心配性の実力者は今日も鍛え続ける   作:大気圏突破

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ちょっと短め


事後処理はいつも大変

 因縁の果たし合いが終わった。これがスポーツなら互いの健闘を称え合うがラグビーのノーサイドという訳にはいかなかった。キャロの自滅という形で勝利者となった八神たちに拍手を贈るのは彼女に賭けたギャンブラーだけで視聴者を含め負けることを望んでいた人が多かった

 

 むしろ故郷を滅ぼされたキャロの為にル・ルシエ復興基金が有志によって設立され数多くの寄付金が集まり、かつて六課に在籍していたグリフィスの雇い主が代表を務めることになった。そして今回のことに関わった面々は事後処理に追われることになる

 

 

 

「クロノ君!」

「クロノ!」

 

 顔面に激辛香辛料、両足の小指損傷、大事な2個タマの粉砕など重傷を負ったクロノ・ハラオウンは病院へ担ぎ込まれ駆け付けた2人と久々の対面となった

 

「母…さん、エ……イミィ」

 

 全身に包帯を巻かれチューブが繋がれた彼の姿は痛々しい状態だったが、瞳から溢れる涙を拭うことを忘却し頬へ流れ落ちていく

 

「クロノ君…なんで?いままで、どうして」

「今は休ませてあげましょうエイミィ」

 

 リンディに諭された彼女は担当医に頭を下げて病室から退出し、渦中の人物を捜すため病院内を歩き回るのであった

 

 

 

「こりゃ年内の復帰は無理だな!」

「リハビリも入れると来年の今頃でも怪しいね」

「フェイト…隊舎に連絡して、六課の面々で次の配属先が決まっていない奴のリストの制作を急がせてくれ、八神のことだ手つかずの可能性がある」

 

 六課の解散は決まっているが満期ではないので一部の隊員たちの去就は未定だった。ゲンヤに全てを任せるのは酷なので誠の方も使えるコネを最大限に活用するつもりだ!

 

 

「誠……テスタロッサ、すこし」

「シグナム!」

「寝てなきゃダメだよ」

 

 病院着姿のシグナムが点滴スタンドに体重を預けながら廊下の椅子に座る2人のところへ向かってきた。30分前に確認したときはベッドの上で瞼を閉じていたのに

 

 

「怪我人は寝てろ!フェイト運ぶぞ」

「うん」

「待ってくれ頼みが…主の」

「部屋で聞いてやるから落ち着け!この剣術バカ」

 

 車椅子を借りてきた彼女と一緒にシグナムに割り当てられた病室に向かい、体に刺激を与えないようにゆっくりとベッドに寝かせると安心したのか呼吸が穏やかになる

 

 

「それで何の用だ!くだらないことだったら吹き矢で尻に麻酔針を刺すぞ」

「誠…それはちょっと」

「このバトルジャンキーには羞恥心で攻めないと駄目だ!」

 

 シグナムなら尻の筋肉に力を入れるだけで針を弾き飛ばすことが出来ると思う

 

「主の…はやてのことを、私が代わりにどんなところへ」

「八神を俺達のコネでどうにかしてほしいってことか?」

 

 

 彼の言葉にゆっくりと頷くが骨に響いてしまい顔に苦悶の表情が浮かんでしまう。血圧上昇と頭痛のダブルパンチを食らった誠は特大の溜息を吐いてナースコールのボタンを押した

 

「どうしました?」

「睡眠薬でも麻酔薬でも構わないから彼女を眠らせてください!」

「…はぁ?」

 

 そう言って彼は部屋から出て行きフェイトも後を追うのであった

 

 

 

「どうするの誠?」

「どうもこうも出来ない!人事はレティ提督の領分だ!俺達をドラえもんかアンパンマンだと思い込んでいやがる」

 

 2人のコネや人脈を駆使しても不可能なことは沢山ある。しかも提督と八神はグリフィスの件がきっかけで深い溝ができてしまっている。修復するのは不可能に近い

 

「ねぇ…はやてを私の秘書に」

「冗談でもたちが悪い!」

 

 生徒会のノリで六課を設立し身内人事で部隊を運営した結果が現状である。もし彼女をフェイトの秘書にしたら大炎上待ったなしだ!

 

 

「いた!フェイトちゃん、誠君」

「エイミィ…静かにしなさい」

 

 現時点で1番会いたくない2人と出くわしてしまった。もう嫌だ!クロノとの戦闘で疲れているのに、自分も怪我人なのに何で休ませてくれないの?というか高町はどこにいる?VIP席で別れてから1度も姿を見ていないが迷子なの?腹痛でトイレに立て籠っているの…あとでお菓子あげるから出て来てよ!

 

 

「すいませんクロノ君はどこに」

「とっくに病院へ運ばれたよ!」

「ありがとうございます」

 

 実は1時間前に行き先を聞いた高町なのはは、レイジングハートを起動して飛び立っていったが飛行許可の申請をするのを忘れてしまい空戦部隊の面々に捕まり取り調べを受けているのであった

 

 

 

 

「どうしてクロノ君がスカリエッティのところにいたの?教えてよ!」

「落ち着いて…エイミィ」

 

 病院の屋上では彼女が2人に問いかける。隠し通すことが出来ないと思った2人は報告書の件を伝えると、彼女は誠の胸ぐらを掴んで持ち上げようとしていた

 

「どうして教えてくれなかったの!」

「言ったところで解決したか?『ダンカーク』に向かって追い返されるのが分かっているのに」

「だけど…分かっていたんでしょ?クロノ君が消えていることに」

 

 フェイトは激昂するエイミィを諫めようとするが殺意に気圧されてしまう

 

 

「スカリエッティのところにいるのは今日知ったんだ!」

「あの時に見たクロノ君は本物だってこと?」

「いい加減にしてくれないか、俺だって負傷者なんだが」

「…ごめん」

 

 当たり散らかしたい気持ちは理解するがせめて相手を選んでほしい、詳しいことは本人たちに聞いてくれ

 

 

「これからどうなるの?」

「八神が勝ったからルーテシアの母親の解放は確定だ!あとはスカリエッティと戦闘機人だが、上層部が決めるはずだ!」

「誠君の『四次元マンション』の中にいるんでしょ」

「いるけど…会うのは駄目だ」

 

 彼女に対して攻撃を仕掛ける可能性は無いと思うが100%の否定が出来ない、興味本位で顔を突っ込まれると苦労するのは誠なのだから

 

 

 

「パパ~」

「ここに居たんですね」

「大丈夫なの誠?」

 

 屋上の扉を開けてヴィヴィオと大人モードのシュテルに子供状態のレヴィが入ってきた。ディアーチェは六課に残ってゲンヤと一緒に事後処理に追われている

 

 

「パパ痛くないの?」

「ヴィヴィオの顔を見たら元気になったよ!」

「じゃあもっと痛いのが治るおまじないをしてあげる」

 

 彼女はポケットの中からキャラクターモノのカットバンを取り出して誠の腕に貼り付けると「痛いの痛いの飛んでけ」と言ってベホマ級に効く魔法を施してくれた

 

 

「誠君っていつから子持ちになったの?」

「言ってなかった?」

 

 頷いた2人を見て彼はヴィヴィオとの出会いを含めこれからのことを語る。全部のゴタゴタが収まったら正式に彼女の父親になるつもりだ!

 

 

「休みが取れたら地球に行って師匠に報告するよ!」

「そうなんだ」

 

  

 娘は父親に抱き着くのが3番目に大好きである。1番はギンガで2番は大人モードのシュテルなのだ!最初の頃は高町にベッタリだったが今では近寄ることもなく与えてくれたウサギのぬいぐるみも玩具箱の1番下に埋もれてしまい、レヴィと遊ぶブタミントンとダンジョンダイスモンスターズが1番上に置かれている

 

 

「八神やクロノの去就を含めて色々と面倒なことが起きる」

「はやてさんは?」

「俺たちが見たときは寝ていたよ!とりあえず10年近くは冷や飯食いになるのは確定だと思っていい」

 

 胸に抱き着いていた彼女を頭の上に乗せて肩車の体勢にした

 

 

「あの子に任せるのは早かったのかしら?」

「規模は違うけど第17部隊の隊長は八神と同じ年だけど問題無かった。結局のところ姿勢の問題だと思う」

「姿勢?」

 

 全員の視線が誠に集まり、少し咳払いをした彼は淡々と説明する

 

 

「分からないことに対して調べるだけじゃなくて、経験者から直接意見を聞いてフィードバックして全員と共有して問題に立ち向かう姿勢、あとでいいやって思わずに気になったことをとことん調べて不安を打ち消す」

「はやてにはそれが出来なかった?」

「アイツは上辺だけだ!調べたとしても表面だけで内情を理解しようとしない、今までは運良くこなしていくことが出来たけどラッキーパンチもここまで」

 

 彼の腰がそろそろ限界を迎えてきたのでヴィヴィオを降ろしてシュテルに抱っこさせた

 

 

「成功体験って思考停止の麻薬なんだよ!上手くいったから次も同じ手段で成功すると思い込んでしまう」

「そうね耳の痛い話だわ」

 

 リンディも自身の過去を振り返り、若い頃の苦い思い出を浮かびあがらせて険しい顔をする

 

 

「クロノと今後のことを話してください!こっちも色々とやらないといけないことがあるので」

 

 

 そう言って彼は再び八神はやてが眠る病室に向かうのであった

 




とりあえず事後処理に奔走します

一応大きなバトルは無いと思います。誠君に安寧の日は訪れるのか?

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