シャンプーのお婆ちゃんの恐ろしい一指修行法と、私との組手もこなす響君のポテンシャルは私の想像を超えていた。スタミナもパワーもスピードも全てが飛躍的に上昇している。
しかし、あくまで基礎能力だけ。
あくまで私達の与える修行を繰り返しているおかげで、強くなっているわけではない。彼の努力と持続の賜物だと私は思う。
「ぬあっ!だふんっ!?」
勇ましく一指を突き立て、巨岩に激突する。
正直、拳士とは思えない有り様だが、彼も彼でものすごく頑張っている。頑張っている人を手助けするのは当然かなとおもいつつ、また激突する響君を見上げる。
早乙女君に負けたくないという気持ちも分かる。私も当主になるために頑張っていたし、そこそこ高い位置にいることも理解している。
「糸色殿、お主のアレはどうじゃ?」
「まだダメかな。気力の練り込みにムラが多くて」
仙術における打撃は物質に隙間を作り、その箇所に気力を送り込み、拳打や掌打を捻り込み、内部破壊を行う特殊体術。しかし、響君はいくら教えても拳打で外部を壊し、砕く。
悪くはない。
シンプルな強さだと思うし、繊細さを必要とする仙術の基本技も体得したとき、響君は柔よく剛を制す、その真逆の剛よく柔を断つも手に入れる。
「爆砕点穴っー!!」
「点穴を見極めよ、小僧め」
がむしゃらに突き、吹き飛ぶ。
二十回を越える巨岩との衝突に渡しは少し可哀想に思えてきた。けど、響君は必死に頑張っているのに私が勝手に哀れむのは違う。
「爆砕点穴って要は経絡の集結点を打つ技だから意識を集中して、ゆっくりと見極めておけばすぐに使えると思うよ?」
「糸色さんはすごいなぁ!」
ぐるりとまた身体をひねって私に向き直る響君の言葉に頷き、フンスと胸を張って自慢するように笑うと、なぜ響君は顔を赤くしてしまった。
「フフ、ありがとう♪︎」
「魔性の女じゃな」
「魔法は使えないかな」
そうシャンプーのお婆ちゃんと話しながら山の中に視線を移すと早乙女君らしき、早乙女玄馬らしき、二人が見えて荒々しく拳の応酬を繰り広げる。
うん、かなり強くなっている。
「ほう。婿殿も同じ山で修行しているとはな」
嬉しそうに笑ったシャンプーのお婆ちゃんは駆け出し、彼らの事を追いかける。すごい速さで向かっていくお婆ちゃんに呆れながら、響君の身体を縛る縄をほどき、一旦休憩にしようと笑う。
しかし、響君もかなり筋肉質になった。
けど、これだけではまだ早乙女君には勝てないかも知れない。どうにかして、強くしなきゃねっ!