「(ロクゴウ君にプレゼント?)」
「(うん…誠から貰ってばかりいるから、母さんやアリシアのことを助けてくれたし改めて)」
4人は入院中の八神はやてに贈るプレゼントを購入する為に、バニングス家に仕える鮫島の運転する車に乗ったフェイトは念話で隣に座る彼女に問い掛けた
「(でもロクゴウって何が欲しいのかな?)」
「(聞いたことないの?)」
そもそも彼と高町なのはがまともに話すようになったのは最近である。兄や姉と交友があるので最低限のことは知っているがパーソナルに関する部分はブラックボックスである
「(欲望というか煩悩はあるけど)」
「(年上好きだよね)」
正確には年上も好きである。年下も好きではあるが幼いアリシアは守備範囲外だ!
「(プレゼントより記憶に残る思い出とかは?)」
「(思い出?)」
プレゼントなどの贈り物だと選んだ人のセンスが問われるが、忘れることが出来ないサプライズは生涯の記憶に残る。とはいえフェイトだけの力では難しいので家族と相談することになった
「あんたも隅に置けないねぇ!」
クリスマスイブ当日となり街はお祭りムードである。サンタのコスプレをした人たちが声を張り上げながら客を呼び込み、ケーキを買ったサラリーマンは子供の笑顔を想像し笑みをこぼす。
カップルがイチャつき手を握る傍で、不機嫌な顔で工事現場のオッサンが誘導灯を一定のリズムで振り回すが誰も見向きしない
「困っている人を助けただけだ」
「じゃあ私が困ったら助けてくれるの?」
「バニングスの場合、助ける前に腕力で解決するだろ」
八神との出会いを聞き出した彼女は、荷物持ちをする誠をイジりながら歩を進めていた。なお結構前に彼が口にした吸血鬼が日焼け止めを塗る企画が奇跡的に通ってしまい、来年の夏にCMが公開される予定だ
「アリサちゃん、他の患者さんもいるから静かにしてね」
「なんで私だけよ!」
彼女は周囲を見渡すがフェイト以外から冷たい視線を向けられてしまう。普段の声が大きいし注意されるのは当然だ!
面会可能時間まで3時間を切っていたので急いで書類を記入し、彼女が寝泊まりする病室まで歩を進めた。エレベーターには子供向けに描かれた手洗いのポスターや献血を呼び掛ける広告が張られ、月村は吸血鬼の絵をじっと見つめていた
「何号室?」
「これじゃない?」
月村が答える前にバニングスが表札を見つけた。病室の扉を3回叩くと中から知った声が聞こえる。入室の許可をもらうとドラクエの勇者一行のようにゾロゾロ入ると八神はやてがベッドの上で体を起こして迎えてくれた
「すずかちゃん!それに誠君も久しぶりやん……後ろのみんなは初めましてやね」
「どう?具合は」
「周りが大袈裟に騒いどるだけで大丈夫やって!」
元気そうに振舞っているが、なのは・フェイト・誠の3人にはそれが誤魔化しているように見えていた。目の下に薄い隈が浮かんでいるのは寝れてない証拠だ
耳を澄ませるが他の病室から生活音が殆どしない、時折うめき声が聞こえナースコールで呼ばれたのか看護師が走る音が耳に残る。多分ここには死の香りが漂っている
「みんなクラスメイトなんだ!」
すずかの合いの手によって3人が自己紹介すると彼女の方もお返しで自身を語ってくれた。誠は手の空いているバニングスとフェイトに持っていたモノを渡すと2人は八神にプレゼントと見舞いの花を手渡した
「ありがとう!みんな」
この世にサンタクロースがいるのなら願うのは『八神はやての回復』である。自身の持つ命の珠を彼女に捧げても良いと思うが、ポケットの中は輝くことはなかった
「ちょっとトイレに行ってくる」
「右奥の突き当りにあるから、迷わんといて」
美少女5人を部屋に残して彼は用を足に出て行った。女の子の場合は『お花摘み』だけど男の場合はなんていうのだろうか?
【隠語にしても意味がないと思います】
「だよな!堂々と行ってくるって口にした方が普通だし」
老廃物を排出し洗った手を温風で乾かしていると、隣に併設されている女子トイレから誰かが出てくる音がした。大人だと気恥ずかしい感じになるが9歳児なら問題無い、彼も同様に外に出ると
「……誠?」
「シグナムさん?」
目の前に桃髪でナイスバディな将がいた。僅かな時間だが2人の時計の針が止まったが動きだしたのは彼の方だった。他の患者には悪いが身体強化を施してフェイトたちがいる病室に向かう
シグナムがこんなところで治療を受けるはずはない、考えられるのはここに【夜天の魔導書】に関する人物が存在する。例え推理が間違ったとしても捜していた人物が近くにいる。それを知らせようと病室まで走りドアを開けると
「どうしたんや誠君?そげな血相欠いて、ちゃんとケーキは残してはるよ」
その部屋には5人の美少女と金髪の女性に
「ヴゥ~~~~ン!」
「………」
なのはを睨むチビっ子と筋骨隆々の男性がいた。あの時に自分を襲ってきた2人組…つまり八神はやてが魔導書の主であることを示す証拠になってしまった
「シグナム!どこいってたんや」
「お手洗いに…この方たちは?」
「みんなわたしの友達や」
音もなく背後に立たれ服の背中部分を握られてしまった。なのはとフェイトに視線を向けると彼女たちも同じように目を向けている。とりあえずこのことをアースラか拠点にいるプレシアに伝えようとするが
「(通じない?)」
「シャマルにかかれば造作もない、妙な動きはしないことだ!」
自分にしか聞こえない小さな声でシグナムは語りかけてきた。出入口は人型になった筋肉狼によって閉じられている。月村たちを守りながら人数で劣るこちらが逃げ出すのは不可能である
「えっと、そんなに睨まなくても」
「睨んでねぇです。こういう目つきなんです!」
殺気と敵意に満ちた視線を向けながら飢えた獣のように歯を食いしばっている。100人中100人が嘘だと理解するだろう。結局はやてに怒られた彼女は機械的に謝るが再び睨んでいる
「さぁ誠君もケーキをどうぞ」
普通なら美人から手渡されたケーキに心躍るものだがフォークを刺す気分になれなかった。シャマルと呼ばれていた彼女からテッシュを差し出されると
「今は何もしないから…それに
自分の見えないところで毒や薬を盛られているのでは?と思われていたみたいだ!他の皿を見ると空になっているので信じることにした
「今日はありがとう」
「今度は年越しそばを持って来るね」
面会が終わるギリギリの時間まで残っていたが看護師に急かされてしまい5人は外に出た。シグナムとシャマルが見送りに来てくれたが、魔法に長けた3人は浴びせられる殺意を感じとっている
「すまん!またトイレに行ってくるから、大の方!」
まず誠がグループから抜けると4人は角を曲がる
「ちょっと待って!携帯が無い」
「アドレスを交換したときに椅子に置かなかった?」
アカデミー賞主演女優賞を狙える演技をしていた高町なのはを見てフェイトは額から冷や汗を掻きながら話を合わせる
「病院の人に頼んでみるから、2人は先に行ってて!後で追いつくから」
「なのは行こうか」
結局残された2人は3人のことを怪しいと思っていたが、周囲が暗くなってきたので待つことはしなかった。問い詰めるのは学校で出来ると思っているからだ
「優しいんだな騎士様は、月村たちを人質にすることも出来たんだが」
「一般人は巻き込みたくないのでな」
病院の屋上では7人が対峙している。誠の問い掛けにシグナムが答えると冷たい風が周囲を包む
「はやてを救うんだ!もう時間が」
「待ってください!完成させちゃダメなんです。はやてちゃんが」
「うっせぇぇ!てめぇの話なんざ、聞く気なんかしねぇんだ!」
騎士甲冑を纏ったヴィータがハンマーを構えて突進しコンクリートを破壊したのがゴングとなった。3人はそれぞれデバイスを展開すると散り散りになった。誠は水入りとなったシグナムとの続きをするつもりだったが
「私に任せて、誠は結界を」
「大丈夫か?」
「母さんと特訓したから」
その言葉を信じた彼はシャマルの所へ向かおうとしたが目の前に立ちはだかったのは仮面の男だった
「仲間の弔い合戦か?お墓に供える花は買ったか?遺影の準備は大丈夫か?あいにく香典を包む袋が無くてね、御祝儀袋で構わないか?」
相手を怒らせる言葉を並べ笑いながら問い掛ける。頭の中で何度もシミュレーションを重ね必要なモノを揃えた
「貴様のせいで!」
「名前を教えてほしいね、ガリガリ君の棒に書き込んで土に刺さないといけないから」
剣ではなく拳を構える。プレシアを襲撃されたことで彼の目には漆黒の意志が宿っていた
「これからやるのはただの憂さ晴らしだ!」
魔導士のクリスマスイブの夜は長くなりそうだ!果たして最後に誰が立っているのだろうか?
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