バトルビデオを文字化してみた 作:名無しのドーブル
ヒカリなりキョウヘイなりお好みで
ご想像下さい()
――煌々と輝く日差しが、戦場を照らしつける。
コータスが呼んだ晴天が、戦場を白く灼いている。
その中心でリザードンが熱を纏う。
赤い光というより、
もはや小型の太陽がそこに輝いている
そう錯覚する程の、熱気。
相手はルカリオとマニューラ。
何をしてくる。恐らく両方速攻アタッカー。
襷か、鉢巻か――持ち物はその辺りだろう。
ならば纏めて焼くしかない。
先に動いたのはルカリオ。拳がコータスへめり込む。
だが鈍い音が響くだけで、巨体は崩れない。
その黒く輝く甲殻が、衝撃を受け止める。
その衝撃を受け止めた隙に、コータスは地を鳴らす。
ひび割れた地面から尖った岩がせり上がり、
相手陣へと散開する。
退路を削る礫――ステルスロック。 陣は張った。
リザードンがすぐさま追撃に移ろうと翼を広げるが、横合いからマニューラが踏み込み、
鋭い一打で動きを止める。
わずかな硬直。次の瞬間、違和感。
ルカリオが、静かに重心を落とす。
何かを待っているような姿勢。
そして、マニューラが動く。
刃が閃く。その鋭刃はリザードンに向かう
――そう思った瞬間、軌道が逸れる。
なぜか、ルカリオへ。
「……は?」
思考が一拍遅れる。
目の前にはリザードンとコータスがいる。
にもかかわらず、マニューラは味方へ刃を重ねる。
一撃、二撃。
何をしている……?
不気味なその光景に、こちらは踏み込めない。
警戒か、困惑か、自分でも分からないまま
静観するしかない。
三撃、四撃。
そこで気づく。ルカリオの気迫が膨れ上がっている。
波動が、増幅している。
削っているはずなのに、削れていない。
それどころか斬撃のたびに膨らんだ気迫は、
かつて ディアルガ が テンガン山 で放った威圧を
思い起こさせるほどの異様さへと変わり、
空気そのものが歪み、滲み出すようだ。
立っているだけで、場の圧が違う。
五撃、六撃。
嫌な予感が、喉の奥に刺さる。
「焼き尽くせ、リザードン、コータス!!」
直後、リザードンのオーバーヒート…火山噴火の如き
爆炎がマニューラを呑み込む。
しかし、膝をつき踏みとどまる。コイツが襷か。
だが、無駄だ。
続くコータスの熱風が両者を薙ぐ。
マニューラは焼き切れるが、ルカリオは崩れない。
踏みとどまったまま、木の実を齧る。体勢が整う。
マニューラは倒した。
だが、本能が警鐘を鳴らしている。
サイアクな目にあわされそうな予感が、する。
退いたマニューラの代わりに現れたのは パッチール。
場違いにも見える小柄な影に一瞬だけ思考が止まる。
だが迷っている暇はない。
俺が指示する間にパッチールが 跳ねるように
間合いを詰め、コータスを打つ。
猫だましか…小癪な。
巨体が怯み、動きが止まる。その刹那。
ルカリオを、見失う。
視界の端で何かが走る。
瞬間、リザードンが吹き飛ぶ。
太陽を宿した翼が、音もなく地へ落ちる。
――神速。
理解が追いつくより先に、炉が消えていた。
あの一撃の重さは何だ。神速は確かに威力が高いが、
それでもリザードンを一撃で倒せるほどの物
じゃない。鉢巻…ではない。さっきドレインパンチを
使っていた。命の球?…いや、そもそも奴は
妙な木の実を食べていた。なら、持ち物は関係無い。
さきほどまでの拳とは別物。圧倒的な衝撃。
必死に思考を巡らせる。何が起きた。なぜここまで威力が跳ね上がっている。
答えは、あの六度の斬撃の中にあったのか。
それとも剣の舞を、見逃したか。
だがもう遅い。
コータスは体勢を戻せない。
晴天だけが虚しく空を焼いている。
倒れたリザードンの代わりに繰り出すのは ハッサム。
赤い鋼が地を踏みしめる。鋏が軋み、空気を裂く。
「バレットパンチ!」
踏み込もうとした瞬間、相手が動く。
パッチールが引き、
代わりに現れたのは―― カポエラー。
着地と同時に回転、短く咆哮。
その威圧感が戦場を撫でる。
ハッサムの鋏が、わずかに鈍る。
踏み込みが重い。気迫が削がれる感覚。
威嚇だ……攻撃を、下げられた。
隣のコータスも圧を受けるが、巨体は揺るがない。
甲羅越しに煙が揺れるだけだ。
もとより特殊の砲台。さしたる問題は無い。
だがハッサムは違う。
それでも止まらない。
鋏が閃き、カポエラーを殴りつける。
金属音。だが手応えは浅い。
その刹那。
ルカリオが、コータスへ踏み込む。
「……っ!」
ドレインパンチ。
重い打撃が甲羅に沈む。
鈍い衝撃。
普通なら、倒れないはずだった。
丹精込めて育てた、パーティ一番の硬殻。
さっきは、余裕で受け止めた。
ルカリオで落とすなど、
例え2撃だからってできるわけがない。
だが――
コータスの脚が崩れる。地に伏す。
一瞬、音が消えた。
「……は?」
信じられない。
今の一撃で?
この耐久を?
それも弱点ではない打撃で?
視線がルカリオへ向く。
拳を引き抜いたその身体から、
光が逆流するように集まっていく。
吸い上げた体力。傷が閉じる。
余裕を取り戻している。 …冗談だろ。
こちらがコータスを戻す動きを見て、相手が笑う。
薄く、余裕を含んだ笑み。
「ふふ……何が起きたか、まだ分かってなさそうだね」
ゆっくりと語り出す。
「鍵はさっきのマニューラさ。あの子の袋叩き。
そしてルカリオの特性――夢特性、正義の心」
ルカリオの燃える様な瞳が、静かにこちらを見る。
「悪タイプの技を受けるたびに攻撃が上がる。それを、手持ちの数だけ当てる袋叩きと組み合わせた」
六度の斬撃が脳裏をよぎる。
「今のルカリオの攻撃力? ざっくり――」
少し考え、肩をすくめる。
「例えるなら…そうだね。あのガブリアスが
剣の舞した時よりも上、って言ったら、驚く?」
空気が、冷える。
「さて。どうする?」
コータスの後に投げるのは―― カイリュー。
ボールが弾け、巨体が空へ舞い上がる。
ならば。
神速を撃たれても、マルチスケイルで一発は耐える。
他の技なら先に動き、地震で叩き落とせる。
そこから舞えれば、まだ戦える。
相手が最初から飛ばしてくるとは思わなかったが、
それならこっちも対抗札を切る。
まずはあのルカリオを処理しないとまずい!
焦りが喉を焼く。
「ハッサム、バレットパンチ!
カイリューは、地――」
言い終わる前だった。
カポエラーが、再び回転する。
嫌な軌道。
踏み替えからの半歩詰め。重心を沈めた瞬間、
下から掬い上げる角度で爪先が顎を打ち抜く。
的確に脳を揺らす一撃に翼が、止まる。
――猫だましだ!
「ッ、しまっ―――」
その致命的な一打に歯噛みする間すらない。
怯み。ほんの刹那の停止。
ほんの刹那。
だが、それで十分だった。
一瞬遅れて、理解が追いつく。
今の一撃で――マルチスケイルが、剥がされた。
守りの鱗が砕ける。
満身でなければ成立しない絶対防御。
その前提が、崩された。
視界がぶれると同時に、ルカリオが消える。
次の瞬間、カイリューの身体が後方へ弾き飛ばされる。
閃光のような、それであって暴風のような、
圧倒的な暴威の塊。
間に合わない。さっきまでなら
余裕で耐えられたはずの一撃。
だが、護りはもうない。
マルチスケイルを失ったカイリューに、
あの溢れんばかりの波動を纏った拳が直撃した。
巨体が地へ沈む。 音が遅れて届く。
息が、止まる。
止めるはずだった。 耐えて、返すはずだった。
その前提が、わずか一手で崩壊した。
猫だましで先に削られ、
間髪入れずに叩き込まれた神速。
完璧な連携攻撃。
背筋が冷える。遅れて放たれたハッサムの
バレットパンチがカポエラーを打つ。
金属音、だが浅い。ほとんど効いていない。
盤面を見渡す。半身以上を保ったルカリオ。
独特な踊りを丁寧に続け、揺れるカポエラー。
こちらは、命の球を持っているとはいえ、
威嚇で攻撃の下がったハッサムのみ。
こっちの残数は3体、相手はまだ、5体。
一気に足場が崩れ落ちていくような感覚。
もはや劣勢なんてものじゃない。――負ける。
いや、まだだ……まだ、諦める段階じゃない!
「行け、エンテイ!」
ボールが弾け、炎帝が降り立つ。
大地が低く唸り、揺れる鬣、獰猛な咆哮とともに
灼熱とは別種の威圧が戦場を押し広げる。
圧倒的な存在感。その瞬間、先程まで余裕を浮かべていた相手の表情が僅かに引き締まった。
――まだ、勝ち目はある。
間髪入れず叫ぶ。
ほぼ同時に、相手の声も重なった。
「「神速!」」
二つの指示が同時に同じ技名を刻む。
刹那、視界から両者が消えた。
爆ぜる空気、擦れ違う残光、
衝突音は遅れて鼓膜を打つ。
一瞬の攻防。
視界が定まったとき、そこに立っていたのは…
無傷のルカリオ。
そしてこちらの足元へと吹き飛ばされ、
地面を削って転がる エンテイ。
巨体が止まり、動かない。
威力差――それだけで十分だった。
相手が勝ち誇ったように口角を上げる。
だが。
「こっちも、お返しだ!」
振り抜かれていた鋏。
ハッサム のバレットパンチが確実に届く。
鈍い衝撃とともに、回転を止めたカポエラーが
膝から崩れ落ちた。
カポエラーが赤い光に包まれて戻る。
次は何が出てくる……?
まだ、まだ希望はある、はず……。
だが、現実は非情だった。
蒼き機体のような流線が空気を歪ませて
浮かび上がる。 空間を押し広げるように
顕現したのは、ラティオスだった……。
こちらに残るのはフシギバナとハッサム。
ボールが弾け、花弁が開く。
ーー破滅への足音が、確実に目の前まで迫っていた。
「フシギバナ、ヘドロ爆弾!」
紫煙が弾け、ラティオスへ一直線に突き刺さる。
「ハッサム、バレットパンチ!」
赤い残像が追撃する。
二方向からの総攻撃が直撃し、
空中で体勢を崩すラティオス。
鱗片が散り、明らかに深手――だが、落ちない。
蒼い瞳がこちらを射抜き、念が収束する。
「サイコキネシス!」
空間が軋み、不可視の力がフシギバナを捉え叩きつける。
地面が砕け、花弁が舞う。
それでも襷が繋ぐ。
ギリ、と踏みとどまる。
――しかし。
相手陣から青い光が迫る。
ハッサムはバレットパンチを撃った直後、
鋏の反動が残り、体勢が流れている。
そこへ滑り込む影―――ルカリオだ。
一瞬で懐へ入り込むと、拳を深く引き絞り、
そのまま紅い鋼の外殻へとねじ込んだ。
「ハッサム!!」
鈍い衝撃音。衝突と同時に緑色の粒子が弾け、
衝撃の中心から光が奔流となって
ルカリオの腕へ吸い上げられていく。
傷を奪い、力へ変換する、奪取の一撃。
紅い背中は、揺れながらも倒れない。
――一発、耐えたか!
ならまだ、やれるか!
「ハッサ――」
しかし、奇跡は続かない。
膝が折れ、鋼の躯体が静かに崩れ落ちる。
残されたのは、振り抜いた拳から淡い回復の光を収束させ、静かに構え直す波動の勇者――ルカリオだった。
――万策尽きた、か。
陽光を収束させ極光を解き放とうとするフシギバナ。
だが、それよりも早く、
相手のルカリオが地を蹴った。
一瞬でフシギバナの懐まで間合いを詰めると
鋭く踏み込み、花弁の隙間から
その巨体の芯を正確に撃ち抜く。
衝撃は下から上へと突き抜け、
その躯体を無理やり浮かせた。
密林に根を張る大樹の如き重量が宙にほどけ、
フシギバナの身体が大きく弾き上げられる。
そして遥か上空で蒼き龍が吠える。
咆哮が戦場を震わせ、それに呼応するように、
はるか上空が閃いた。
雲の向こう、天蓋のさらに奥から、
赫い光がいくつも尾を引いて迫る。
「チェックメイト」
静かな宣告。
巨大な赫い弾丸が戦場へ降り注ぐ。
一発、二発と着弾し、大地を抉る衝撃が連鎖する。
その混乱のただ中、ひときわ大きな流星が、
宙に打ち上げられたフシギバナを貫く。
正直、それが捉えられていたかも怪しい。
次の瞬間、世界は土煙と爆音に包まれる。
キィィン――
鼓膜の奥で甲高い残響が鳴り続ける。
落下の衝撃波が空気を押し潰し、思わず顔を庇う。
やがて煙がゆっくりと晴れ――
そこにあったのは、倒れ伏すフシギバナ。
その前に立つルカリオ。
拳を固め、荒い呼吸の奥で波動が脈動している。
ドレインパンチで奪った活力が全身を巡り、
傷は浅く、闘志はむしろ増していた。
そして上空。
流星を撃ち終え、わずかに高度を保ったまま
こちらへ視線を逸らさない ラティオス。
静かに戦場を見下ろしている。
勝敗は、決した。
(―――◎―――)
「ま、頑張った方じゃない?」
そう言って相手が歩み寄る。
ラティオスが静かに降り立ち、ルカリオも
主の隣へ寄ってくる。
「なんなんだよそのルカリオ……
あんなん打つ手ないんだが?」
イアの実で致命圏を抜け、ドレインパンチで殴る度に
勢いを取り戻し、みるみるうちに戦意を
取り戻していったあのルカリオ。
そもそも、何故晴れ熱風を受けて立ってられたんだ…
「いやまぁ、普通におまえのミスだぞ?」
あっけにとられる私に、ルカリオの頭をなでつつ、
相手はさらりと言う。
「あそこ、ステロが定石として一手目に打つのは
仕方ないとして、その後すぐ鬼火入れれば
半ば機能停止にはできたはずだ。猫だましを受けて
尚リザードンの攻撃をマニューラに向けたのも
減点だけど、それを抜きにしても冷静に
盤面を見ていれば接戦にはできたはずだけどなぁ」
鬼火。完全に盲点だった。
「マニューラの辻斬り警戒したのだろうけどさ。
悪氷タイプと鋼格闘タイプだぞ?
有効打なんて大して持っていないのにねぇ」
「私も私も」と言わんばかりに、
ラティオスが頭を押し付けている。
それを撫でつつ、■■はこちらへと目をやり、
静かに口元を緩めた。
溢れる感情で一杯になった私は天を仰ぎ――
「なんで負けたか、明日までに考えてきてください」
「ちくしょおおおおおおお!」