少しだけ時計の針を戻そう。誠が仮面の男を翻弄し追い詰めている時のことだった。病院の屋上でシグナムとフェイトは互いの得物を構えたまま動こうとしない
「(カウンター狙い)」
共に近接戦を得意としている両者だからこそ分かってしまう。先手が必勝ではなく悪手であることに、フェイトは天才だが歴戦の猛者相手だと経験に劣る
達人になれば僅かな空気の揺れや視線の動かし方、皮膚に伝わる筋肉の動きだけで先を見通してしまう。一瞬の加速はフェイトの方に分があっても攻撃が見切られてしまう
「(誠ならどうする?)」
シグナムと互角に渡りあった彼と模擬戦をしたが、スピードで翻弄しても動じずに無駄を省いた動きによって足を止められた。試しに彼がやっているトレーニングをなのはとやってみたが豆腐がぐちゃぐちゃに潰れ、針の上は危険だったので鋭利な足つぼマットの上で縄跳びをしたら2回でギブアップした
「互いに待っていては埒が明かないな!」
剣を構える彼女は1枚のコインを上に弾き飛ばした!時間を掛けている暇なんて無い、互いの
空気抵抗を受け回転しながら落ちてくる。しかし2人はそれを目で追わずに耳を研ぎ澄ます。
「(いくよバルディッシュ)」
【Yes, sir】
頼れる相棒に語り掛け叱咤激励してくれる。誰よりも疾くそして正確に相手を仕留める。培ってきたものを信じ積み重ねきた努力を出し切る。やや前傾姿勢になって軸足に体重をかけていく
示し合わせたように互いのデバイスから空になった薬莢が飛び出し地に落ちる。コインが地面に触れそうなった刹那
「きゃ!」
「なの―――」
空中で戦う大切な友達がヴィータの攻撃を受けて壁面に激突してしまい、コインに対する意識が霧散してしまい音に対する反応が遅れてしまう
「ハァアアアアアァァァァ!」
鬼気迫る表情で向かってくるシグナムに対応しようとするが勝負は決していた。その顔は真剣勝負を蔑ろにした自分に対する怒りなのかもしれない、魔剣の一撃にバルディッシュは持ち手の部分が砕け散ってしまいトマホークのようになっている
「失望したぞ!」
鞘に仕舞って背中を見せる。もはや目線を合わせるような相手だと思っていないようだ
「それが貴様の覚悟か?そんな甘いモノで止められると思ったのか」
「…ちがっ」
呼吸をするのが苦しい骨は折れていないが全身が痛い、シグナムに向けて言葉を紡ごうとしても全てが言い訳になってしまう。結局のところ自分が甘かっただけだ
「誠なら気にしなかったはずだ!いや…こんな勝負ではなく私のことを止めようと全力を賭してくる。しかし貴様は違う!そんな生半可な心で私の前に立つな!」
「…………」
どこかに隙があったのかもしれない、心の中に“みんなで頑張ればなんとかなる”って思っていたのかもしれない、頑張ったから報われる。努力は裏切らない、明日が当たり前のようにやって来る。それは願望に過ぎない
願うのではなく掴み取る。シグナムたちは八神はやての為に手を伸ばしたのだ!なのに自分は…勝負を託してくれた彼に泥を塗ってしまった
「ヴィータの方は拮抗してるが時間の問題だ!誠は…向こうか」
「行かせない!」
声を振り絞って震える足を叩き喝を入れる。誓ったんだ!
「半端者に何が出来る?」
「もう……依存しないってバルディッシュと一緒に」
なのはに教えてもらった指切り、デバイスに指なんてないけど約束したんだ!噓つきになんてなりたくない、頬を伝う涙を拭いて奥歯を強く噛みしめる
【Blitz Rush】
半壊したバルディッシュを治さずに片手斧のように持って超高速でシグナムに接近する。踏み込む度に泣きたいぐらいの激痛に襲われるが、気力で抑え込む
「やぶれかぶれか」
剣を抜かずに徒手空拳でフェイトの攻撃を捌いていく、わんぱくな子供をあやす親のように力なんて込めていない
「もっと疾く、もっと…もっと」
「遅いな!」
シグナムが頭部にハイキックを仕掛けるが彼女はマントの裾を踏んでしまい体勢が崩れる。目標がいきなり消えたシグナムは独楽のように回転してしまいフェイトの低い体当たりを受けて押し倒されてしまう
「(…マントが)」
足で退けられた彼女は自分を攻撃から守ってくれたマントを見つめていた。当たり前のように身につけていたがこれは自身の強みを消していたのでは?
「なんのつもりだ?」
ブーツとタイツを脱いで素足になる。両手の手袋も外した!腰のベルトを千切り投げ捨てる。そして短距離走のクラウチングスタートの姿勢になると呼応するように相棒がカウントダウンを始める
【3.2.1 Start Up】
雷光のように駆け出し纏っていたマントが置き去りになる。一気に加速しバルディッシュを振り下ろすとシグナムは鞘でガードするが相撲の『電車道』のように壁まで押し切られてしまう
「この…離れろ!」
背中に肘打ちを入れようとするが寸前で躱されてしまい今度は脇腹にタックルをくらいあばら骨にヒビが入る。苦悶に満ちた表情でフェイトを見ると両手両足を地面につけて獣のように睨みつけている
「もっと…もっともっともっと…もっと」
再び突っ込んでくる彼女に剣を抜いたシグナムの頭は混乱していた。この爆発的な力の源が分からない、もう満身創痍のはずなのに何で立ち向かってくる?
【Schlange Beissen!】
連結刃を飛ばしてフェイトの周囲を包むように展開し攻撃を加えようとした瞬間に彼女は消えてしまった。近辺を見渡してもどこにもいない
「散在する獣の骨!尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪」
「上か!」
上空を見上げた彼女はフェイトの右手に集まる膨大な魔力を肌で感じとっていた。詠唱魔法は読み上げている間に攻撃をされるリスクはあるが、強力な一撃を放つことが出来る
「動けば風、止まれば空」
だが惜しかった。見つかってしまえば魔法が放たれる前にシグナムの攻撃が先に届く、伸びていた連結刃を戻そうとしたら刃が途中で繋がっていなかった
「これは…奴のリボン?」
再び見上げると纏めていた髪が解かれ落下しながら金色の髪がなびいている。フェイトは連結刃から抜け出すときに刃と刃の間に自身のリボンを結び、シグナムが剣を集結させる邪魔をしていた。別に確信があった訳ではなかった
そう思って行動しただけだ!
「槍打つ音色が虚城に満ちる!」
「くそっ!」
舌打ちした彼女はリボンを外してフェイトに攻撃を仕掛けようとするが、今度は彼女の方が遅れてしまった
「破道の六十三『雷吼炮!』」
上空から雷を帯びた光弾がシグナムに向けて放たれた。着弾と共に大きな爆音を奏で周囲は煙で包まれる。誰もがフェイトの勝ちだと思っていたが
「惜しかったな」
満身創痍の状態で放ったことで照準が少しだけずれてしまい僅かなダメージしか与えられなかった。そして力を使い果たしたのかフェイトが
「先ほどの言葉は取り消そう。貴様は半端者ではない強き…」
落ちてくる彼女を受け止めようとするシグナムだったが、フェイトの目は死んでいなかった。カートリッジを手動で取り外すと残った魔力を右手に籠めて薬莢の尻部分を強く叩いた!
5点同時バースト…その技の名前は!
「ゼロ距離射程閃術:ライジングインパクト!」
至近距離で魔力の込められた弾薬を5発同時に食らったシグナムは背中から倒れ込み、フェイトも受け身を取ることが出来ずに倒れてしまった
「こんなところでは……」
「止まった方がいいな」
「……誠」
仮面の男との戦闘を終えた彼が2人のところに近づいてきた。怪我らしい怪我はなくアレを難なく撃破したんだと理解した
「強かっただろアイツは」
「名前を聞きそびれてしまったな…誠」
「全部が終わったら本人から聞けばいい……さて終わりにするぞ!」
まだ戦闘中である残りの1組のところへ向かおうとした時だった。まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚で息苦しくなる
違和感の正体を探る彼だが何も見つからない、しかし2人の目の前に本来そこに存在しない『闇の書』が宙に浮いて、その隣には
「主!」
八神はやてが佇んでいた。しかし意識が無いのか目を閉じて動こうとしない、何かを察したシグナムはボロボロになった体で鎖が落ちた書に攻撃を仕掛けようとするが途端に苦しみだした
「シグナムどうした?」
「ヴィータちゃん」
なのはと戦っていたゴスロリ娘も胸を抑えてもがき苦しむ、2人は次第に姿が粒子となって消えていく
「誠…主のことを頼む、救ってく…」
「シグナム!」
彼女は全てを言い切る前に跡形もなく消えてしまい、そして大きな爆音と閃光に包まれた!『四次元マンション』を発動する暇がなかった彼はフェイトを抱き上げると呆けている彼女を引っ張り爆心地からマッハで逃げた
「大丈夫か?」
「ロクゴウ君…フェイトちゃんは?」
「魔力の使い過ぎと疲労だ!回復を頼む、俺より上手いだろ?」
彼女は頷いて近くの屋上に降りると治療を開始する。そして爆心地から段々と煙が晴れていくのを誠は見つめていた
【マズイですね】
「ラスボス登場だな」
中から出て来たのは『黒い天使』だった。見た目はクール系のお姉さんでバストも魅力的である。銀色の髪は神秘的で見ている人の心をざわつかせる
「また…終わってしまった」
黒い翼を羽ばたかせ、ギロリとこちらを見つめるのであった
フェイトちゃんが使ったのはBLEACHの空鶴さんが使った雷吼炮でした。これをいつか出そうと温めていました。もちろん母親にも詠唱をさせますよ(もう少し先ですが)
ソニックフォームですが、超サイヤ人だ孫悟空の疑似スーパーサイヤ人のように作中内のは疑似ソニックフォームだと思ってください
やっぱり詠唱ってカッコイイですよね!この先も出す予定です
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます