進撃の巨人---lostpeople   作:mokahurapeto-no

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開戦

「誰だお前?」

 

 シガンシナ区、上空に男の声が響いた。

 

 ガタイのいい男は心底不思議そうに声を張り、もう一人の男は腰を落とし警戒する。

 

 だが、対峙する男はモノともしない。

 

 突風が吹いてくる。

 シガンシナ区城壁の上のため、とてつもない突風が吹く。

 

 常人なら振り落とされているであろう突風。

 

 だが、この場にいる三人は気にしてさえいなかった。

 どれほどの訓練と経験を積んでいるのだろうか。

 

 まるで、この場に熟練の兵士が集まっているような圧迫感。

 

 しかし、いまだに目の前にいる一人の青年は沈黙を貫いている。

 

 「何故俺たちの名前を知っている、答えろ」

 「なんでだとてめえは思う?」

「...マーレ出身か?」

「へぇ、マーレって国があるのか。パラディ島しかないと思ってたんだがなぁ」

「...チッ」

 

何なんだこいつは。

 どこまで知ってやがる。

 

 どちらにしろこいつは確実にやばい。

 

 戦闘は起こしたくないな。

 

 「お前!名前は何て言う」

「......クルーガー。エレンクルーガーだ。」

 クルーガーか。

 悪魔の民の名前にしちゃ珍しいな。

 どちらかというと、クルーガーはマーレ南部の収容区あたりでよく付けられる名前なんだがな。

 

 「クルーガー、お前の目的は何だ?」

「世界を救うことだ」

「何?世界を救うことだと?」

「ああ、そうだ」

「それと今回の行動は何の因果関係がある?」

「......」

「何も言わないという事か。」

 

  風がさらに強さを増す。

  雲がやたらと早く動き回る。

 

  戦いの予感を感知しているように。

 

 「今だったらまだ引き返せる。壁を壊すな」

 「壁を壊すなぁ?冗談じゃねえ!!そのために俺たちはここまでたどり着いたんだ!!」

 「ベルトルト、お前もか?」

 

「...しょうがないよ。」

 

 「そうか...」

 

 少年はがっくり項垂れて、視線を足元に置く。

 

 そうして、何かを決意したかのように目を血走らせ、正面を向く。

 

 「三分やる。その間に決めろ。壁を壊すか、アニを犠牲にするか」

 「なんでアニを!!?」

 「っち、最悪だ。」

 

 「お前らが気絶したアニを補給班の荷台に忍び込ませたことは知っている。」

 「見てやがったのか」

 「そのうえで言う。壁を壊すな。さもなくばアニは犯す」

 「こんのゲス野郎がぁぁああ」

 

 激高したベルトルトがエレンの胸倉をつかむ。

 だが、エレンは素早くベルトルトの腕をひねり、距離をとる。

 

 ベルトルトは荒い息を吹きながらも、体制を保つ。

 対して、エレンはフットワークを刻みながら流している。

 

 「やめろ!!二人とも」

 

 ライナーはエレンと対立するのはあまりにもリスキーだと考える。

 ひとまず二人の制圧と鎮静が最優先だと考え、前にでる。

 

 まさに三つ巴。一触即発の状況だ。

 

 三者三様の立ち位置ではあるが、共通して巨人の力は使わないという考えがあった。

 使ってしまえば最後、巨人化は最終兵器のようなモノ。

 

 各々が汗ばむ拳を握りしめる。

 

 戦闘が始まった。

 

 お互い自分の領域を考えながら各々横にジリジリと動く。

 

 均衡を破ったのはベルトルトだった。

 エレンになりふり構わず突撃する。

 

 対するエレンは構えをとり、突撃してきたベルトルトを受け流す。

 

 対してベルトルトはエレンに殴りかかる。

 右横から左にぶつける様なパンチを放つも、エレンは拳を受け止め、腰を落とし、背負い投げを使う。

 

 「かっはッッ」

 

 ベルトルトが叩きつけられ反射的に息吹を上げる。

 

 「ベルトルト!!」

 

すかさずライナーが向かうも、エレンが右後ろに蹴り飛ばす。

 

 ライナーは勘づく。

 

 クルーガーは時間稼ぎをしていることに。

 倒れているベルトルトを追撃しない意味。

 

 自分を一歩押せば壁から落とせる。

 なのに、こちらに向かってこない意味。

 

 確信に近いものを得ていた。

 

 「プシュー」

 

 空に閃光弾が上がる。

 

 上がったと同時に、クルーガーがにやりと悪魔の様な笑みを浮かべたのをライナーは見逃さなかった。

 

 「ここまでだ。」

「あぁ?!何だと!」

 「あれは協力者からの合図だ。お前らが凶行をした場合、安全は保障しない。」

 

 エレンは誰を人質にしようとも、ライナーが凶行をする可能性を知っていた。

 だから、アニが必要不可欠だった。

 

 あの作戦はベルトルト無くして成功はない。

 だから、ベルトルトは必ず...

 

堕ちる。

 

 「分かった。僕らは壁を壊さない。」

 「!?何を言ってんだ。ベルトルト!!」

 「ライナー君が何を言おうとも、僕はこの考えを変えない。」

 

 ライナーは良く知っている。

 この男は一度決めたことは覆さないことを。

 

 「...分かった。俺も従う」

 「アニの解放場所は後で連絡する。お前らはウォールマリア南西部、ウガン地区に行け。そこに空き屋がある。そこで支持を待て。」

 「分かった。」

 

 「じゃあな。」

 

 その男は、後ろに倒れ、宙に舞った。

 

 「なっ」

 

 慌てて、ライナーたちは地面に這いつくばり、下を覗き込む。

 

 クルーガーは自由の翼を背に、何かの装置で飛び回っていた。

 

 「いったい何だったんだ。あいつは」

 

 戦いは終わった。

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 「はぁはあ」

 

 くそっ、手の震えが止まらねぇ。

 一歩間違えたら、すべてが終わる。

 

 気持ち悪い、吐きそうだ。

 

 だが、何とかライナーたちの前では体裁を保てた。

 あいつらに俺の動揺はばれていない。

 

 交渉も成功した。

 最悪、奴らと交渉決裂しそうだったら、アニの裸の写真を見せていたところだった。

 

 これがあればさすがに信用するだろう。

 

 とはいっても、手を出してはいないが。

 

 一先ず、あの日は訪れない。

 なんとか...なった。

 

 はあ...

 

 ミカサとアルミンに会いてえな。

 

 あいつら何してんのかな。

 

 アルミンはまあ、本読んでんのかな。

 ミカサは...不貞腐れてんのかな。

 

 今日、親父と出かけて来るって嘘言ったしな。

 

 実際、家出る前すごい不服そうな顔をしてたし。

 

 本当は俺はお前といたいんだけどな...

 

 

 くっそ、弱音をはいてる場合じゃねえな。

 次の行動を起こすか。

 

 父さんの方は今ごろどうなってんのかな?

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

 

 「ねえ、おじさん。私の服脱がせて楽しい?」

 「だから、違うんだ。別に君をどうこうしたいわけじゃないんだ...」

 「へえ、私のあんなとこや、こんなところ見たのに?」

 「だから、違うんだ。私には妻子がいて...」

 「じゃあ、不倫変態クソキモロリータおじさんてこと?」

 「...」

 

 その頃...グリシャは変態だった。

 

 

 

 

 「にしても、親子ぐるみで私を強姦するとはね」

 「いや、強姦してない...」

 「しかも、あんたの息子わたしと同い年ぐらい?」

 「ああ、そのくらいの歳だな。」

 「親子そろって変態なんだね」

 「...」

 

 アニははあとため息をつく。

 

 薄々こいつらは体目的で私をさらったんじゃないことはわかっている。

 私を裸にした時も、こいつらはそういう目で見てなかった。

 それどころか、任務を遂行しているような誠実さまで感じた。

 

 私は目を見る。

 人の感情が最も現れる部位。

 

 格闘技をするときの判断材料だ。

 

 イラついてそうなときは、大振りが来るから構える。

 逆に、落ち着いているときはこまごまとしたパンチ。

 

 そんなふうに判断した。

 

 だからまあ、私の貞操は心配ないだろう。

 

 いや、まあいいんだけどさ。

 奪われても。

 

 ただ、家に帰る。

 その目的だけ達成できたら、

 それだけで私は....

 

 任務は一時中断。

 

 あいつらと連絡が取れない以上、単独行動は出来ない。

 下手したら、巨人の正体がばれて、私が実験台にされかねない。

 それだけはごめんだ。

 

 願わくば、死なないことを祈っておこう。

 まあ、死ぬときは死ぬだろうが...

 

 こんな時ぐらい、神頼みでもいいだろう。

 

 ただ、あの日の夜が明ける。

 

 

  

 

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