古典的な修行法と言えば山籠りだろう。
私の師匠バット・リーも忘我の極意を理解するまで「舞う」事を強要していたが、響君の場合は耐久力と一撃の破壊力を底上げするらしい。
「だあっ!!」
「馬鹿者っ、突っ込んでどうする!」
手足を縛って人差し指のみで巨岩を砕く攻撃を繰り出すように怒声を浴びる響君。私の破傀拳に通じるモノを感じるけど、万物の点穴を見極めるというのは、どちらかと言えば「仙術」に分類する技能だ。
一朝一夕で身に付くとは思えないけど。あの気迫ならあるいはたどり着けるかも知れないと思いながら、私も折角だからとトレーニングを始める。
ゆっくりと岩肌の上で倒立し、剣訣指で身体を支えたまま腕の力だけで飛び跳ねて地面を突く。しなやかな筋肉を維持するのも大事だけど。
「ほう。見事なものじゃな。小僧、お主もあれぐらい出来るようにならねばならんぞ」
「ぐっ、こなくそぉーっ!」
荒ぶる打突は巨岩を砕けず、割れず、グキッと鈍い音を立てるばかり。響君の努力は凄いと思うものの、早乙女君みたいに四六時中戦いを想定しているわけじゃない。
彼は純粋に成長性の強すぎるタイプだ。
いわゆる喧嘩殺法の響君と無差別格闘流の早乙女君は相性は微妙。スタミナ、パワー、スピード、この三つも現在は三つとも早乙女君に軍配は挙がる。
しかし、あの修行法は危ない。
「うおおおおぉーーーっ!!!」
ドドドドッ、と巨岩を突く指は「あかねさん」と文字を作ってしまう。響君は横恋慕をしているなら手伝うのはダメな気もするかな。
実際に調べないとわからないけど。
「お嬢様、父君のお手紙を」
「ありがとう。それからお嬢様じゃないかな」
そう言いながら二通目の手紙を開く。
…………私の許嫁は婚約破棄を承諾しておらず、私と交際中の九能先輩を八つ裂きにすると宣っており、とても面倒な事になっていることは分かった。が、素直にお父さんの理想を叶えるために従うつもりはない。
「糸色殿、お主も一つ。この恋患いの小僧に一手教授してみるつもりないかのう」
「じゃあ、こういうのはどう?」
ちょうど良さげな岩肌に五指の指先を軽く押し付け、くるりと手を内側に捻り込み、拳を握り締めるように拳打を撃った旬か話、螺旋状の衝撃が壁を粉々に粉砕する。
「仙術の基本技。対人対物どちらにも使える気力を送って内部破壊する『貫・螺旋撃』っていうものなんだけど。知ってる?」
「爆砕点穴以上の応用技術じゃわいの」
「す、すげえ!」
感心するお婆ちゃんと興奮する響君。
「こわしや」という名を継ぐ人間の極めた特殊体術「仙術」は気力を送り込み、万物の理を理解して、ようやく一人前の強さを得る。
まだまだ、こっらは半人前だけどね。