金髪で瞳は右目が緑、左目が赤の女の子は涙を流しながら全速力で逃げていた。しかし子供のスピードでは年上のお姉さんたちに敵うはずもなく、あっさりと捕まってしまい抱きかかえられてしまった。なおも暴れる幼女だがギンガの腕力から脱出することは出来ない
「怖くないから、みんなと一緒に食べよう」
「やだ~お魚怖い!」
視線の先では誠とディアーチェが複数の焚き火台で火加減を調整し、シュテルとフェイトが米を炊いていた。残りの面々も付け合わせになる食材の調理や飲み物を用意している
子供だがら食べ物に好き嫌いがあるのは当然だ!埼玉県春日部市に住む永遠の5歳児もピーマンが苦手と言いながら30年以上経過している。だけど嫌いなモノを克服しないと大きくなれない、炊きあがった白米が盛り付けられ焚き火台の上に置かれた一斗缶からアルミホイルに包まれた物体が姿を現す
「こっちも完成!」
ハサミでアルミホイルを破ると巨大なマグロの頭部が現れ焼け爛れた目は幼女のことを見つめていた。ヴィヴィオはそれを見て再び大号泣しながら逃走するのであった
それは数日前のことだった。ギンガの看病により翌日には回復し監視官の業務に復帰した。急遽の代打で対応してもらった人物からの引継ぎ資料に目を通しながら自身の対面にいる同級生と彼女から離れようしない幼女を見て、握っていた鉛筆を握力でへし折った
「ダメかな?」
「ここは託児所じゃないんだが」
聖王教会から帰ってきた高町は目の前にいる女の子を抱いていた。最初は近くで迷子になっていた子供を助けたんだと思っていたが2日前に保護した幼女ということが分かり、遂に誘拐犯になってしまった彼女を見て『1』『1』『0』とコールボタンを押そうとしたが阻止されてしまった
「どうするつもりなんだ」
「事件の重要人物だから六課で面倒を見ることって出来ない?」
こいつ見切り発車で連れてきやがった。社会人に必要な『報・連・相』すらしてこなかった。よくよく考えたら最終学歴が中卒だもん成長して身体つきは大人でも脳ミソは子供だ。その前に教会もなんでOKを出したのか分からない
『(なのはさんから離れようとしませんね)』
「(動物が初めて見たヤツを親と思い込むパターンか?)」
『(それか母性を感じたか)』
「(大人モードで外に出てみてくれ反応を確かめる)」
シュテルをマンションの外に出すと幼女はビックリした表情となり高町と彼女の顔を見比べている。雰囲気は違うが顔はそっくりだから反応は正しい
「初めまして私はシュテル…名前を教えてくれる?」
「……ヴィヴィオ」
「可愛い名前だね、ねぇ甘いものは好きかな?」
その問い掛けにコクリと頷いたヴィヴィオを見てシュテルはポケットの中からサイコロキャラメルを取り出して口の中に入れてあげた。どうやら彼女にも心を開いたのか高町の服を握っていた手が離れている
「(警備の面で考えれば教会よりマシだが前代未聞だろ!)」
「ロクゴウ君?」
「上の方には話をつけてやる。仮に処分が下るとしても八神の責任問題になるだけだ!今回の報告書の提出と必要な手続きを今日中に終わらせろ、出来なかったら分かるよな?」
自分自身でも甘い判断をしている自覚はある。しかし今から教会に戻したところで事件を解決する情報を得られるとは思えない、それならヴィヴィオを働き方改革の実証実験として扱させてもらおうと考える
出産・育児からの復帰やシングルマザーに離婚後子供を引き取った男性局員は一定数存在する。しかし実家からの援助を受けれなかったり日中の面倒を見てくれる施設に空きが無いことが問題視されている。だから局内で託児所を併設できないか?という案が数年前から浮上していた
現役を退いた魔導士に資格取得・研修をさせて新たな道へ進ませる。子供がいても地上が働きやすい環境であることをアピールすることができる。監視官の彼が関わる問題ではないが六課は実験部隊なら試してみるのもアリだと考えた
「(少し探りを入れてみるか)」
機動六課の設立には聖王教会が関わっているが彼は実態を把握していない、規模が大きい宗教団体という認識である。もちろん騎士カリムとの面識もない
クロノとエイミィの件だけでも頭が痛いのに今回の騒動は頭痛薬の消費を増やすのだが、出向してきたギンガが話相手になってくれるのが唯一の癒しであった
そして冒頭まで戻る。六課の面々とヴィヴィオの仲を深めようということで外で食べることになり、レヴィ・エリオ・ルーテシアに買い物を頼んだら3人はマグロの頭を大量に購入してきた。どうやらレヴィが暴走したのが原因だった
ネットで検索した調理方法で焼き上がったマグロの頭はヴィヴィオを怖がらせるには十分な怪物となってしまったが、シュテルから食べさせてもらい味には満足していた。しかしここに八神と守護騎士たちはいなかった
「なんやて!」
隊長室では八神はやての声が廊下にまで響いていた。目の前にいるシグナムから語られた言葉に立ち上がり座っていた椅子を倒してしまった
「ホンマなんやな。あの女の子が!」
「我々が10年前に襲った里の生き残りです」
「なんでそんなこと…そなら私は人の命を犠牲にして」
告げられた真実に彼女の心は押しつぶされそうになる。闇の書事件の時に守護騎士たちが他者に迷惑を掛けたのは知っていたが一線は超えていないと思っていた。家族を得た自分と全てを失った少女の対比は八神を苦しめるのに十分すぎた
「私は犯してしまった罪を…」
「償ったところで死んでしもうた人は…もう」
「ですが」
「公開意見陳述会で全てを包み隠さず話す!私に出来るのはこれしかないんや」
解任となったらゲンヤ・ナカジマに引き継いでもらおう。解散はカリムの予言を信じる本局や三提督の面々が食い止めるはず、自分は守護騎士の主として全ての罪を正面から受け続ける。それが命の火が消える直前まで
「アルフが帰ってきたのか?」
「うん、それなんだけどクロノに会えなくて」
マグロの頭バーベキューから数日後フェイトから呼び出された誠はクロノがいる『ダンカーク』から帰ってきたアルフのことを聞かされた
「会えなかったって…どういう意味だ?」
「病を患って入院って言ってた。それも面会謝絶だって」
「病気?それこそ療養でこっちに戻ってきても」
医療設備は本局やミットチルダの方が勝っている。復興の仕事を副官に任せて戻ってきても問題ないはず、責任感が強く投げ出したくないは理由にならない
「アルフが言うには何か隠しているような感じみたいって」
「怪しさ満点だな」
「リンディさんやエイミィには伝わってないよね?」
息子や同僚が入院しているのに彼女達がミッドにいるということは情報が止まっている。クロノからも伝わっていないのが確定している
「フェイト、執務官の権限で詳細を調べることは出来るか?」
「出来ると思う。でもどこを?」
「本局に提出された報告書があるはずだ!もしかしたら病気に関する記載があると思う」
「分かった取り寄せてみる」
自分たちの周りで何かが起きようとしている。胸のざわつきを抑えることが出来ない!マイナス思考は更にマイナスを引きつけてしまうものだ!その不安を打ち消すポジティブな要素は今のところ何も無い
「これが依頼された聖王教会についての内容です!」
地上本部に機動六課に関する定期報告書を出したついでに調査部へ寄った誠は渡されたデータを確認し、分からないところは担当した面々に質問をしていったが特に怪しいところは無かった。信者が多いのは他宗教に比べ厳しい戒律が存在せず緩いのが人気の要因だ
「この貸し出しってなんだ?」
「聖王教会はロストロギアの調査・研究を行ってまして本局で保管しているモノを調べているんですよ、それは貸し出しリストの一覧です」
「ふ~ん…考古学みたいなものか」
管理局と教会の関係を考えれば別に変なことではない、ロストロギアが歴史を紐解く為のヒントになるのであれば研究するのは当たり前である。しかし彼は手を止めてしまう
「貸したままのロストロギアが多いな」
「それだけ研究に難航しているのでは?」
「だとしても変だろ、終わっていない調査を投げ出して新しいことに手を出すか?」
「そうですね」
貸し出しを了承した人物は数年前から同一である。普通なら違和感を抱くはずなのにルーチンワークのように判子が押されていた
「今からレジアス中将のところへ行ってくる」
「こちらは貸し出し人の方をマークします。場合によっては手荒いことも」
「杞憂であってほしいが、すまないな無理をさせて」
誠は懐から封筒を取り出して対面にいる彼のポケットの中に投入した。調査がひと段落したらこれで打ち上げをやってくれということである。彼をとりまく嵐はどうやらカテゴリー5のハリケーンに変貌する様子をみせているようだ!
ヴィヴィオの処遇が難産でした。原作アニメでも何で機動六課で預かったのよ!という感じでしたし、一挙放送が木曜日までやっているんですが全部見る時間が無い
とりあえず局内に託児所を置けるかのテスト扱いにして幼女を六課に残しました
・なのはが本編後にリンカーコアに支障をきたして内勤になった場合
・誠が引き取ってシュテルママ誕生パターン
・フェイトが引き取るパターン
・etc.
先のことはまだ何も思いついていないので上記のことが可能性として存在します
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
今日は桜花賞、頑張れナムラコスモスと田口頑張ってG1制覇してこい