クリスマスイブの夜に空に舞うのはサンタクロースではなかった。譲れない矜持を掲げた騎士は涙をこぼしながら得物を振るい魔導士たちに襲い掛かった。なのはとヴィータ、フェイトとシグナム
少女は声を張り上げ説得を試みるが退路の無い騎士の耳には届かない、生まれた時に心に刻まれた目的すら忘れてしまった悲しき戦士たちを救おうと2人は喉を枯らす
「(やはり距離をとっての空中戦)」
別の場所では誠が仮面の男と対峙していた。彼に『四次元マンション』を使わせない策でチマチマと体力を削りヒットアンドアウェイを繰り返すつもりだ
「進歩が無いな」
「…なんだと」
「弱点を残したまま戦う奴はいないだろ?バカにつける薬を飲むタイプだろ?お前」
感情を込めずに冷淡な言葉を口にした。そして相手が自身の太ももに目を向けていたのでケラケラ笑いながら
「高町は嫌がっていたがフェイトにも同様のモノを装備させてある。RPGで言うならアイテムの入った道具袋かな」
NARUTOのキャラが身に着けていそうなレッグポーチに手を伸ばすと、仮面の男が一気に接近し殴り掛かってくるが
「あがっぐぅぁ!」
その拳には銀色のフォークが突き刺さっていた。痛みに悶える野郎の腕に今度は下から刺して追撃のダメージを与える
「小賢しい真似を」
「そんな小賢しい攻撃を受けた愚か者が目の前にいるけどな」
仮面の男は再び距離を取って射撃魔法に威力の強弱をつけて攻撃を行い、隙を見計らって接近してくるが深く踏み込んでこない
「そんなに時間を掛けていいのか?」
「…なんだと?」
「さっき受けたところを見てみな」
きっと視線を逸らした途端に攻撃を仕掛けてくると思いスルーしたが、彼は気味が悪いようにニヤニヤと笑っている
「見ないなら別にいいけど、なんで剣じゃなくてフォークで刺したと思う?」
その言葉に動きが止まり彼は考えこんでしまう。物理的に刺すとしたら鋭利な刃物を使うはずなのに何故銀食器で?片目で誠のことを見ながら恐る恐る拳を見ると紫色に変色していた
「ナイフだと傷跡を見られて治されてしまうから」
「まさか……毒か?」
正解!と口にすると誠はポーチの中から小瓶を出して地面に落下させた
「強く殴ってくれたおかげで深く差し込むことが出来たよ」
「貴様それでも…」
「魔導士か?悪役の言いそうな台詞だな、どうする早くしないと全身に毒が巡るよ」
人差し指と中指を立てて"掛かってこい"と挑発するが、誘いに乗ってこない
「ブラフやハッタリだ!そうやって焦らせて平静を失わせる。イカサマペテン師の常套手段だ」
「どうぞ好きなように解釈してもいいけど、じゃあ解毒薬も要らないね」
黒いビー玉のような丸薬が入った瓶もさっきのモノと同じように落としていく
「毒を我慢する頑張り屋さんにご褒美として教えてあげよう。制約さえ守れば俺の『四次元マンション』はマスターキーを譲渡した人物が使用出来る……そしてマスターキーは2本存在する」
「まさか!」
「師匠今だ!」
攻撃が背後から来ると予想した仮面の男は振り返って周囲を見渡すがどこにもプレシアは存在しない、その瞬間に悟った…これは
「ばーか」
一気に距離を詰めた誠がリバーブローと頭に回し蹴りを叩き込んだが威力は高くなかった。男は追撃のスマッシュを躱しキックで距離を開けようとしたが
「イっぐ!」
足の裏に包丁が深々と刺さり靴の中が自身の血液で濡れていく、あの力は自分たちで解析することが出来なかった未知の能力だ!判明しているのは発動するのに地面や壁が必要としか分からなかった。嘘や作り話だとしても脳が僅かな時間だけ真実だと思い込んでしまう。嘘の中に真実を混ぜ、本心を霧の中に隠す
そもそもこいつはおかしい、デバイス無しで騎士相手に互角の戦いを繰り広げ執務官を無力化させた。砂漠での戦闘も見ていたが9歳の子供が歴戦の猛者に追随するなんて
「(おかしい何かが抜けているような)」
仮面の男は何度も見返した映像や弟子から聞いた情報を頭の中で再生させると1つの答えに行きついた
「(バンジーガムという技を使っていない、
粘着力と弾力に優れヴィータのデバイスを奪い、シグナムとの戦闘で大岩と繋いでハンマーにしてシャマルを縛った十八番の技で窮地を救ってきた技を使用していない
「(違う!もう使っているんだ!向こうだって調べられていることを熟知している。“いつ使ってくるんだ?”と考えさせる魂胆で迷わせ、実は既に発動している)」
騙し討ちを受けたときに付着させたと思い込んだ男は飛来する攻撃を想像する
「(奴は何を落とした?いやポーチの中から飛び出してくるのか?物体を小さくする能力だと闇夜に乗じて何でも仕掛けることが出来る)」
答えが見つからず防御の構えを解くことが出来ない、視線の先にいる誠は射撃魔法を散弾銃のように発射しながら小さいダメージを与えていく
「(攻撃を正面に集中しているってことは)」
視線を下に向けると直径2メートルの球体が猛スピードで迫ってくる。男は仮面の奥でニヤリと笑い防御の姿勢を解いた。瓶の中にあったのは薬ではなく鉄球だった。所詮は子供の浅知恵だ!こんな奴に負けたクロノを叱ってやらないと
今後のことを想像しながらノールックで迫ってくる球体に射撃魔法を放った。しかしそれは鉄球ではなく風船が割れたような音がした
「えっ?」
気の抜けた声と共に破壊した球体の中から飛び出した液体によって体全体が濡らされる。どこかで嗅いだことのあるような甘い匂い…この世界でよく嗅いだはずなのに名前が出てこない
思考が止まってしまい少しだけ金縛りのような状態になると、再び球体が迫り対処が出来ずに受けてしまい今度は赤褐色の粉末まみれになる。自身に纏わりついた液体が糊の役割になってしまい不快感がマックスである
「さぁ化学の実験だ!全身がガソリンまみれの人体と酸化鉄にアルミニウムを混ぜた粉末に火を近づけたらどうなる?」
「分かんないよお兄さん」
左手には子供が遊ぶパペット人形が装着されて彼が動かしながら裏声で演じている
「じゃあやってみようか」
「うん」
かつてメジャーリーグを席巻した竜巻を彷彿とさせる投法で手に持った火炎瓶を投げつけると、当たる直前に指で銃のような構えをし、射撃魔法を放って瓶を破壊した
「GYAAAAAAAAAAがぁああああああああぐるるう!!!!!!あづい!アヅううううううう!みずみzみずみず」
爆発するように真っ赤に燃え上がり周囲に大きな火柱が形成された。ガソリンを浴びているので良く燃える
「すごいね火山の噴火みたい」
「これはねテルミット反応なんだ!酸化鉄にアルミニウムを混ぜて火をつけると最大約3000度まで上昇するんだよ」
「これでまた1つ賢くなったね!」
最初に落とした小瓶の中にはテルミット反応を作り出す粉末を球体の中に入れて『縮小』させた。落とした時には既に自身の手とバンジーガムで繋がっていたのだ!同様に解毒剤の丸薬擬きにはガソリンを入れて小さくさせた
「言っただろ憂さ晴らしだって」
パペットを外して燃え盛る仮面の男に投げつけるとフェルト生地の人形は塵になっていく
「師匠たちを傷つけた報いだよ!どうやって居場所を突き止めたか知らないけど相手が悪かったね」
「あ………う…あ」
「悪いけどくたばっていてくれる?気持ち悪いオブジェをマンションの中に入れたくない」
立ち去ろうとするが足首を掴まれてしまう。あの熱に耐えるとは恐ろしい
「何の用?」
「きさ……まは……なに……も…のなん」
「さぁ誰だろう?少なくともアンタの敵なのは確定してるから」
その手を足で踏みつけると誠は飛び立ちフェイトのところに向かう。まずは1人撃破
【マスター名演技でしたよ】
「よしてくれ鳴嶋メルトの『今日あま』より酷い演技だ」
【そうでしょうか?】
「慣れないことは疲れるよ!早く終わらせてサンタコスの師匠とトナカイ姿のアリシアとクリスマスを迎えたい!」
病院の屋上に近づくと巨大な雷光が下に向かって放たれた。どうやら特訓の成果が出たのかもしれない
誠君の勝利となりました。テルミット反応じゃなくてガソリンを掛けてライター+殺虫剤で燃やす案もありました
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