500UA突破かんしゃぁ!!
「なんで、なんで芸能界をやめちゃったの!?」
咲希が海都に勢いよく質問する。
正直、私も気になっていた。だって、誰から見ても芸能界で大成功してる海都が辞める理由は無いように思える。
「…声明だったら出したはずだけど」
「あれだけじゃないでしょ!?」
完全に辞めたわけではない。本当は、無期限の活動休止という形だった。その時に発表した声明では『このまま続けたらいつか身体が壊れる』というような内容だった。でも、今の海都の表情はそこまで良いようなものじゃない。嘘をついてる顔だ。
「いや、あれだけだよ」
「どうして、嘘つくの…?」
海都は嘘をつくとき志歩と同じで目が完全には合わず、少しだけ間が空く。そして咲希たちの悲しそうな顔に弱い。そういう所も志歩にそっくりで、2人が兄妹だと思わせる。
「…分かったから」
「!!」
そして、海都は無期限活動休止になった本当の理由を話し始めた。芸能界に関しては素人の私でも今まで海都は成功だけだと思っていたのが間違いだと思い知らせされる。
「俺は、子供の頃オーディションで芸能界入りしたんだ。そこからはダンスと歌を毎日死ぬほど練習してたのに、テレビに出始めてからは他のメンバーには全部才能の一言で片付けられて本当に嫌だった。そりゃ才能が全くなかったらできなかったと思うけどさ。それからメンバーと仲が悪くなったんだ。もう耐えきれなくてグループ脱退と事務所も変えた。その他にも愛莉の起用も変えてほしいっていう願いも聞いてくれなかったし」
「…え?桃井先輩って事務所移籍しなかったっけ?」
ふと気になった事を聞いてみる。
桃井先輩が事務所を移籍したということは結構ニュースとして報道されていたので私も知っている。
「移籍前と後、どっちも同じだよ」
「…で、移籍後も自分の仕事はたくさんあったけど愛莉の起用は全く変わらなかった。愛莉の願いは聞いてたし、それでこれ以上愛莉を適当に扱うなら俺は仕事しないって言った。それでも上層部は何も変わらなかったよ。」
悔しそうな顔を浮かべる海都。
桃井先輩の事は自分が何とか出来たはずだと思っているらしい。私はよく分からない世界の話だが、そんなことないと思う。私利のために人を使っているやつはそう簡単に変わることはないだろう。
「それが辞めた理由ってわけ」
「そんなことが…」
今までの話を聞いて少し動揺している咲希。それはそうだろう、あんな芸能界のいわば闇の部分に触れてしまったのだから。
「アタシ、何にも知らなかった」
「別に悪いことじゃない、知らなくていいことだから」
動揺する咲希を海都はフォローする。前から思っていたのだが、彼は何故ここまで優しいのだろうか。普通の人とは比べ物にならないぐらい優しいのである。
「話も終わったし、そろそろ帰ろうか」
「うん、また遊ぼうね!!」
海都の発言から各々帰る準備をしだす。
咲希はまた遊ぼうと言っていたが、そのまたは来るのだろうか。
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一歌たちと遊んだ後で、俺は帰路につく。
ふとスマホのプレイリストを見ると、知らない楽曲が入っている。
「Untitled…?」
直訳すると無題か。いつもの自分なら絶対、何があっても押さないだろう。だけど、何故か今の自分は気になって押してしまった。その選択がこれからの俺の人生に試練として振りかかるとは知らずに…
《♪〜〜》
自分の体を眩しい光がつつむ。目を開けたらさっきまでのシブヤの景色は何処へやら、見たことない世界が広がっていた。
「あ、ようやく来たね!!」
「ハロー!私は初音ミクだよ!」
目の前に立っているネオングリーンの少女。確かに世間一般的のイメージとして出てくる初音ミクと合致している。しているが、初音ミクはボーカロイドで現実に存在するはずはない。
「いや、初音ミクが存在するわけないでしょ」
「なら触れてみる?」
そして実際に触れてみると何故だか感触が確かにあった。おかしい、ここはどうやら実際の世界とは少しいや、だいぶ異なるところみたいだ。
「ふふ、納得したみたいだね」
「ここは君の想いで出来たセカイだよ」
俺の予測はそこまでおおそれた物ではなかったようだ。でも俺の想いでこのようなセカイを生み出すとはあまりはい、そうですかとは言えるものではない。
「ちなみにこのゲートは?」
果てしなく広がる草原に無機質なゲートがぽつんと置いてあるのはとても違和感がある。
「これはね、他のセカイに行くことが出来るんだよ」
「セカイって誰でも生み出せるものなのか?」
今のミクの言い方から考えると今いる俺のセカイ以外にも他の誰かの想いで生まれたセカイがあるということだ。それなら誰でも作れるのか少し疑問に思う。
「そんなことはないよ」
「セカイが作れるのは選ばれし者だけ」
どうやら違ったようだ。なら誰が作れるのかが気になってくる、もしかしたら俺の知り合いが作れたりするのだろうか。
「じゃあミクは他のセカイにおける想いの持ち主が誰か分かるのか?」
「分かるけど、君には言えないかなぁ〜」
口笛を吹きながらクルクル回って楽しそうに話すミク。きっと俺がセカイに関する全ての疑問を解決するまで帰らないと思っているのだろう。
「それに、まだセカイが生まれてないしね」
「なるほどな」
ミクの言うとおりだ。いくら他のセカイに行けるとしてもそもそもセカイが生まれなかったら元も子もない。
「あ、帰るときはUntitledを止めたら帰れるよ」
「親切にどうも」
ミクの知ってることは全て話したような感じだ。俺としても結構収穫があったし、今日のところは帰らせてもらうとしよう。