ゼストたちと別れてから誠は即行で技術部に戻った。主任技術者に土下座をする勢いで頭を下げて計画に必要なモノを提供してもらいオーリスにアポイントの電話を入れて了承の返事をもらった。フットワークの軽さと即断・即決で動けるのが彼の強みである
「(スカリエッティと戦闘機人の対応も考えないと)」
今まで後手の立場だったが、敵のアジトが判明しているのでこちら側から仕掛けることができる。しかし魔導士にとって天敵であるAMFを展開するガジェットや自身と同等の実力を持つ戦闘機人の存在により手出しがしにくい状態である
漫画やアニメなら仲間と一緒に敵を一網打尽にするのが王道の展開だが機動六課の後見人が持つ解除権限は1つしか残されていない、つまりどちらかしか選べないという状況なのだ!
『隊長と副隊長たちの制限を解除』
ホテルで戦った戦闘機人を基準とすれば敗北必須である。スバルたちが引き分けに持ち込めるだけでも奇跡と言えるレベルだ!自分がスカリエッティだとしたらガジェットで物量戦を仕掛けて疲弊したところ狙う。向こうのスタミナは豊富であり長期戦に持ち込まれたら勝機は0となる
『誠の出動制限の解除』
1人で全ての戦闘機人を無力化させないといけないが勝率としてはこっちの方が高い、しかしこの場合だと六課の面々は戦力外の足手まといになる。そして敵はそっちを狙い人質にしてくるであろう。八神や高町たちに出てくるなと言っても守らないのは火を見るよりも明らかである
【悩んでますね】
「生涯最大の負担が押し寄せているよ」
【信じてあげないのですか仲間を?】
「勝つ見込みがあれば信じるさ!でも戸愚呂弟が聖光気を纏った仙水と戦って勝てると思うか?」
【勝負になりませんね】
勝率は極めて低くレベル差は限りなく離れている現状だ!ポケモンのように能力を上昇させるドーピングアイテムなんて存在しない
「とりあえず先に中将とゼストの件を片付ける」
なんだろう気分が10年前に起きた闇の書事件と同じ漆黒に染まりそうになる。多忙で疲れているせいなのかもしれない
【マスター今回のことが終わったら、地球に戻ってリフレッシュしましょう!】
「そうだな誰も文句なんて言わないよな」
今まで頑張ってきたんだ少しぐらいゆっくりしても罰は当たらないはずだ!ヴィヴィオをプレシアたちに紹介してみよう。先の予定に思いをはせながらアコースに計画を実行する日取りの連絡を行ってから疲れた体をベッドに埋めるのであった
「オーリスから話を聞いているが持ってきたのか?六合塚三佐」
「昨今の事情を顧みてレジアス中将にも身を守ってほしいと思いまして」
「制服の下に着込む防弾チョッキのようなものか?」
誠の暗殺未遂から警戒レベルが引き上がり上層部では身辺警護の為にSPを雇った人もいるが、レジアス中将は自分以外の人物を優先させたことで裸のような状態である
「以前ホテルを襲った女性が着用していたスーツのデータを流用して作りました」
「手に持ってないようだが?」
「まだ試作段階なので中将と同じ背丈の人物を呼びまして、見てもらいたいのです」
「三佐の扱うスキルのマンションの中にいるのだな?」
その言葉に頷いた誠は壁に『四次元マンション』の扉を作り今回の主役を呼び寄せた。そこには生前に着用していた薄い茶色の局員服を纏ったゼストがレジアスの前に直立したのである
「久しいなレジアス!」
「ゼッ…おまっ…ゼストなのか?」
レジアスはまるで幽霊を見るような目で彼のことを見つめていた。誠は声が外に漏れないように防音魔法を施して部屋の鍵を閉める
「生きていたのなら…何故?」
「俺はあの日に死んだ!ここにいるのは終わりを悟ったゾンビにすぎない」
「ゾンビ…だと」
これまでの経緯を説明したゼストは彼に対して敵意が無いことをアピールし、曇りのない眼で1点を見つめながら問いただした
「レジアス…お前にとっての正義とはなんだ?」
「地上に住む者たちが家族と過ごし安心して明日を迎えることだ!それはここで働く局員も同じことだ」
「そうか…変わったな、昔は力と豪語していたのに」
「変えてくれたんだ六合塚三佐が、彼が地上に来てくれたおかげで生存率が格段に飛躍した」
親が布団で横になる子供に昔話を聞かせるようにパワードスーツが開発されるまでの出来事を口にしていった
「本局や海といがみ合って、無いものねだりをするのを止めてから見えなくなっていた道が見えるようになった。力を求めるあまり大事なことを見落としていた」
「大事なこと?」
「平和を求めるのは儂だけじゃなくて地上部隊に勤める全ての者たちが願っていたのだ!みんなこの世界が好きだから頑張っている」
「…そうか」
「時代を作るのは老人ではない!若い者たちのエネルギーが明日を作る。そんな彼等が働きやすい環境を作るのが先駆者の努めだと思う」
「あのエプロン姿はどうかと思うぞ!レジアス」
懐から週刊誌を取り出して奥さんと一緒に撮影された写真を見せて、からかうように笑っていた。赤面する彼は飛びかかろうとするが日頃の運動不足が祟ったのか動きが鈍い
「まだまだ語り明かしたいことがあるが、残り時間が許してくれない」
「命令だ儂が死ぬまで生き延びろ!」
「無茶を言ってくれる」
額から脂汗を流し呼吸が荒くなる。気力だけで今日まで無理やり生き延びてきたようだ!ふらつくゼストに誠が肩を貸そうとするが拒否されてしまう
「最期にお前と逢えて良かった!墓前に花はいらない」
「分かった!とびっきりに美味い酒を持っていく」
「先に行ってる。またそこで語り合おう」
そう言い残し閉じられたゼストの目は二度と開くことはなかった
「六合塚三佐、すまないが1人させてくれ」
「彼のことは任せてください、丁重に弔います」
「墓の場所が分かったら教えてくれ、ありがとうゼストの願いを聞いてくれて」
レジアスは泣いている顔を晒したくないのか手で覆い奥歯を強く噛んで声が漏れないようにしている。誠はゼストを布で包んで『四次元マンション』の中に入れて退出しようとするが呼び止められてしまう
「これを棺の中に入れてくれ」
「写真ですか?」
「入局した頃に撮影したものだ!同期がフィルムカメラを持っていたのでな」
40年近く前のモノで大勢の局員と一緒に若い2人が肩を組んでいた。ゼストは若々しい姿のイケメンだがレジアスは当時から眉間に皺を寄せたような顔をしている
「もう儂だけになってしまった」
悲しい声を背に受けて誠は退出した。なお防弾スーツは彼の机上に置いてきた
「ジャックさん」
【どうしました?】
「地球に戻ったら月村や恭也さんに会おう!」
思うではなく"会う"と言い切った。2人のことを見てモヤモヤを残したくないと感じた誠は避けていた旧友や剣道の師と向き合うことを決めた
【さっさと終わらせましょう】
「そうだな!」
「本当に1人でいいのか?はやてたちを呼んだ方が」
「足手まといになるし、単独の方がやりやすい」
誠とアコースはスカリエッティのアジトの近辺まで辿り着いていた。ここにいるのは六課の面々には内緒となっている
「向こうは切り札を失ってヤケを起こす可能性もある」
「だからって危険だ!」
「危険だからこそ俺がやらないといけない」
「死ぬ気か?」
「生き残るさ」
そう言ってデバイスを展開せずに私服姿のまま彼はアジトの中に堂々と足を踏み入れた
迎撃に現れたガジェットの攻撃を避けて素手で破壊する。放たれる砲撃が全てスローモーションのように見えている。ダンスのステップを踏むように躱し距離を詰めると蹴り上げて機能停止に追い込んだ
【マスター】
「ジャックさん、俺は転生者なんだ!」
【転生者?】
「命の珠や『四次元マンション』も与えられたモノなんだ!その中に成長力∞というのがあったんだけど、辛勝するのが多かっただろ?」
【そうですね】
鍛えているのに強さを実感することはなく、なんなら魔法を扱わない方が強いのではないかと思っていた。デバイス無しで格上の魔導士や使い魔に勝っているのが証拠である
「もしかしたらデバイスは力を抑える枷なんじゃないかと」
【枷ですか?】
「敵は魔導士にとって厄介なAMFを作り出したのに原始的な方法で突破されて、どんな顔をしているのかね?」
【カメラで撮影しておきましょう】
壁に触れてマンションの中から武器を取り出した。それは彼の伸長ぐらいの鋼鉄棍で技術部にお願いして製作してもらった『メタルシャフト』である。1本の棒と思いきや三節棍のようになると先端の速度は音速を超えてガジェットたちをスクラップにしていく
「ようやくお出ましか」
「会いたかったぞ!」
目の前にはホテルアグスタで対峙した戦闘機人とロングヘアーでピンク色の髪をした少女が立っていた。ピンクの方は額を防護するヘッドギアをつけている
「何しに来た?」
「騒動を終わらせに来た」
「ドクターがお前のことを気に入ってる」
「野郎に好かれるのは気持ち悪い」
敵として会わなけば互いを意識するライバルになれたのかもしれない、メタルシャフトを鋼鉄棍に戻して彼女に向ける
「先に言っておく、もしかしたら胸や尻を触ってしまう」
「構わない!こんなもの何の役に立つ?」
「男はそれに興味津々なんだよ!」
シャフトを床に叩きつけた瞬間に2人の姿は消え拳と拳がぶつかり合った
結構前の感想に「成長力∞」なのに弱いというコメントがあって、自分の中では「俺スゲー強い」をあまりやりたくなかったので、デバイスが能力を抑える枷という設定を昨日思いつきました。
最初はアジトに潜入してメタルギアのように隠れてナンバーズを『四次元マンション』の中に入れてゲットしようかと思ってました。
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