心配性の実力者は今日も鍛え続ける   作:大気圏突破

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CV檜山さんがヤバイことになります


1試合完全燃焼!

 誠の扱う『四次元マンション』には制約がある。中に入る扉を作るには地面か壁に手を触れないといけない、つまり空中や水中だと使用することが出来ない

 

 そして彼の弱点は射撃や砲撃といった遠距離攻撃の手段が乏しい、無論出来ない訳ではないが威力を伴った攻撃を放つのに時間を要してしまい隙が生じる

 

 

「んなろっ!」

 

 苛立ちながら舌打ちをする。自分たちを襲ってきた仮面の男は嫌らしい攻撃を仕掛けてくる。緩急をつけた射撃魔法で地道に体力を削り接近してこない

 

「あがっ!」

「どうした?この程度か」

 

 こちらから接近してもトラップのように配置したスフィアの爆発で視界を塞がれカウンターを受ける。しかも地面に落ちないように逆方向に回り込んで蹴りを食らわせてくる。防御をしてもダメージは0ではなく甘いところを的確に狙っている

 

 

「(啖呵を切ってもこれじゃカッコ悪いな!)」

 

 今までの戦闘が受け身だった。相手の攻撃を受けてから対策を考えて必要なモノを取り出したり身の回りにあるモノを使っていたが、その手段が封じられている

 

「(どっかで見てたって訳か)」

 

 使えるのは釘バットとバンジーガムぐらいで砲撃系の魔法は当たらないだろう。額から流れ落ちる血を拭った誠は最初に逃げていればと後悔するのであった

 

 

 

「母さん!」

 

 アースラの艦内は喧騒に包まれていた。律儀に命令を守っていた彼等は監視用のスフィアを飛ばしモニターから交渉を見守っていたのだが、突如として現れた正体不明の乱入者によって慌てふためいている

 

「すぐに向かう!」

「駄目です!ジャミングが酷くて転送が出来ません」

「結界を張られて外から破壊は難しいです」

「母…、艦長は?」

「テスタロッサさんと同じように消えました。おそらくは」

 

 

 緊急で指揮を執るクロノは床を強く踏みつけてしまい、治っていない局部が振動する痛みに悶絶しながら目の前に映るモニターを睨みつけるが状況はよろしくない、自分をコケにした彼がコテンパンになる様子に奥歯を強く嚙みしめる

 

 

 

「がっ!」

 

 魔力を込めた左ストレートを放つが伸び切ったところを狙われてしまい腹に回し蹴りを受けて吹き飛ばされる。体勢を立て直す間もなく追撃されてしまいボロボロになるが相手の手は緩まない

 

 体格差やレベル差もあるが誠にペースを握らせないことを徹底している。右腕と肋骨がジンジンと痛み出してきたが気合いで抑えつける

 

 

「(0距離まで近付けばどうにか接近戦に持ち込むことが出来れば)」

 

 

 身体強化を最大限に使っても追いつかない、手持ちの釘バットにはヒビが入って覇竹を使えば1発で粉々になるだろう

 

 

「デバイスを渡せば見逃してやる!」

「(そう言って渡す馬鹿がいたら会ってみたいね……ん?)」

 

 

 何か変な感覚に陥る。喉に魚の小骨が刺さったような違和感を抱いてしまうが答えが見つからない、頭の中でアレコレ考えていると敵の背後で流れ星がキラリと輝いて横切る

 

 

「(いっそのことお星様に願ってみるか?)」

 

 もう手段が見つからない、バットに白いハンカチを巻いて降参の意志を示しても無意味だろう。しかし彼の脳内では何かが弾けようとしている

 

 

「いっ!」

 

 釘バットを握りなおすと手のひらに痛みが生じた。よく見ると摩耗と戦闘によるヒビが原因でささくれた部分が刺さったのである。そのときの誠の顔は悪魔のような笑みを浮かべていた

 

 

 

 

「あいつは何をしてる!」

 

 貧乏ゆすりをしながらモニターを睨むクロノは唾を飛ばして叫んでいた。視線の先には誠が馬鹿のように突進をしながらダメージを受けて追撃の射撃や爆破トラップを受けている。そして煙の中から再び仮面の男に向かって突撃する。誰もが万策尽きてやぶれかぶれの特攻を仕掛けているように見える

 

「遠くでも構わない!僕だけでも」

「しかし1番近いところでも約44キロ以上離れています」

 

 局員の言葉に苛立つ、仮に自分が加勢したところで状況が好転するとは限らない!地上にいる高町なのはに連絡も出来ない状況はクロノに心配の種を植え付けてしまう

 

「…母さん」

 

 縋るのは消えてしまった母親だけだった

 

 

 

 

 

「オラオラッ!」

 

 全身が血塗れになった5回目の突撃も難なく躱されてしまい追撃のダメージを負ってしまうが彼は間髪入れずに6回目に移行する。仮面の男は頭に「?」を浮かべていた。こんなやぶれかぶれな戦法は今まで無かった

 

「自棄になったか?」

 

 この無意味なことに終止符を打とうと考えていると、爆煙が揺らめぎ7回目に突入すると思いきや彼は自身の頭上よりも高く浮上していた。近くには大きな球体状の魔力が浮遊し、雄叫びをあげながら左手1本でバットをマサカリのように叩きつけた

 

「そんな攻撃が」

「散!」

 

 自身に接近する塊は小さく分裂しショットガンのように飛来する。万策尽きた最後の攻撃がこんな子供騙しのような攻撃に溜息を吐いてしまう。避けることもせず手をかざしてシールドを作ろうとした刹那

 

 

 

 

「消えろ」

「何?」

 

 攻撃が当たる前に魔力弾は消滅した。仮面の男は目の前の出来事に硬直してしまい次への反応が僅かながら遅れてしまった。

 

「木片…だと」

 

 彼の体に複数の木片が突き刺さった。視線を対象に向けると持っていたバットが歪な折れ方をしている。魔力を打ち放ったときに衝撃に耐えかねて折れてしまったんだろうと思った。想定外の攻撃に驚いたが大したダメージにはなっていない……こんな茶番はさっさと

 

 

「縮め!」

 

 突如強い力で引っ張られ誠に接近してしまった。それは彼が求めていた距離であり得意としている接近戦が出来る間合いとなりオーバーハンドブローで繰り出す右の拳が顔面に炸裂する

 

 

釘パンチ!

 

 

 その右の拳には伸縮自在の愛(バンジーガム)で粘着された釘が無数に付着していた。意識が遠のく仮面の男はどうして自分がダメージを受けて彼が釘を持っているか答えを探し、そして行きついてしまった

 

 

「(あれは…釘バットの、あの突撃はバットから抜く為に)」

 

 

 その通りだ!突撃するカウンターの追撃で爆破するスフィアのある場所に追い込む、誠は爆煙の中で少しずつ釘を抜いてバレないようにしていた。そして分裂した魔力弾は木片を隠すためのカモフラージュ

 

「(でも木片は偶然で?)」

 

 それは偶然ではなく必然だった。ゴスロリ女に”覇竹”を披露したように生前に彼は野球漫画を愛読していた。ただ少年サンデーで連載される恋愛描写込みの作品は嫌いで泥臭くスポ根系が好みである

 

 誠が披露したのは1試合完全燃焼をスローガンとした超人野球の必殺技『ジャコビニ流星打法』というもので、バットにヒビを入れて打つ事でボールとともに砕け散ったバットの破片を飛ばし守備を撹乱する危険な技である

 

 砕け散った木片にはバンジーガムが付着し1つでも仮面の男に当たれば引っ張ることが出来る。しかし彼のダメージは甚大で右の拳はボロボロであり釘も落ちてしまった。もう力は残されていないように思われたが

 

 

「もど…れ!」

「あがぅ……!」

 

 口内で何かが突き刺さる痛みに襲われた。血が噴き出し中から尖ったモノが突き破って露出している。嘔吐いて口の中から吐き出すとそれは五寸釘で誠が顔面パンチした時に『縮小』したのが上手く入ったのである。そして

 

 

「目だ!耳だ!鼻ッ!」

 

 釘で刺され、手刀で切り離され、2本の指で奥まで差し込まれてしまう。男の意識は途絶え地面に落下していった。しかし追撃の手を緩めない誠は同じように落ちながら膝を立てるとガラ空きの腹に向かって

 

 

爆砕!重落下

 

 

 とても汚い叫び声が周囲に響く、そして誠は地面に扉を作り中へ入ってしまうのであった。勝者は消え敗者は散った

 

 

 

 

 

 

「どうしたの大丈夫!」

 

 彼に押し込められたリンディは突如として現れたボロボロの誠を見て驚くが胸に抱き寄せる。着ている服が血だらけになることも厭わずに呼びかけているが反応が薄い

 

「うち……に、いる。でもあの人は……おれが」

「何を?その前にどうやってここから」

 

 その言葉を聞いた彼は出口を作り、ボロボロの指で入ることを伝えると目を開けることはなく力が抜けてしまった

 

 リンディは罠かもしれないと思ったが彼を抱きかかえて扉をくぐり周囲を見渡した。少し狭いが一般家庭の人たちが住むには十分な部屋である。そしてそこにいたのは人質となっていたフェイトと

 

「プレシア・テスタロッサ!」

 

 半年前に消え去った人物が膝の上に女の子を乗せてこちらを見つめているのであった




仮面の男を強くさせすぎたかも、釘パンチですがトリコの技とは全然違いますが釘を纏ってパンチなので「釘パンチ」です。

最初はバットのグリップを『縮小』して男の口の中に入れて元に戻したり、激辛ボールのように中に釘を仕込んだゴムボールを入れてハリセンボン状態にさせるつもりでした

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