まだまだ始まった夏休み。
のんびりと過ごすには多忙な高校生活。その、幼なじみと恋人になったことあるわけで、私の傍に付いている忍びにお父さんへの手紙を預ける。
許嫁の件。
断って貰えるといいけど。お父さんの事だから私の意見を聞きつつ、私のために九能先輩より最善最高の相手を用意しようとするはずだ。
しかし、問題はその事実を黙っていること。
「九能先輩。スイカ割り、する?」
「する」
私の提案を即座に受けた九能先輩は竹刀袋を締める帯を解き、剛刀「風林火山」を引き抜いた瞬間、その余波で海に横一文字の亀裂を作り出す。
あの刀の他に残り九本の聖剣が存在する。
本当に悩ましく思える程、この世界は変わっている。そう考えながら水着姿の魔女先輩が目隠しをした九能先輩と私の目の前を横切り、クスリと笑った。
彼女の周りは変な気配がする。
「九能先輩、右だよ」
「九能ちゃん、左よ」
「ムッ。その邪悪な声は天道なびき!」
「あらやだ、バレちゃったわね」
「九能君、真っ直ぐ歩くといいわよ」
「小鎌君っ!?くっ、僕と交際できないと知りながらも話しかけてくるなんて……なんてっ、いじらしいんだ!しかし、僕には切君がいるんだ!」
「「あらぁ…」」
……なによ、嬉しいですが?
すごく嬉しいですけど?
そんな微笑ましいものを見るようにニヤニヤと笑わないで貰えるかな。心がざわついて、うまく言えないけど。物凄くムカつくかな。
「そこだよ、九能先輩!」
「九能君、右だ!」
「九能ちゃん、後ろに回って三回転して」
「えぇい!どれが本当なのだァーーーっ!!?」
木刀を大上段に構えたまま砂浜を摺り足で動く九能先輩の困惑めいた叫びに私達はクスクスと笑いながら、三人其々の違う場所に立って話しかける。
「九能先輩、こっちだよ」
そう呼び掛けた瞬間、鋭い唐竹割りが砂浜を切り裂き、あわや私も真っ二つに両断されるところだった。危なかったと思いながらも綺麗に切れたスイカをキャッチし、手早く五人分に切り分ける。
句君はずっと食べている。
そんなに食べてお腹痛くないのかな。
「塩かける?」
「いや、僕はこのままで構わない」
「九能ちゃんたら偏食なのね」
「どこがだ!?」
偏食なのかな?と塩をかけずにスイカを食べていると、みんなの視線が私に集まる。後ろに振り返っても何もいないから私なのだろう。
「切さん、自分のポテンシャルに気付きなさい」
「売れるわね、一枚撮っていい?」
「やめんか馬鹿者!」
さっきから、何を言っているんだろうか。