盗まれた下着を手洗いし、残った盗難品を交番に届けると物凄く困惑した顔付きで拾った場所を聞かれ、どういう人物だったのかを聞かれる。
「スウィート!」
「へ?」
小さな人影が私に飛び掛かるのが見え、思わず振り返ると小柄なお爺ちゃんは動きを止め、地面に着地し、困惑と焦り、憧憬めいた顔で私を見上げている。
「い、糸色殿…!」
「?はい、私は糸色殿だけど」
「やはり生きて……いや、明らかに胸が違う。ワシの知っておる糸色殿とは別人、孫か曾孫じゃな!」
ウンウンと頷くお爺ちゃんの背中に蹴りを繰り出す早乙女君の足を手で払うように跳ね上げ、お爺ちゃんを引っ張り上げる。
「何しやがる糸色!」
「ご老人に蹴りはダメかな」
そう言いながら私は早乙女君とお爺ちゃんを交互に見比べて、何があったのかを聞けば、このお爺ちゃんこそ無差別格闘流の開祖にして近頃頻発している下着泥棒の犯人であり、今も注意していたそうだ。
でも、相手はお爺ちゃんよ?
私の言葉に早乙女君は「ソイツは無類の筋金入りの女好きだ!糸色みてえに胸のでけえヤツが一番あぶねえんだ!」と言った瞬間、あかねさんの拳骨が早乙女君の頭を殴り、地面に叩き落とした。
「何を言う。乱馬よ、ワシは糸色ちゃんに不埒な真似はせんぞ!確かにスウィートなお胸じゃが糸色景殿なくば無差別格闘流は誕生しておらん!!」
「そうなの?」
「知らねえよ」「そうだったの?」
二人も初耳だったらしく、私もどういうことなのかと小首を傾げていたその時、イヤな気配をまた感じ、視線を周囲に向けると、お爺ちゃんが知らない黒服の男を捕まえて帰ってくるのが見えた。
「わははははっ!ワシに隠形で勝てると思うたか!」
「ぐうっ、このエロ爺がァ…!」
「八宝斎の爺、ソイツだれだ?」
「知らん。糸色ちゃんの事をカメラで撮影しておったから連れてきたぢけじゃし」
「これ、生放送だね。誰に放送しているのか教えてもらえるかな?」
「貴女様の結婚するべき御方様です。あの様な不埒な剣術被れなど『糸』の名を継ぐ貴女に相応しくありません!!我が一族の長こそが相応しいのです!!」
いきなり私の許嫁の事を話す黒服の男にビックリしながら、このカメラの向こう側に居るのは私のところに一度も会いに来なかった婚約者というわけだ。
しかし、私は九能先輩の恋人だ。
「悪いけど。私は会った事のない人より、幼なじみの九能先輩のほうが好きなんだ」
「後悔しますよ」
そう言い残して、彼は煙幕を張って逃げた。