心配性の実力者は今日も鍛え続ける   作:大気圏突破

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1つ質問、なのはAsの時にシグナムたちって地球以外の場所に赴いていたけど、騎士たちって瞬間移動出来るの?


決して正しい名前で呼ばれない

「吸血鬼か…」

 

 

 月村すずかは腕を組んで眉間に皺を寄せる誠のことが気になり声を掛けた。最近の彼は生傷を作って登校することが多くこの前は額から血を流しながら教室に入ってきた

 

「どうしたのロクゴウ君?」

「なんで普通の名字で呼ばれないのか考えていた」

「ごめんなさい」

 

 親しい友人やクラスメイトも彼のことを六合塚(くにづか)ではなく『ロクゴウ』と呼び担任も口にしてしまう

 

 

「とりあえずそれは冗談だ!」

 

 組んでいた腕を解くと大きく伸びをしながら背骨の関節をポキポキ鳴らして首も同様に低音を奏でていた

 

 

「なぁ月村…吸血鬼ってどう思う?」

「……っえ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間に心臓の鼓動はマッハの速度でリズムを刻み、額や背中におびただしい量の汗を生産していた

 

「どうしてそのことを…」

「なんだもう知ってるのか?献血センターの新しいマスコット」

「ふぇ…?」

 

 彼は机の中から1枚のクリアファイルを取り出して彼女に見せつけた。そこには注射器に跨るデフォルメされた吸血鬼が描かれている

 

 

 

「献血のマスコットに吸血鬼を選ぶなんて、デザインした人も洒落た感性を持ってるな」

「そっ…そうだね」

 

 上昇していた心拍数が一気に平常まで下がり、頬の紅潮も収まっていくのを感じた彼女は落ち着いて深呼吸をする

 

「しかしなんで吸血鬼って男で描かれるのかね?」

「女の人を襲うイメージがあるからでしょ」

「でも襲われるならセクシーな女の方がいいな」

 

 誠の意見にすずかは苦笑いを浮かべる。別に彼は更衣室覗きやスカート捲りはやらない男で偶に事故でラッキースケベが発動してしまうが必ず謝罪をして頭を下げる。悪意が無いので被害者も怒ることが出来ない

 

 

「ってか女の吸血鬼なら『鬼』よりも『姫』の方がいいじゃん」

「どういうこと?」

「太陽の光が弱点でしょ?つまり肌に紫外線のダメージが無くて綺麗ってことじゃん、それを『鬼』って言うのは変だろ、美しい女性なら敬意を込めて『姫』って呼ばないと……それなら日焼け止めが」

 

 彼の言葉は目から鱗が落ちるような感覚だった。人非ざる者は忌み嫌われる存在なのに独自の視点で物事を捉え考えている。変人だけど悪い人ではない

 

 

「もし私が血を吸う化物だったらどうする?」

「なんだそれ…?」

「ごめんね変な質―――」

「そうだな月村が飲みたいと思う血を作るな」

 

 予想していなかった答えにまたもや彼女の思考はバグを引き起こす

 

「血にも美味しい不味いがあると思うし脂っこいものを控えて健康的な食事を心掛けて」

「ちょっと…」

「出血の致死量ってどれくらいだったかな?2リットルぐらいなら大丈夫か」

 

 顎に手を当てている誠はブツブツと言いながら彼女に飲ませる為のプランを構築していく

 

「膝の上に乗って対面状態からの首筋や背中から襲われるように嚙みつかれるのは安直すぎるし、そもそも血を飲まれるのって眷属になるのか?そうなると月村がご主人様になるから」

「ちょっとストップ」

 

 彼の肩を掴んで大きく揺さぶって妄想の世界から現実に引き戻す

 

 

「あんたたちいったい何やってるの?」

 

 教室に入ってきたアリサ・バニングスが2人に近づいてくる。彼女の父は日米で大企業を経営しているビジネスマンである

 

「バニングス!今年の夏は吸血鬼と日焼け止めだ!」

「いや、なによそれ」

 

 新たなビジネスチャンスを見出した誠の言葉に、アリサは首を傾げながら疲れた表情で項垂れている親友の姿を見て状況を理解するのに時間を要してしまうのであった

 

 

「今から企画を通して撮影して間に合うと思うの!」

「遅かったか」

「でも面白そうだしパパに伝えてみましょう。もしかしたら来年のCMで使えるかも」

 

 アリサの言葉で誠の顔はキラキラと輝いて彼女のことを羨望の眼差しで見ている。そもそも献血センターからなんで日焼け止めCMの話になってしまったのか

 

 

「そういえば土手で何をやってたの!」

「土手?」

「鮫島が朝の散歩中にあんた見掛けてたの」

 

 机をバンバン叩く彼女をすずかが落ち着かせているのを見ながら誠は数日前のことを思い出していた。恭也とのトレーニングで木刀の横に薙ぐスピードが遅いと指摘されてしまった彼は強化方法を模索していた

 

「(今さらバットで素振りするのも効率が悪い)」

 

 ランニングのクールダウンをしながら土手沿いを歩いていると、近くのボクシングジムに所属する日本人ランカーが減量の為にサウナスーツを着用して走っていた。何度か顔を合わせているので会釈すると手を挙げて返してくれた瞬間に閃いた

 

 

 

「土手に杭を打ち込んでるですって!」

「木槌でスイングしながら」

 

 彼がやっていたのは『はじめの一歩』で主人公が行っていた丸太を側面に打ち込むトレーニングだった。流石に漫画のような丸太は用意出来なかったので柵を作る杭を用いている。もちろん帰るときは全部抜いて鉄橋の近くに置いてビニールシートを被せてある

 

「あんた世界チャンピオンにでもなる気?」

「とりあえずバレないようにしてね」

 

 美少女2人からの言葉を受けた誠は頷きながら1時間目の始業ベルの音を耳にして、なのはは遅刻するのであった

 

 

 

 

「君が恭ちゃんの弟子の誠君ね」

「俺いつから弟子になったんですか?」

 

 日曜日はプレシアの指導や授業は無い、これは彼女がアリシアとの時間を最優先にしているので誠とは別行動をしている。今日は日用品を揃えにデパートへ向かい昼食もそこで済ます予定だ

 

 訓練の日々が落ち着きくつろいでいた彼は電話で恭也に呼び出され自宅に併設されている高町家の道場に姿を現した

 

 

「もう弟子みたいなものだろ!」

「それで何で呼んだんですか?」

 

 否定の言葉を並べても無意味だと理解したので反論せずにスルーした。話したいことがあるなら電話や明日になればいつもの丘で顔を合わせるので、今回のこれは大事な用かもしれない

 

 

「私が気になって恭ちゃんに頼んだの!それに妹が君の作ったモノを壊したことについても言いたいことがあって」

「すまない、美由希は少しワガママというか」

「眼鏡が似合う美人なお姉さんの頼みなら年中無休で受けますけど」

「じゃあOKってことね」

 

 彼女が用意した座布団に腰を下ろすがスカート姿で胡坐をかくのは色々と見えてしまう。そして美由希は深く頭を下げて謝罪した

 

 

「本来なら妹のなのはにも謝らせるつもりだったけど、ちょっと気難しいところがでちゃって」

「頭が冷えたらお願いします」

 

 同じクラスだが顔を合わせることはなく言葉も交わさない、一言「ごめんなさい」と口にするだけなのに一歩を踏み出すことが出来ないのだ。今日も予定を作って外に出ている

 

 

「謝罪を受けたので帰りますね」

 

 誠は立ち上がって道場の出口に向かうが足が前に進まない、美由希に肩をガッチリと掴まれているのだ

 

 

「あら…最近の若い子は淡白すぎない?」

「いったい何を?」

 

 恭也に助けを求めようとしているが彼もニッコリと笑い両手には木刀を持っている。そして…

 

 

「美由希の目的はこっちがメインなんだ」

「じゃあ誠君、構えてね」

 

 このバトルジャンキー兄妹め!

 

 

「流石恭ちゃんの弟子を名乗るだけの実力だね」

「だから弟子じゃなくて」

 

 彼女の猛攻を捌きながら反論の言葉を口にするが余裕なんて1つも無い、瞬きをしただけで距離を詰められ呼吸を乱しにリズムを崩した攻撃を仕掛けてくる。完全に防戦一方ではあるが

 

 

「(スカートがひらついて見えそうで見えない)」

 

 誠の視線は揺らめくスカートの方に注がれている。攻撃の度に中の下着が見えそうになるが鉄壁のガードで露出することなく揺らめいている

 

 

「よそ見は厳禁!」

「なんの」

 

 上段からの攻撃を防御しながら彼女の顔を見つめる。謝罪していたときとは違い凛々しい顔立ちで笑みを浮べている

 

 

「ぐにに〜」

「ほらほら守っているばかりじゃ駄目だよ」

 

 その前に小学生相手に高校生がマジでやらないでいただきたい!年の差を考えてほしい

 

 

「(それならこっちだって)」

 

 身体強化魔法を使って一気に木刀を押し返すと彼女はバランスを崩しながら後退する。しかし彼は一歩で距離を詰めると追撃の手を緩めない、上段を意識させながら胴がガラ空きになった瞬間を捉えて木刀を振り抜くが

 

「ざ〜んねん、でも凄いね」

 

 狙いを防がれてしまうが誠の狙いはここだった。今の自分は無防備である。当然彼女は勝負を決めようとするが、勝ちを意識した瞬間に人は気が緩んでしまう。今までの剣速より遅い攻撃で仕留めようとしている

 

「(ここッ!)」

 

 下から斬り上げるように美由希の手首に目掛けて攻撃仕掛けて木刀をはたき落とす……つもりだったが

 

「あぐっ!」

 

 彼女の蹴りが腹にクリーンヒットしてしまい防御も出来ず吹き飛ばされてしまったが

 

 

「(青の紐パン)」

 

 拝めることが出来なかった下着を目に焼き付けることが出来た誠は満足そうな笑み浮かべ大の字のまま意識を失った

 

 試合に負けたが勝負には勝った!なお2人は父親にこってりと絞られ誠は母親の膝枕で目を覚ますのであった

 

 




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