「爆砕点穴っ!!」
「猛虎落地勢っ!」
人差し指で地面を突き刺し、爆砕する響君まで超低空姿勢のまま駆け抜ける早乙女君の動きに虎の姿が重なると同時に彼の姿は一瞬にして、響君の視界から消える。
もっとも私とあかねさんは木の上にいるおかげで早乙女君の動きは丸見えだった。早乙女君は、二度目の爆砕点穴に乗じて、真上に跳び上がり、身を捻ったのだ。
曲芸のように思えるけど、意表を突ける技だ。
「猛虎一撃態ッ!!」
「がアッ!?」
後頭部を両足で蹴り抜き、地面に叩き落とす。決まれば一撃必殺になり得る攻撃だった。────けれど。響君のタフネスは私とお婆ちゃん仕込みだ。
並大抵の攻撃は通じない。
ちょっと鍛えすぎたかも知れないかな。
「今のは、効いたぞ。少しなァ…」
「ゾンビかテメェ!」
「確かに、ちと打たれ強さが異常じゃの」
「気功法は何も攻撃に特化した技術じゃないよ。転じれば治療にも使える」
流石にひとえ様の直系のみに使える異能ほど際立った能力じゃないけれど。少なくとも打撃戦に於いて受けたダメージを即座に回復する程度、容易い事だ。
「糸色仕込みってわけか…」
「まるで私が悪いみたいな言い方だね」
「婿殿からすれば悪いかもしれんな」
「切さん、私も否定できないわ」
みんな、酷くないかな。
ほんのちょっとだけ、すごーく、かなりショックを受けた気がする。いや、私はお友達にそういう風に思われていたことにショックを受けている。
「響君、教えたの全部使って良いよ」
「最初からそのつもりだ!!」
私の言葉に吠える響君は人差し指を折り曲げ、拳を握り締めると早乙女君を殴り飛ばした刹那、気力で浮いた右肩の関節が「ねじり」で外れる。
「仙術の基本技の一つ、解・穿功撃。響君の攻撃を受ければ関節は一瞬で外されるよ」
「なんちゅー技を良牙に教えとんだ!?」
「仙術の奥義は教えてないよ」
そもそも、あの力を使えるとは思えないし。
糸色家の人間でも使える人は限られている上、仙術指南書を解読して私達にも使えるように改良を加えた糸色妙様より強い人間は存在しない。
世界最強?いいや、糸色妙様は宇宙最強だ。
あの人の弟、遠君も強いけれど。
糸色妙様のように「絶対」という確信を与える強さはない。バット・リーも彼女なら獣拳の真髄にたどり着けると言うほどに規格外の才覚を持つ。
それが、私達の頂点なのだ。
そのお子さんの巓様も齢1歳で圧倒的な威圧感を放っているし、本当に強すぎて、どうしようもないと分かっているのに私は彼女を追いかけてしまう。
憧れに、追い付きたい。