「では、改めて紹介しよう。この方こそ無差別格闘流の開祖にして諸悪の根源たる八宝斎先生だ。明治時代に頭角を現し、日本諸国、中国津々浦々を渡り歩いて武者修行していたお方なのだ」
【その通り】【偉いお方だぞ】
天道早雲の言葉と早乙女玄馬のプラカードを見る。そうは見えないけれど。確かに異様な闘気を感じ取ることは出来るものの、私に向ける憧憬の眼差しは怪しい。
そして、本条家の家宝「大鎖鎌」を盗んだ人物であり、私の如意棍槍を盗もうとした人物である。更に付け加えると明治時代の糸色景様を知っている。
「その百歳越えの爺が今更何しに来たんだ?」
「句、目上の人は敬いなさい。確かにちゃらんぽらんのどうしようもないダメ人間の代表みたいない死にかけの枯れ木みたいなお爺ちゃんだけど」
「言い過ぎじゃろ!?」
そう八宝斎のお爺ちゃんが叫ぶ最中、私はかすみさんと一緒にお茶やお菓子を運ぶ。私の傍に寄ろうとするお爺ちゃんは全員に睨まれ、叩かれる。
そこまでしなくてもいいんじゃないかな?
「切ちゅわあぁん!みんなが苛めるんじゃ!」
「切さんに近付かないで貰える?」
「まな板は黙っとれぇい!」
「まな板よりあるわよ!?」
「うん、着痩せするタイプだよね」
そう話しながら彼女の隣に座っているとお爺ちゃんが飛び付きそうになってきたとき、避けきれずに倒れ、少し舞う埃に咳き込み、私は
「切ちゃん、お主まさか?!」
「けほっ、はい?」
……ああ、明治時代に生きていた人なんだよね。糸色景様と関わっているなら病気の事も知っているだろうし、その事を思い出したのかな。
「私は大丈夫かな。ほら、元気だよ」
「じゃ、じゃが…」
お爺ちゃんの狼狽えように目を見開く早乙女玄馬と天道早雲の二人は何かあるのかと聞きたそうに私を見据えるけれど。ごく稀に糸色景様の血筋の発症する遺伝的な病気の事を伝えるつもりはない。
幸い、私の世代は発症していないからね。
糸色妙様と糸色類様のご息女も患っていないと良いけれど、あの病気はどの様に遺伝しているのかが全く分からない上、心臓疾患に症状が似ている。
だけど、治療法は見つかっていない。
本当に何が原因なのか分からないものか。
「姉ちゃん、大鎖鎌のこと聞かねえのか?」
「────ッ、そうだったわね。八宝斎、本条家の家宝を何処に売り飛ばしたの!あと一本なのよ!何処に置いているのか吐きなさい!」
「姉ちゃん、潰れる」