(最初はローラーを車輪じゃなくて球体にして横移動を素早く動けるようにするつもりでした)
「兄さん!」
彼女が呼びかけるとティーダ・ランスターは振り返り手を伸ばして妹の手を取って握った。兄の手は温かく頑張ってきた証である豆が潰れていたがティアナはこの手が好きだった。執務官になる為に努力を積み重ねてきたんだ!きっと報われる……はずだった
『13歳の子供に負けた一等空尉』
『首都航空隊の恥』
『給料だけは1人前』
管理外世界から入局した少年に模擬戦で負けてしまってから突如として歯車が狂い出した。週刊誌は彼と戦った局員たちをネタにして記事を飛ばす。1対1なら特に問題無かったが7対1で圧倒されれば記者たちの飯の種になってしまう
向こうはゼスト・グランガイツの後釜として地上部隊のエースとして頭角を現す。活躍が報じられる度に兄の顔が険しくなり自身の不甲斐なさに涙をこぼした。自分の手ではなくデバイスを握る時間が長くなり落ちてしまった評価を取り戻そうとしたが
「兄さ………ん」
逃走した違法魔導師を追跡する任務にて命令を無視する形で深追いした結果、犯人を取り逃がしティーダ・ランスターは殉職してしまった。病院で最期の対面をしたとき握った手はとても冷たく傷だらけでボロボロだった
何度も見た悪夢から目が覚めた彼女はベッドから起き上がり朝日を浴びる。ルームメイトは夢の中で巨大なアイスを頬張っているのだろうか枕を涎で汚していた。兄の運命を変えた人物が近くにいる
「(分かっている……だけど)」
心の中で自身を納得させると頬を叩いて気合いを入れると自主練の為に着替えるのであった
「今日の予定ですが」
「大丈夫やゲンヤさんはこっちの味方やし、面倒なことはおきひんはずや」
リインフォースは八神はやての秘書として身の回りのことをサポートしている。最初の頃は慣れない仕事に戸惑っていたが周囲の助けもあり彼女の右腕として頑張っている。移動の為に駐車場まで向かおうとすると女性局員の声が聞こえてくる
「監視官に地上のエースが来るなんて凄いね」
「しかも六合塚三佐って八神隊長たちと同じ世界出身だって」
「みんな同い年でしょ?奇跡のバーゲンセールが起きてない?」
どうやら彼女たちは自身の主や彼について話しているようだ
「そういえば何で六合塚三佐の方が階級が下なの?確か隊長たちより3年早く管理局に入ったんだよね?」
「別の部署にいた先輩から聞いたんだけど、八神隊長って伝説の三提督のお気に入りみたいで依怙贔屓されてるって」
「やっぱり~?そうだよね陸の管轄に海の部隊を作るのって、背景が強くないと出来ないし」
その言葉に2人は立ち止まる。このことに関しては数年前から管理局内でゴシップネタと化していた。彼の活躍や管理局に対しての貢献を評価すれば同年代の誰よりも上の階級であるべきだ!
しかし彼の階級が八神より上になったことは1度もない、そのことに対して周囲が面白おかしく噂に尾ヒレをつけてしまい『八神はやては三提督のお気に入り』という話が出来上がってしまった。まして今回の六課設立は噂を立証する存在となってしまった
「主…」
「ええんや、あの3人に良くしてもらってんのは事実や」
なお誠は階級に関して拘りはなく働いていたらいつの間にか偉くなっていた感覚である。給料が増えるのは喜ばしいことだが、それよりも嬉しいのは
「あの時は父を助けてくれてありがとうございました!」
「…あの時って?ごめん昔から色んな災害現場に出てるから」
「そうでしたよね…すいません!5年前に起きたミッド北部の落盤事故で働いていた父を助けてもらいました」
現場への緊急出動は誰よりも多く災害現場に疲れた顔の六合塚アリと呼ばれていた。今回は彼が助けた親族が機動六課に在籍していたので礼の言葉を述べられている
「いつか会えたら言おうと思ってまして」
「お父さんは元気なの?」
「はい!今日も現場入りして働いてます」
誠が所属していた部署には小さい子供からの感謝状が届き『四次元マンション』の中へ大事に仕舞っている。もちろんナカジマ姉妹から貰ったメダルは彼が初めて貰った勲章だから仕事デスクの見える位置に置いてある
「そういえば監視官と仲よさげに話していたけど」
「ティアに言ってなかった?6年前ぐらいに母さんのいた部隊が壊滅したときに誠さんが助けてくれたんだ」
朝の訓練が終わり4人が同じテーブルで朝食を食べている。皿に盛られている量が大食いチャレンジメニューと同等という点を除けばありきたりな状況である…これってお代わりした後なの?
「空港火災の時もギン姉と一緒に助けてもらって、ナカジマ家はお世話になりっぱなしで」
「長い付き合いって訳ね。ルーテシアはスバルたちと暮らしていたけどエリオは?」
質問を投げかけられた彼は施設での出来事を伝えると、3人には家で帰りを待ってくれる家族がいることに少しだけ嫉妬しまうティアナであった
「地上の人材育成だっけ?母さんが講師でギン姉が研修で行ったけど」
「どんなことをやってた?」
誠も戦技指導者として教鞭を振っていた現場に彼女は興味津々である。難関大学並みに高い倍率をクリアしないと入ることができない、それだけ応募が殺到しているのである
「確か…鈴を持った誠さんが訓練用のフィールドに立って″今から殺す気で襲ってこい!俺から鈴を奪えたら行きたい部署に推薦してやる″って」
「結果は聞くまでもないわね」
「うん…威圧感というか殺気を受けただけで半分が倒れたって」
なお未だに成功した人はいなかった
「スバルさんって誠さんから指導を受けたことあるんですか?」
「あるよ!私の砲撃魔法…って言っても射程が短くて、誠さんから教えてもらったんだ」
「私も寝ているスバルを起こす″死者の目覚め″を教えてもらった」
「ルーテシアそれ今度私にも教えて!」
「ちょっとティア~」
4人の仲も深まり和気あいあいとした雰囲気で良好である。訓練ではチームとしてぎこちないが周囲の人たちが上手く道を作っていけば種は開花するはずだが、水や肥料を与える側が素人では種も腐ってしまう
名選手名監督にあらず、いくら武勇に優れていても教える側になるとポンコツになるのは歴史が証明している。自身の成功体験をそのまま押し付けてしまいチームを瓦解させた結果、二度と現場に呼ばれなくなった近鉄の投手がいた。かと言って教えすぎるのも成長を阻害しNGである。指導者とは難しい職業なのだ!
『機動六課レポート』
新人フォワードたちは贈呈されたデバイスを受け取った直後に初任務となった。実戦のデータを組み込んであるとはいえ慣らし運転無しでの使用はどうかと思う。また任務においても隊長たちは生身で落下しながらバリアジャケットを纏っていたが指導者としてあるまじき行為である
突発的な状況なら落下中でもやむを得ないが、ヘリの中で安全にデバイスを展開できる余裕があるのにワザワザ悪しき見本を晒し新人たちも真似してしまった。列車の中にあるレリックを狙ってガジェットたちが攻撃を仕掛けている場面で行ってはならない、家族から預かった隊員たちを五体満足で帰すのが我々の役目である
また列車内に4人を突入させたことにも疑問が浮かぶ彼女達は今回が初の実戦である。スターズ分隊かライトニング分隊の副隊長を『子守役』として起用するべきであった。高町なのは氏に理由を尋ねると
「みんなのことを信じているから」
それは理解に苦しむ内容だった。若輩者たちの身に不測の事態が起きたらどうするのか?彼女の現場責任者としての自覚の欠如は一等空尉として相応しいのか怪しい
1つ調べていただきたいことですが、高町なのは氏の教導隊としての実績について明確な情報を求めます。教え子たちの任務成功率や損傷の有無に離職率の割合を調べていただきたい
『エリオ・モンディアル』
魔力変換資質「電気」を保有しスバル・ナカジマ同様に機動力に長けている。10歳の身でありながら状況判断能力に優れメンバー間のバランサーとして険悪にならないように立ち振る舞う。やや人の顔色を気にするのは過去の出来事によるものと断定する
あくまで個人的な意見だが彼には様々な経験を積ませて成長を飛躍させたいと思う。管理局の今後を担う可能性の塊であると私は思う
とりあえず列車での初任務は終わってます。
スバルの砲撃魔法をどこで披露するか迷います
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