格闘出前レースから一週間が経過し、夏休みも終わった事を悲しみつつ、小鎌さんと一緒に初めて銭湯というものを楽しんでいたのに、大変な事になった。
「あれ?無くなってる」
「切さん、私の下着そっちに紛れてない?」
「ううん、私の方も空っぽだよ?」
「えっ、まさか下着泥棒?」
どうしようかと私と小鎌さんが悩んでいるのにトーストにジャムを塗って軽食を堪能する句君。彼は色恋沙汰に人並みには興味は持っているみたいだけど。
こんな非道な行為はしない。
一体、だれが私達の下着を盗んだのかな?と考えていると窓の外を跳ねる人影を見つけ、ガラリと窓を開けて身体を乗り出すと大きな風呂敷を背負った小柄な人影を見つけたものの、かなりの手練れだ。
「本条家の忍びが負けた!?」
「御庭番衆と剣客兵器も何人か負けているね。推定できる強さは早乙女玄馬と天道早雲以上の達人かな。句君、君に任せてもいい?」
「んぐっ。ああ、下着を取り返せば良いんだろ?」
それは後回しだね。
あの量から考えるに、二十人以上の乙女の下着を盗んでいるみたいだし。彼の向かったのは間違いなく無差別格闘流天道道場の方角だ。
あそこは、みんな綺麗で可愛いから狙う人も多い。
「ぐえっ…!」
「わっ、よ!」
のっそりと私と小鎌さんの身を乗り出していた窓に近付いてきた句君は小鎌さんの背中に乗るように身体をあずけ、ジッと駆け抜ける人影を見据える。
私は潰される前に物干し竿の上に乗り、潰れなかったけれど。小鎌さんはものすごく重そうに顔を歪めながら句君の身体を押し退けようと頑張る。
ふと何か光るものが見え─────。
「…待って、私の如意棍槍かな!?」
慌てて句君の横をすり抜けて、槍掛けを見ると盗まれていた。私と小鎌さんがお風呂に入っている間に家宝まで盗むなんて許せない。
絶対に取り返す…!
「句君、投げて!」
「分かった」
「えっ?ちょ、わたしもおおおおおおおっ!!?」
そんな小鎌さんの悲鳴を聞きつつ、私は槍を引き伸ばして頭上で回転を加えた槍を利用し、飛翔しながら私の槍を盗んだ下着泥棒を追いかける。
刹那、風呂敷と如意棍槍を残して下着泥棒は消えてしまう。消えた?どこかに潜んでいるのかと警戒しつつ、周囲を見渡すも完全に見えなくなっている。
どこかに隠れているのかも知らないけど。
自分の下着と槍を取り返せたから今は許してあげよう。ただ、ここまで沢山の下着を集めていた人間がこうも簡単に荷物を捨てるとは思えない。