「でやあっ!!」
「りゃあっ!!」
高速の正拳突きの連打を受ける瞬間、パーリングの要領で天道さんの手首に竜頭拳を打ち込み、関節に軽く衝撃を与えて拳の動きを鈍らせる。
が、その手首を狙った拳打を読み、私の袖を掴んだ天道さんは私の左足のかかとに右足のかかとを絡ませ、片足と片腕を同時に封じるなり地面に押し倒してきた。
「まだ、やる?」
「フフ、それは此方の台詞かな?こんなに密着して本当に大丈夫だと思っているの?」
私の左手に気付いて飛び退いた天道さんは脇腹を押さえながら、静かに私を見据えている。あばら骨に軽く指を引っ掛けただけだけど。
かなり痛いわよね、私も受けて痛かったわ。
「聞き返すわね。まだやる?」
「『まだやる?』じゃない!!切さん、社会体験なんだから節度を持って対応して貰わないと私達がお父さんに怒られるんだからね?!」
三度目の勝負を仕掛けようとした私と天道さんの間に割り込んできた小鎌さんは折り畳み式の鎌を私達に突きつけ、間合いを拡げるように訴えてきた。
「……そうね。初めてのお友達と遊べることが嬉しくて舞い上がっていたわ。ありがとう、小鎌さん」
「あたしもありがとう。こがまさん?」
「何で止めるんだよ。姉ちゃん」
「句、私達の目的を忘れてないわよね。いや、忘れてても良いんだけど、せめて天道道場に余計な負担を掛けないようにしなさい!」
その言葉に私も納得しながら、天道さんに「今度はちゃんと正式に仕合をしましょうね」と告げる。次は破傀拳の神髄を本気で使用するつもりで挑もう。
それにしても、句君と小鎌さんの目的って何かしら?と小首を傾げながら天道さんと一緒に更衣室に向かう途中、パンダを見てしまう。
本家のお庭にはクズリや猫、ムジナもいるけれど。あんなにフカフカしていそうなパンダは見たことない。触りたい、モフモフとしている毛並みを堪能したい。
私はそう思いながら前の学校のセーラー服に着替えて、句君と小鎌さん達の待っている道場に戻ると九能先輩が当たり前のようにやって来ていた。
「天道あかね!糸色切!本条小鎌!まさか三人に偶然会えるとは、これぞ運命!!是非とも僕と三人仲良く交際をしよう!」
「しつこい!」
ムカッと怒った顔になった小鎌さんにビックリしつつ、九能先輩の振るう木刀を刃引きした鎌で受け止め、絡め取るように弾き上げ、そのまま蹴り飛ばす彼女の強さに私は感動してしまった。
身のこなしもそうだけど。
とっても軽やかで綺麗だった。