「知らない……天井だ」
某アニメの有名な台詞を口にした誠は周囲を見渡した。確か自分は仮面の男と戦って艦長と呼ばれた女性のところに戻った。家にはフェイトがいるから彼女を介して送り届けてもらおうと考え意識が途絶えた。
デバイスを持つ魔導士は身体を守るバリアジャケットを装着するが彼は生身で格上とやり合った。無事な箇所なんて殆ど無かった
「手錠って捕まったんだな」
手元には無骨なシルバーアクセサリーがプレゼントされているが体はベッドに縛られていなかった。痛む肋骨に堪えながら腹筋に力を入れて起き上がると
「お兄さん!」
開いた扉からアリシアが入り飛び掛かるように抱き着いた。流石に嵐を呼ぶ5歳児の突撃に怪我人が持ちこたえることは出来なかった
「駄目じゃないのアリシア」
母親も慌てるように駆け付け腹に跨る娘を引き剥がして抱き寄せる。痛みから解放された誠は今の状況を尋ねようとするが更に大所帯が入ってくる
「気がつきましたね」
「ここは?」
艦長と呼ばれていた彼女に問い掛けるが口を開けたのは使い魔の隣にいたフェイトだった。そして何故自分がここで捕らわれ治療を受けているのかを語ってくれた
「プレシア・テスタロッサどうしてあなたがここに?あの時確かに私たちの目の前で虚数空間に落ちるのを…」
血だらけの誠を抱きかかえるリンディは彼女に詰め寄ろうとするが、フェイトが前に立って両手を広げる
「フェイトさん?」
「誠が母さんとアリシアを救ってくれた」
「アリシアって」
プレシアの膝上にはフェイトを小さくしたような女の子が座っていたが彼のことを見て奥の部屋から救急箱を取りに向かった。あの時にカプセルの中にいた少女と同じ名前と出で立ち、そしてフェイトの目が真実であることをリンディは理解している
「何があったの?」
「急に仮面の男に襲われて、誠君が私を安全な場所に入れたら」
「すぐにベッドに寝かして!」
何かを察したようにプレシアは彼女や娘に指示をして彼に回復魔法を施すが、出血が酷く血圧と脈拍が次第に低下し呼吸が段々と浅くなる
「お兄さん」
「目を開けて頂戴!まだ何も…返して」
懸命な治療が続くがシーツに真っ赤な染みがドンドンと広がっていく、アリシアを救った命の珠も全く光らなかった
「アースラに行きましょう!ここより設備や人が揃ってます」
リンディの提案は確かに誠を救う最善の手立てだが、管理局側にプレシアたちの存在が完全にバレてしまう。それに彼も執務官を倒しているので最悪は逮捕される可能性もある
彼をアースラに届け自分たちは逃げ出すという選択肢もあるが、プレシアはその候補を黒く塗り潰して除外していた。助けてくれた恩を返しきれてないのに非常識な真似は出来ない
「皆さんのことは私が守ります!それにプレシア・テスタロッサ、あなたはもう亡くなっています。法廷に立たせることは不可能です」
「私も誠や母さんたちを守ります!たとえ管理局やクロノと敵対しても」
「フェイト…」
2人の覚悟を見た彼女は腹を決める。アリシアに暖かい格好をさせるとフェイトは外に出て魔力放出を行って居場所を知らせた
到着したクロノはプレシアを見て驚き、そして3人を捕縛しようとするがリンディが遮るように間に入り彼の頬を平手打ちをする
「誠君は私を守ってくれました。そしてハラオウン執務官…半年前の事件の報告書に記述したことを今ここで復唱しなさい!」
「事件の首謀者であるプレシア・テスタロッサ及び娘のアリシア・テスタロッサは虚数空間に落ちて死亡と判断」
赤くなった頬を手で押さえながら自身で制作した文面を口にした
「私もそれに判子を押しました。ここにいるのはフェイトさんの母親で誠君と暮らすプレシアさんとアリシアちゃんです!」
「ですが!」
「執務官あなたの肩書きは亡くなった人を生き返らせるロストロギアですか?それとも自身の決定を簡単に破ってしまう安いモノですか?答えなさい!」
酷い暴論だが今はこれで押し通すしかない、クロノは顔を俯かせて奥歯がひび割れるほど強く噛みしめているが母の言葉に反論することが出来なかった
「誠君を救います!医療班はすぐに準備を」
リンディの指揮で3人はアースラに運ばれ彼の緊急手術が始まった。その後フェイトの魔力を感じ取った高町なのはも到着し、テスタロッサ親娘を見てギョッとしたが友達から事情を聞いた彼女はオペ室で眠る誠のことを案じるのであった
「どれくらい寝てた?」
「運ばれてから丸1日よ、あれだけの重傷を負って…もう」
「俺を放って逃げてもよかったのに」
あの時にリンディだけを外に出すのが最高だった。人質にしていたフェイトも別に拘束していなかったので逃げるのは容易だった。しかしボロボロで意識が混濁しその選択にカーソルを合わせることが出来なかった
「馬鹿なことを言わないで」
プレシアの腕が優しく誠のことを包み込む、甘い香りが鼻の奥に伝わり目を閉じると夢の世界に旅立たせてくれそうな感覚に陥る
「私とアリシアを助けてくれたのに何もしないで“サヨナラ”はしないわ」
「プレシアさん」
「私もお兄さんに恩返しするよ」
2人の言葉に呼応するようにフェイトも同じ言葉を口にしてくれた。しかしこの雰囲気をぶち壊すように
「貴様の持っているジュエルシードを寄こせ!」
「クロノ君」
「もし拒否の姿勢を取るなら、貴様やプレシア・テスタロッサをこの場で」
それは怒りに満ちた表情だった。個人的な怨みが込められている。犯罪者や自分をコケにした彼を助けるなんて言語道断だ!
「クロノあなた!」
「艦長は黙ってください!これは……これは」
しかしクロノ・ハラオウンの目論見は簡単に崩れてしまう。フェイトは彼の前に立ちはだかると
「どいてくれ!退かないのなら君も」
「曝すよ!」
その声はとても低く冷徹で彼のことをゴミを見るような目で見下し、携帯端末を取り出すとクロノが泣きながら下半身を露出している映像を大音量で再生した
「通信士の人に頼んでコピーさせてもらった」
「曝すって…こんなもの、それに」
「もし私たちや誠と敵対をするのなら、今からこれを動画サイトでミッドチルダ全域に見れるようにする」
それはフェイトの強い覚悟であった。家族を助けてくれた人の為なら自分は悪の道に落ちても構わない、母さんやアリシアのことを自分が絶対に守る気概が全員に伝わる
「そんな脅しで」
「もうエイミィにも話は通してある。ボタン1つでクロノの痴態がミッドチルダ中に知れ渡る」
『私もフェイトちゃん派だから、それにクソガキみたいでみっともないよ!』
親しんだ相方からの通信が届きクロノは膝をついて拳を床に叩きつけた。この艦に自分の味方は誰一人も存在しない、そして呼び出された局員に両脇を抱えられるように退去をさせられる
「本当に申し訳ございません」
「暴走しないように首輪と鎖が必要ですね。それと」
誠は両手で壁に触れて『四次元マンション』の倉庫部屋からジュエルシードを取り出してリンディに手渡した
「リンディさん…あなたを信じます。あの泣き虫のように振舞うのなら、繋げた
「そんなことは決していたしません」
その後は簡単な健康チェックが行われ、手錠が外された誠は点滴の針を引きちぎって帰ろうとしたが全員に押し倒され1泊延長となった
「(暇だ)」
本もなければゲーム機もない、トレーニングをしようにも監視カメラで見られているので体を動かすことも出来ず、天井もピカピカなので染みを数えることも出来ない
結局のところプレシアとアリシアの身辺を守ることは出来た。フェイトやリンディも加勢し2人を捕らえる不届き者を成敗することも出来る
「ロクゴウ君入るよ」
「入ったあとに言うな!」
入ってきた高町なのはにツッコミを入れるが彼女はお構いなしに誠が横になるベッドまで歩を進めると勢いをつけて頭を下げて謝罪の言葉を口にした。それは半年前に壊した作品に対するもで今まで言えなかったことを含め1分以上頭を下げ続ける
「お互いに知らなかったんだ!もう気にするな」
「あと嫉妬もしてた」
「嫉妬?」
「お兄ちゃんやお姉ちゃんがロクゴウ君のことを”凄い”って褒めるから」
自分の家族が誰かに盗られている気分だった。また昔みたいに1人だけになってしまう。嫌な感情が混ざり合ってしまい今日まで頭を下げることが出来なかった
「あんなにボロボロになって」
「選択肢を間違えただけだ!あの時はリンディさんと逃げてしまえばよかった」
「プレシアさんたちも助けてくれた」
今までのことを知って自分が卑しい存在だと思ってしまった彼女は自分にケジメをつける為に頭を下げた。自己満足かもしれないがこれは過去を脱却する次の1歩を踏み出す儀式なんだ!
「これから頼むよ先輩!」
その言葉を聞いたなのは慣れない呼び方で言われたので体をクネクネしながら気持ち悪い踊りを披露し、顔を赤らめるのであった
全然先のことですがストライカーズ編ではクロノは殆ど登場させません(原作アニメより出さないつもり)
あと誠にデバイスを持たせますが、会話を英語やドイツ語ではなく「日本語」で表現させてください、高校3年間で英語のテストが常に赤点付近(英語のある文系が嫌だから理系コースに行った)だった自分にとって無理です。
そろそろセクシーコスプレするプレシアさんの成分が尽きるので、次話は絶対にさせます(断言)
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