「奇遇じゃな、婿殿」
「こんにちは、早乙女君。おじさん」
「うげっ、妖怪ババア!?」
「糸色君とコロンさん、かあッ!」
「ぎゃああっ!?」
私達に意識を向けてしまった早乙女君は枝を蹴り折られ、そのまま地面に激突してしまった。随分と痛々しい音が聴こえたけど。
あまり酷い怪我はしていないわね。あかねさんも来ているか飯盒でご飯を作っているのが見えたとき、カレースパイスになんだか甘ったるい臭いが混ざっていた。
酢?
そう私は小首を傾げながら胴着姿のあかねさんに近づき、ゆっくりと手刀で薪を割る手捌きに感心するものの、少し異臭を放つお鍋によって、周囲の動物や低級妖怪が倒れているのが見えてしまう。
まさか、ふたりを毒殺しようとしている?
「貴様、乱馬ァ!!」
「ぐっ、またテメェか良牙!?」
ボロボロになった響君は今までの怒りをぶつけるように早乙女君の事を殴り、その拳打を通って気力を送り込まれた早乙女君は僅かに苦悶の表情を浮かべる。
「ちょっとカレーに土が入るじゃない!」
「あかねさん!?」
「土石カレーなんて食べたいのかな」
みんなの行動を見ながら私は小皿で差し出されたカレーを一口食べた瞬間、私は生まれて初めて食べ物による死の覚悟を決めてしまった。
これは、人間の食べ物とは思えない味だ。
いや、こういうカレーなのかも知れない。
「美味しい?」
「美味しいよ。危うく召され掛けたかな」
「もうっ、そんな極上の美味だなんて!」
「そこまで言ってねえだろ」
「良牙君も食べる?」
「是非!!!」
そう言いながらも稽古を止めて、焚き火に集まる早乙女君と早乙女玄馬、あかねさんに名前を呼ばれて嬉しそうに早乙女君の隣に座った。
ちゃっかりしているかな。
「「「いただきまーす!」」」
「ほう。中々、独創的な味わいよな」
「お、美味しいです!あかねさん!」
「そう!良かったぁ…」
「い、糸色っ、テメェ嘘言いやがったな!?」
「あかねさん、早乙女君は辛かったみたいだよ」
「えぇ?甘口で、白ワインも入れたのに!?」
白ワイン。
なるほど、それを酢と間違えたわけだ。
「フッ。この程度で辛いだと?」
「グッ、あかね!おかわりだ!」
「なにッ?!あかねさん、オレもだ!」
「しょ、しょうがないわねぇ」
ずいずいと空っぽのお皿を差し出されて、嬉しそうに笑うあかねさんの傍らには白目を剥いて気絶している早乙女玄馬が居るけれど。
あかねさんは気付いていない。
まあ、そういうこともあるかな。
「お婆ちゃん、お水どうぞ」
「感謝」
カレー、残らない勢いだな。