「誠はなのはより才能はある!」
「恭ちゃんの言う通りね、私の弟子にしていい?」
なんで私じゃなくてロクゴウ君のことを褒めるの?私だって頑張っているのに…どうして?
「誠のおかげで母さんとアリシアが助かった」
「リインフォースを救ってくれた恩人や」
彼は傷つきボロボロになりながら自分には出来ないことをやってのけてしまった。健康診断を受けてくれたおかげで未曾有の危機からも助けてくれた
同い年の中で早く管理局入りし、最前線の現場に立ち続けて結果を残し周囲の人たちが彼のことを認めていった。クラスメイトだった彼が活躍する姿を喜んだが心にモヤモヤが燻ぶりはじめた
「(私ってエースと呼ばれることしたっけ?)」
管理局に入っていつの間にかエースオブエースと呼ばれるようになったが、誠のような活躍をした記憶が思い当たらない
でも彼と同じように異名で呼ばれることに歓喜してしまい受け入れてしまった。教導官として指導していたが突きつけられた数字を受け入れたくなかった
「私っていったい……何者?」
目が覚めると自分が医務室にいることに気付いた。背中を向けていたシャマルが物音に反応して体ごと顔をこちらに向けてくる
「なのはちゃん気分はどう?」
「…シャマル先生」
彼女はなのはのことを調べて問題が無いことを確認した。時計を見ると模擬戦から5時間以上が経過し周囲は暗くなっている
「負けたときのこと覚えてる?」
「……はい」
まさか自分の放った砲撃魔法の上を滑って攻撃してくるとは思いも寄らなかった。しかも戦闘中は得意としている近接攻撃を封印していたのだ
目の前の姿を見ずに、思い込んでいた虚像の誠を想像してしまい敗れてしまった。教える立場の人間としてあるまじき行為である
「体の方は大丈夫だから部屋に戻っても問題無いわ」
「ありがとうございます」
久しぶりに完膚なきまでに叩きのめされた。最後に大惨敗を喫した記憶が思い出せないほど記憶の奥底に沈んでいる。もしかしたら嫌なことを思い出したくないのかもしれない
「最後のアレだが絶対に真似をするな!」
「ヴィータ副隊長そもそも真似することが出来ません、砲撃魔法の上を滑る発想なんてまず思いつきません!」
「そこ!アイツ相手に常識なんて通用しないことを理解しろ!」
隊舎の大広間ではヴィータが先生役になって先程の戦闘について隊員たちと意見交換をしている。シャーリーから予備の眼鏡を借りてチビっ子女教師風の出で立ちだが、遠くから見れば大人の真似をする子供に見えてしまう
「副隊長は監視官と対峙したらどんな戦法で攻めますか?」
「そりゃもちろん突撃してアイゼンを叩き…と言いたいが確実に墜とされるな、そもそもアイツが射撃・砲撃魔法を主体にすることが珍しい」
「敢えてなのはさんの土俵で戦ったという訳ですか」
何度も映像を見直すティアナだが彼のやっていることを模倣することが出来ないと思う。スフィアを用いた攻撃を2つぐらいまでなら展開できるが、8つを同時に動かして攻撃を使い分けるのは不可能である
「誠さんって昔から常識外れで奇想天外な戦い方をしていたんですか?」
「スバルお前金属バットであたしの鉄球を弾き返すこと出来るか?」
「…はい?」
素っ頓狂な声をあげる彼女を見てヴィータは、昔の映像を呼び起こして大画面のモニターに映し出した。それは初対面で誠のことを襲った時のモノである
「詳細は省くが9歳のガキに、あたしとザフィーラは翻弄された」
「あの~どうしてバリアジャケットを着ていないのですか?これって生身ですよね」
エリオの質問に全員が同じことを思っていた。なにせモニターに映る子供の頃の誠は普段着のままでヴィータと鍔迫り合いをしている
「この時はまだデバイスを持っていなかった。素の状態であたしたちは敗走したんだ」
「誠さんって人間ですよね?」
「…………………………」
「副隊長?」
その質問にヴィータは黙ってしまった。『旅の鏡』を発動させたシャマルに対して自分で胸の中に手を突っ込んで彼女の胸を握り締めて騎士甲冑をビリビリに破ったり、最終決戦もプロレス技でリインフォースを無力化させた
「(あれを人間と呼んでいいのか?)」
非常識な戦い方に何度も驚かされた。シグナムとガチバトルとすると思いきや仮面の男に変装していた使い魔を徹底的に追い詰めて再起不能にもさせ未だに病院のベッドをお友達にさせている
地球で暮らしていた時にテレビで放送された映画に登場する。裸で未来からやってきた戦闘マシーンではないかと思っていた時期もあった
「…ヴィータちゃん」
「なのは、もう大丈夫なのか?」
答えを探していると医務室で寝ていた彼女が戻ってきて新人たちが駆け寄った。海鳴市での処分を受けてから緊張続きというのもあって心も疲れていたのだと思う
「ライトニングの2人はごめんね今日の模擬戦」
「いえ…そんな」
「スバル、ティアナ…あのコンビネーション良かったよ、勉強するときは私も混ぜてくれる」
「なのはさん?」
普段と少し違う雰囲気に周囲の面々は戸惑ってしまう。それは長年連れ添っているヴィータがよく知っている。いつもなら教えていないことを実践した2人を咎めるはずなのに
「ロクゴウ君はここじゃないんだね」
「捜してきましょうか?」
彼女は首を横に振って別の場所に向かった
「なのはさんって監視官のことを『ロクゴウ』って呼びますけど」
「アイツの名前って『六合塚』って書くから『ロクゴウ』って呼んでいるんだ!もう訂正するのも諦めたみたいだ」
眠そうなルーテシアがエリオの太ももに頭を乗せていたので検討会は解散となった。スターズの2人も今日は自主練はせずに休養に専念することにした
「ここにいたんだね」
「大丈夫なのか?」
屋外にいた誠は『四次元マンション』の中から3人を出して夕食を作っていた。焼き台の上には捌かれた巨大なウツボに蒲焼きのタレを塗ってジャガイモやタマネギに油を染みこませている。近くではシュテルが飯盒で米を炊きレヴィは箸を持って食べる準備をしてた
「いや…なんでこんなことを」
「レヴィがYouTubeを見て食べたいって言ったから、それに俺に賭けていた連中からも懐が潤う額を貰ったし」
海鳴市でバーベキューを味わうことが出来なかった罪滅ぼしではないが、彼女たちの要望に応えるのも大家の役目だと思ってる(単純にレヴィが五月蠅かったのもあるが)
「寝てたから食ってないだろ?」
「うん……いいの?」
5人でテーブルを囲み空腹の胃袋に久々のカロリーを投入した。レヴィはご飯の上にウツボを乗せてマヨネーズと味付け海苔をふりかけて特製丼を作って頬にご飯粒を付けていた
お腹が満たされると3人は焼き台の残り火でマシュマロを焼き、同い年の2人はコーヒーを持って少し離れたところで座り星空を眺めていた
「私はエースオブエースなんかじゃなかった」
「管理局で祭り上げられたアイドルってところだな」
「私は凄いんだ!って思っていたけど…思い込んでいただけで何も凄くない」
「高町、お前は9歳の頃から何も変わっていない」
いつもと違うなのはだが戸惑うことなく、誠は淡々と口を動かしながら言いたいことを吐き出していった
「体は成長したが頭と心はガキのまま、嫌なことから逃げて挫折することもなかった」
「だからお兄ちゃんは私に継がせなかった」
「俺も逃げているに近いな、恭也さんとは顔を合わせてないし」
違うと言いたかった。道場で向き合う2人を見ていた彼女から見て彼の存在は強く輝いていた。だから自分と比べてしまった
「知らなかった…私の指導を受けた人たちの未来のことを」
「学校の先生だって卒業した生徒のことを全員覚えている訳じゃない、俺は気になったから調査部に頼んで調べてもらった」
「教えてくれなかったら私はずっと」
「不幸を生み続ける存在になっていたな!それでこの先も続けるつもりか?」
少しだけ威圧した魔力を放ちながら彼女のことを見つめるが、なのはは首を横に振った
「もう逃げるのをやめる。少し教導の仕事を辞めて自分の目で見て色々なことを経験して戻ったら卵たちに伝えていきたい」
「師匠の言っていたことが当たりそうだ」
「プレシアさんは何て言ってたの?」
「秘密だ!」
目の前の女の子に"婚期が遅れる・生涯独身でカップラーメンとコンビニ弁当生活・休みの日はどこにも出かけずに学生時代のジャージでゴロゴロ"なんて言ったら至近距離でスターライトブレイカーだろう。やられたとしてもダメージは無いが痛いのだ
「六課解散まで気持ちが続くなら、クソ厳しいところを紹介してやる」
「ありがとう」
「こっちも喫緊で頼み事をする可能性がある。そっちから口利きをしてもらう」
「分かった!お互いさまだね」
マシュマロを焼き過ぎて口の中を火傷したレヴィたちが呼んでいるので2人は腰をあげた
「スバルたちなんだけど、手伝ってくれる?」
「やだ!俺だって忙しい、必要なものは揃えてやるから一緒に成長してこい」
「え~!ここはOKを出すのが男の子でしょ」
自身の過ちを振り返り新たな道を歩む覚悟を決めた彼女を見て、心の中で存在を主張していたモヤモヤが少しだけ晴れた誠であった
『高町なのは一等空尉について』
自己の過ちを振り返り変わろうとする気概を評価する。もし彼女の気持ちが続くのであればサミー・リー隊長の率いる特殊部隊への転属を推薦する。逃げ出すのが不可能な環境であり、あそこなら魔導士ではなく人として成長を促してくれると思う
また今回のことを踏まえて教える側にも相応な経験を積ませることが必要であると実感しました。現場では教科書通りのことは起きませんので今後の人事について考えていただきたいと願います
ティアナの誤射を回避したら、なのはがティアナになっていました。とりあえず成長フラグは立ちました。あとは本人のやる気次第です
感想ありがとうございます(おまちしてます)
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