響君と早乙女君はお互いの陣営に戻り、技の習得に励みつつ、お昼になると両陣営の真ん中に位置する場所でキャンプ料理をする私とあかねさんの待つ場所に戻ってきて、黙々とご飯を食べて回復のために仮眠を取る。
片方は万物の理を知り、物質を爆砕する秘拳。
片方は流派の奥義を学び、より強くなるために。
其々の目標を定めて、真剣に鍛えて高め、頂を目指してお互いを意識している。もっとも早乙女君は自分の強さにほんの少しだけ慢心しているようにも感じるから、素直に感心することは出来ないかな。
「「お代わり!」」
「はいはい」
満更でもない笑顔で飯盒の蓋におかずを取り分けるあかねさんの隣では、今日も白目を剥いて気絶している早乙女玄馬が見える。
あかねさんが気付かないようにメイクを施し、恰も起きているように見せる。それにあかねさんの料理も慣れれば美味しいかな。
うん、刺激的な味わいだよ。
「乱馬、この肉はオレのモノだ」
「ふざけんなよ、良牙。コイツはオレのだ」
お箸とお箸をぶつけてお肉を取り合う早乙女君と響君の二人に呆れながら、あかねさんに忍びの取ってきてくれた山菜のスープをお椀に装い、手渡す。
「ありがとう。良い香り…」
「群生地があるんだってさ」
「そうなの?」
そう山の中の話で盛り上がっていると、また視線を感じる。この街に来てから時折感じる視線、イヤな感じではないものの、無遠慮に、見られるのは好きじゃない。
しかし、おおよその予想は出来ている。
私の許嫁だ。おそらく九能先輩との関係を知って、監視と近況報告を行うために二、三人、私の傍に潜むように指示を送っている。
句君や小鎌さんがいるときは気配を感じないのは本条家の人間を警戒しているせいだろうね。本家と分家を問わず、本条家は糸色家に仕え、主君と認めた相手を見守り続ける役目を担っている。
まあ、最近は護衛も少ないみたいだけど。
「糸色殿、あの気配をイヤな流れを感じるぞ」
「知っているよ。でも、此方も不誠実だったかな」
先に断っておけば拗れる事はなかったかも知れないし、監視の目が厳しいのは甘んじて受け入れるけど。早乙女君と響君はただのお友達だから無関係だ。
今度、正式に会わないといけない。
少し気が滅入る。
けど、許嫁関係も解消せずに九能先輩とお付き合いしている私のほうが悪いのも事実だ。会ったことないけど。お父さんの選んだ人だから年上だろうし。
そのときは素直に謝ろう。
まあ、許されるのかはわからないけど。
多分、許して貰えないかな。