳴らすクラスメートや生徒達の行動に顔が熱くなる。
私はまだ高校1年生なんだけどな。
─────だけど。うん。やっぱりタッチーだ。
「受けるよ、よろしくね。九能先輩」
「よろしく頼む、切君」
昔のように指切りを交わす。
こういうのは照れ臭い。
うん、何だか嬉しくて照れるね。
そう思いながら九能先輩の胴着の襟元を掴み、ちゅっ、と唇を押し付ける。初めてはどうのって聞くけど、したいからしたくなることもある。
「…………」
「放心しちゃった、どうしようかな?」
「切さん、大胆すぎない?」
「あかねさんもしたら?」
「だ、誰がアイツなんかと!?」
別に早乙女君とキスしたらなんて言ってないのに、顔を真っ赤に染め上げるあかねさんにクスリと笑みを浮かべ、未だに放心したまま目覚める事の無い九能先輩の手を引いて、ベンチに腰掛け、膝枕をしてあげる。
好きな人かはまだわからないけど。
少なくともずっと一緒に居ても良いかな?と思えるのは九能先輩だけだと想う。うん、だから、きっとそういうことなんだろう。
「まさか風林館高校史上最低の変態に彼女が出来るなんて世界は不公平だ。おれも胸の大きな彼女がほしい!優しく膝枕してほしい!」
「分かる。わかるぞーっ!」
「乱馬、お前も敵だ!」
「なんでオレまで!?」
「そうね。乱馬は私の婿ある」
「オレの許嫁はあかねだけだ!」
クラスメートやシャンプーに詰め寄られて、そう叫ぶ早乙女君を指差しながら「ほら、ああ言っているわよ」とあかねさんに伝える。
ものすごく恥ずかしそうに顔を背けている。
やっぱり仲良しだね。
句君は天道先輩と付き合うとか言っていたけど。あれから進展はあったのかな?と考えつつ、未だに放心している九能先輩を見下ろす。
「あかねーっ!」
「ちょっと、やだ!?」
お姫様抱っこで連れ去られるあかねさんに手を振り、ドタバタと駆け抜けていく生徒達の中に魔女と呼ばれた人を見かけ、イヤな気配を感じる。