『珠金剛散弾の戦法』
かつて古代中国で皇帝の悪政に反旗を翻した民衆がクーデターを引き起こした。民の暴動に身を隠していた一族は側近の裏切りによって捉えられ、皇帝や血を継ぐ男児たちは磔に処された。中国の仏教では亡くなった者は苦行を経て輪廻転生の教えがあり、悪政を敷いた罪人たちが生まれ変わり再び血を残すことを忌み嫌った民衆は、転生後に子孫繫栄が出来ないように赤唐辛子の粉末を男の局部にまぶして鉄球で潰した。それは三日三晩行われるが拷問で耐えることの出来ない痛みに喉を枯らして息絶えてしまう。なお仏教の起源であるインドでは赤唐辛子ではなく塩を用いていたが口伝によって血で赤く染まった塩を赤唐辛子だと間違って伝承されてしまった。
戦国の世に上記の文献を読んだ尾張の武将は金剛の珠(鉛玉)を三段に分けて、迫りくる騎馬隊を火縄銃で迎撃する戦法を考案し長篠の戦で勝利したことから、日本でも三段構えの戦法が広く普及したのである。
顔面や腹を拳で殴られたらすぐに痛みが襲ってくる。なのにタンスの角に足の小指をぶつけた時にタイムラグがあるのは何故か?それは経験の差である。殴られる瞬間に脳が”これぐらいの痛みだろう”と予想して体に伝わってしまう
日常生活において男の大事なモノが殴られたり蹴られる経験が毎日あるだろうか?答えは否である。経験することがないから想像することが出来ない!格闘家だって急所への攻撃はタブーとされている。だからこそ痛みを理解するのに時差が生じてしまう。……そして理解すると
「ガァァああッああああAAAAッAGaaaaaa‼」
キャロライナリーパーとデスソースがブレンドされたゴムボールを受けて無防備となった下半身に15ポンド(約6.8キロ)のボウリング玉が直撃しクロノ・ハラオウンは獣のような叫び声をあげながら泣いている。既にパンツとズボンは地面に落ちてしまった
男のエンブレムを周囲に見せびらかし殺虫剤を食らった虫の断末魔のように滅茶苦茶な軌道で飛び続けるがそれすらも悪手である。腫れあがったモノに風が当たれば刺激となって痛みを生み出す。自分のやっていることが己を追い込んでいる
「さて…ん?」
地上に降り立った誠はアルフと呼ばれたボインちゃんの所へ近づく、すると金髪の女の子が両手を広げ立ちふさがっていた。彼女の容姿はどことなくアリシアに似てる
「ごめんなさい…だけどこれ以上は」
「謝ったら全部許されると思っているのか?例えば人を殺しても”ごめんなさい”で終わるか?」
「それは」
「それにボインちゃんには前にも襲われてる」
「ボイン………あなたがアルフを」
金属バットが破壊され彼の手に残された武器は釘バットと木刀しかなかった。振うつもりはないが目の前の女の子を威圧する為に釘バットを『四次元マンション』の中から取り出すと
『そこまでにしていただけないかしら?』
突然誰のものでもない声が響いた。誠は釘バットを構えて臨戦態勢にとなって周囲を見渡した。すると何も無い空間にスクリーンのような映像が展開される
「あんたもボインちゃんや下半身むき出し野郎の仲間か?」
『……そうです。彼は私の部下です』
何か言い淀んだ口ぶりだったが気にすることはなかった。クロノはビルの屋上に降り立って貯水槽のタンクを鼻水を流し泣きながらこじ開けると着衣のまま飛び込んで真っ赤に腫れあがった患部を冷やしている
「何の用だ?泣き虫の弔い合戦か」
『いえ…そんなつもりは、ただ一連の事情を聞かせていただきたいので私どもの艦に来ていただけないでしょうか?』
「襲っておいて来てくださいってふざけてるのか?それともすごく見下しているのか?」
威圧するように魔力を放出しスクリーンを睨みつける。なぜあんたがイニシアチブを取るんだ?場合によっては冷却中のクロノを五体不満足にすることも出来る
『決してそんなつもりは』
「ならこっちに降りてこい、アレ以外にも仲間がいるんだろ?武器を持たずに1人で来るんだな」
『それは』
「見下している相手に命令されるのは嫌か……なら決裂だ!」
壁に手をかざして『四次元マンション』の扉を作ろうとするが
「待ってください!」
大きな声で呼び止められ進行を阻止されてしまう。金髪の女の子は震える手で服の袖を引っ張り誠が動かないようにしている
「なんだ?」
「艦長を……私たちを信じてくれませんか?アルフやクロノがやったことは私が償います。だけど今は話しを………お願いします」
『フェイトさん』
その言葉に腕を組んでいた彼は頭の中で思案する。アリシアに似ている女の子は艦長と呼ばれた女性と深い関係であることは見てとれる。そして向こうは自分を会話のテーブルに着かせたいが主導権は渡したくない
「艦長さんよ!話すのは構わないがやっぱり1人で降りて来い」
『ですが』
「こいつは人質として預かっておく、悪いようにはしない3食昼寝付きの高待遇だ!」
「えっ」
「腹が決まったら海鳴駅の伝言板に『XYZ』と時間を書いてくれ、そしたらここで話し合おう」
壁ではなく地面に扉を作った誠は少女の肩を掴んで溶けて沈むように中に入って消えていった。残されたアルフは消えていく主に手を伸ばそうとしてるが距離は遠く、慟哭のような叫び声をあげながら拳を叩きつける
「すぐにフェイトさんを追って!」
「ダメです反応が全くありません」
「クロノ執務官の救援を急げ!医療班ありったけの氷を用意しろ患部を直接冷やすんだ」
艦内は大騒ぎとなり局員たちが慌てふためいていた。先日の騒動から24時間もしないうちに騎士たちが現れたのを確認しクロノたちを派遣したが応戦していた少年によって退却してしまった。彼から事情を聞き出そうとしたが、フェイトの使い魔が襲い掛かりクロノも杖を構えた
時空管理局の執務官は最高クラスの戦力である。それをデバイスを持たない少年がAAA+クラスの魔導師を圧倒した。戦闘中に女性局員は画面から目を逸らしボウリング玉が直撃した瞬間に男性たちは自分の股間を押さえつけた
「そんな…どうすれば」
デバイスがあれば消息を追うことが出来るが先日の戦闘で破損し修理中である。念話も届かない主導権は完全に向こうに持っていかれたのである
「私をどうするつもりですか?」
「別にどうもしないよ、向こうは君のことを大切な存在だと思うし」
「こんなことをしてもすぐに」
「この中は完全に外と遮断される。電話も繋がらないし魔力を放出しても無意味」
フェイトと呼ばれていた彼女をよく見ると背は違うが生き別れの双子のようにアリシアにそっくりだった
「こっちも聞きたいことがあるが、その前に晩御飯だ!」
「私はいりません」
「ダメだ3食昼寝付きと宣言したんだ絶対に守ってもらう。プレシアさんの作る料理の味は俺が保障する」
「……えっいま…なんて?」
彼から発せられた言葉に驚いてしまう。それは半年前に虚数空間に落ちた母の名前と同一だった。たまたま名前が一緒?だけど彼は友達と同じ日本人に見える。問い詰めようとしたが彼は扉を開いて外に出てしまった。後を追ったがそこには扉が無かった
「ただいま」
「おかえ……なにがあったの?ボロボロじゃない」
「ペタン娘ゴスロリ女に襲われた」
その言葉を聞いたプレシアは彼が深手を負ってないか確かめアリシアは救急箱と家内安全のお守りを持って近づいてきた
「とりあえず4人分用意して、分かりやすく話をまとめるから時間を頂戴」
今日起きたことを普通に語れば3時間超えになるだろう。それだと要点が分からなくなり頭に入らない、頷いたプレシアはもう1つ茶碗を出して白米を盛り付けるのであった
「襲ってきた魔導士を撃退して、管理局の人間を無力化って」
「ちなみにこれが魔導士の使ってたデバイス」
「あなたねぇ…」
額に手を当て目を閉じるプレシアは酷い頭痛に襲われた。この弟子は規格外にも程がある。半年前は魔力の扱い方が杜撰だったのに軽く説明しただけで自己トレーニングを考えて実行した
「しかも人質までとってくるなんて、ねぇ艦長って人だけどエメラルドグリーンみたいな髪色じゃなかった?」
「そんな感じだったような気がする」
脳内でロックバンドが歯ギターを披露し頭痛が更に酷くなりプレシアはテーブルに突っ伏して頭を抱え、アリシアは心配そうに見つめながら小さい手で母の頭を撫でて「痛いの痛いの飛んでけ!」と口にしている
「まさか人質って」
「ご飯持って行かないと」
お盆を持った彼に同行し中でプレシアが見たのは
「フェイト」
「…母さん」
「…っえ?親子?ってことはアリシアのお姉さん?」
まさかこんなところで二度と対面することが不可能と思われた2人が出会うとは、そしてアリシアは隙を見て冷凍庫にあるバレルサイズのアイスにスプーンを突き立てるのであった。
まさかの親子の再会です。今週は夜勤なので先週のように毎日更新は難しいですが頑張ります
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