【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 作:まだら模様
今回はホークスがステインが犯行を行う現場に向かうようですが…?
相変わらず勢いで書いてるので誤字やキャラ崩壊等あるかもしれません、
どんどん指摘していただいて構いません。皆さんで作品を作り上げて行きましょう!
感想、評価付与は直哉の投射呪法が加速する起爆剤になります。
職場体験二日目の朝。
事務所のミーティングルームで、ホークスが地図を広げていた。
福岡ではなく、保須市の地図だ。
「――というわけで、ちょっと出張が入ってね」
ホークスは直哉を見た。軽い笑顔だが、目が笑っていない。この男の目は、常に何かを測っている。直哉は昨日の時点でそれに気づいていた。
「ヒーロー殺し・ステイン。最近また保須市で目撃情報が増えてる。うちの管轄じゃないけど、上から『情報収集だけでも』って話が来てて」
「……ステイン」
直哉は手元のコーヒーカップを置いた。
知っている。原作知識として、当然知っている。刃渡り長めの剣を使う速攻型の殺し屋。個性は「血液を舐めることで相手を一時的に凝固させる」凝血。接近されなければ発動しない。そして思想に殉じた男だ。
(……まぁ、厄介ではある。原作の飯田くんらには、な)
「保須市まで、新幹線で行くん?」
「そう。今日は情報収集がメインだから、君には事務所で待機――」
「俺も行くわ」
ホークスが一瞬、目を細めた。
「危ないよ?」
「ステインが?」
直哉は鼻で笑った。そして、ホークスを正面から見た。
「翼? んなもんパタパタさせて……鳥さんは空飛べてええねぇ。でも、地べた這いずる俺の足に追いつけるん?」
沈黙。
ホークスがゆっくりと口角を上げた。
「……君、初対面のプロヒーローにそういうこと言えるの、ある意味才能だよ」
「褒め言葉として受け取っときます」
「俺が言ってるのは才能の話で、褒めてないんだけど」
「同じことやろ」
ホークスは笑った。今度は目も笑っていた。直哉には関係のない話だが、この男の笑い方は、何かを気に入った時だけ本物になる。
「いいよ、来て。ただし、俺の指示には従ってもらう。職場体験の生徒だから、現場に単独で飛び込むのは――」
「はいはい」
「……聞いてる?」
「聞いてますよ」
直哉はカップを手に取り、残りのコーヒーを飲み干した。
(退屈しのぎにはなるかもな)
新幹線の車内。
ホークスは隣の席でタブレットを見ながら、何かを書き込んでいる。直哉は窓側でスマートフォンを操作していた。
ニュースアプリに、速報が流れていた。
『雄英高校生徒・飯田天哉の実兄、インゲニウム――ヒーロー殺しにより重傷』
直哉は記事を一読した。
(来た)
原作通りだ。保須市のヒーロー殺しがインゲニウムを半身不随にした。飯田くんは職場体験でインゲニウム事務所に行くはずで、そして当然、原作では兄の仇を取りに行って返り討ちに遭いかける。
(緑谷くんと轟くんが助けに行って、三人でなんとか生き延びる話やったな)
「……どうかした?」
ホークスが横から画面を見た。
「インゲニウムが」
「うん。それで俺たちが保須に向かう理由の一つでもある」
直哉は記事を閉じた。
「エンジンがどうとか言うてたけど」
ぽつりと、独り言の音量で言った。
「結局壊れたん? 粗大ゴミやん」
ホークスの手が、一瞬止まった。
「……それ、飯田くんの兄の話だよ」
「知ってますよ」
「知ってて言える?」
「事実やろ。強かったんやろうけど、ヒーロー殺しに負けた。結果だけ見たら壊れた機械と同じや。何がいかんの」
ホークスはしばらく直哉を見た。
直哉は窓の外を向いたままだった。
「……君は、負けた人間を見下すんだ」
「見下してるわけやない」
直哉は静かに答えた。
「ただ、感傷で事実を歪めるのが嫌いなだけや。インゲニウムが負けた。それは事実。涙目で『可哀想に』って言ったところで、その人が強くなるわけやない」
ホークスは何も言わなかった。
直哉もそれ以上喋らなかった。
窓の外を、景色が流れていく。
保須市の駅に降り立ったのは、午後一時を過ぎた頃だった。
空気が違う。東京よりも、福岡よりも、どこか張り詰めた感触がある。街の人々の歩き方が、少し速い。目線が伏せがちだ。恐れというより、習慣化した緊張だ。
(ステインがいる街の空気やな)
直哉は周囲を観察しながら、ホークスの後ろを歩いた。
「まず情報収集から。現地の警察署に顔を出して、目撃情報の詳細を確認する。君は――」
「分かってますよ。待機」
「偉い」
「褒めんでいい」
警察署でのホークスの動きは、見事だった。担当者との関係構築、情報の引き出し方、相手に「話してよかった」と思わせる笑顔の使い方。全部が計算されている。
直哉はロビーのソファに座り、スマートフォンを確認した。
(……来るな、これ)
原作の時系列を頭の中で整理する。インゲニウム重傷の報が届けば、飯田くんは我を忘れて動く。雄英の職場体験期間中、飯田くんの配属先はインゲニウム事務所だ。つまり今、飯田くんは保須市にいる可能性が高い。
緑谷くんも何かを感じ取れば動く。
轟くんは…飯田くんに義理を感じるタイプではないが、緑谷くんが動けばついていくだろう。
(あの三人が路地裏でステインと鉢合わせる、か)
直哉はスマートフォンをポケットにしまった。
(退屈しのぎが、思ったより早く来そうやな)
ホークスが戻ってきたのは一時間後だった。
「状況が少し変わった」
ホークスの表情が、朝より鋭くなっている。
「目撃情報が今日だけで三件。しかも全部、同じ区画に集中してる。それと――」
その瞬間、外で爆発音が響いた。
遠くない。直哉の感覚では、二ブロック先ほどだ。
「脳無だ」
ホークスが即座に言った。
「現場を見てくる。君も――」
直哉のスマートフォンが、震えた。
見ると、緑谷くんからのメッセージだった。位置情報のピンが貼り付けられている。文字は短かった。
『禪院くん、いる? 飯田くんが――』
直哉は三秒で状況を理解した。
(来た)
「ホークスさん」
「なに」
「許可、出た?」
「……何の」
「現場に行くことと個性を使用する許可です。脳無はホークスさんが対処できるでしょう。俺は別の用事ができました」
「別の用事?」
直哉はスマートフォンの画面をホークスに向けた。位置情報だけ見せて、すぐに引っ込める。
「緑谷くんと、飯田くんに轟くんは仲良く地獄巡りでもしとんかな」
「……それって、ステインと鉢合わせてる可能性が――」
「高いですね。そやから行くんです」
ホークスが直哉の目を見た。
「君、雄英の一年生だよ」
「知ってます」
「ヒーロー殺しだよ」
「知ってます」
「死ぬかもしれない」
「死なんですよ」
言い切った。根拠のない自信ではない。ステインの個性を知っている。凝血。血液に触れることで相手を固める。つまり、触れさせなければいい。それだけだ。
「止める間もなく消えるから、今のうちに言うといてください」
「……飯田くんたちを守れるの?」
「守るとは言ってない」
直哉は立ち上がった。
「ゴミ掃除に行くだけです」
「分かった。プロヒーローホークスの名において、直哉の個性の使用を許可する」
ホークスがセリフを聞き取った途端に、直哉の足が床を蹴った。
一フレーム。
次の瞬間、ロビーには直哉の姿がなかった。
ホークスは一秒ほど虚空を見つめ、それから苦笑いを浮かべた。
「……本当に速いな、あの子」
送られてきた位置情報を頼りに、直哉は保須市の裏通りを駆けた。
投射呪法を常時展開している。曲がり角の先、路地の奥、すれ違う人間の動線。全部が一秒先まで見えている。障害物はない。人ごみを縫うように、最短経路で走る。
三分かからなかった。
角を曲がった瞬間、直哉の視界に路地裏の情景が飛び込んできた。
血の匂い。
まず、それを嗅ぎ取った。
次に、人影。三つ、地面に近い位置にある。そして一つ、立ったまま剣を振り上げている。
直哉は投射呪法で、振り上げられた刃の軌跡を一秒先まで追った。
落下先——飯田くんの首。
(間に合う)
足裏に呪力を集中した。地面を蹴る力が、瞬間的に跳ね上がる。
ステインの側頭部に、直哉の蹴りが入った。
乾いた音がした。
ステインが横に吹き飛び、路地の壁に叩きつけられた。剣が手から離れて石畳に落ちる。金属音が狭い路地に響いた。
直哉は着地した。
静寂。
三対一の死闘の最中に、どこから現れたかも分からない乱入者が突然現れて、誰もが硬直している。飯田天哉も、緑谷出久も、轟焦凍も。
直哉は三人を一瞥した。
飯田の右腕から血が滲んでいる。緑谷が指を数本使えていない。轟は立っているが足を引きずっている。
「……何これ」
直哉は言った。
声は穏やかだった。温度がない、という意味で穏やかだった。
「お遊戯会?」
誰も答えない。
「君ら、三人揃って地面の味見しとんの? 情けないねぇ、見てるこっちが恥ずかしくなるわ」
壁際で体勢を立て直したステインが、直哉を見た。
傷ついていない目だった。側頭部に蹴りを受けて壁に叩きつけられたのに、その目だけは揺れていない。信念というより、狂気に近い安定感だ。
「……お前も」
低い声だった。
「偽物のヒーローか」
直哉は肩の力を抜いたまま、ステインを見返した。
「ヒーロー? 偽物?」
京言葉が、静かに路地に落ちた。
「んなもん、どうでもええねん」
「……何?」
「君、さっきから『信念』とか『粛清』とか、えらい大層なこと抜かしとるみたいやけど」
直哉は一歩、前に出た。
「要はアレやろ? 自分が特別になれんかったから、世の中のせいにしとるだけの負け犬の遠吠えやろ?」
ステインの目が変わった。
殺気、と呼んでいいものが、狭い路地に充満した。直哉の投射呪法が、ステインの次の一手を追い始める。重心の移動。右手の握り直し。剣の拾い上げに向かう視線の動き。
「お前は何のために戦う」
ステインが言った。
直哉は答えた。
「俺が気持ちようなるためだけに決まっとるやろ、ボケ」
ステインが動いた。
速い。原作知識として知っていたが、実際に相対すると、その速度は飯田天哉が苦戦したことに納得感がある。素の身体能力が高い。剣の扱いが洗練されている。無駄がない。
だが。
(読める)
直哉の投射呪法は、「物体の直前の挙動パターンから次の一秒を予測する」術式だ。機械は完璧に読める。人間は、癖があれば読める。
ステインには癖がある。
剣を振る直前、右肩がわずかに落ちる。重心が前傾になる際、左足の踏み込みが一瞬早い。どちらも、おそらく本人は気づいていない。長年の実戦で染みついた「効率的な殺し方」の癖だ。
そしてその癖は、直哉の術式の前では「予告」と同義だ。
剣が来る。
直哉は一歩退いた。刃が鼻先をかすめる。呼吸を変えずに、右に流れる。ステインの体重が前に乗っている。その瞬間、直哉の左足が床を蹴った。
呪力集中。接触点に、力を乗せる。
ステインの手首を、横から打った。
骨が軋む音がした。剣が再び落ちる。
「速いつもり?」
直哉は距離を取りながら言った。
「怖いツラして睨んだら、俺が止まるとでも思った?」
ステインが剣を拾い上げようとしゃがんだ瞬間、直哉の足がステインの手を踏んだ。剣を踏み越して、遠くに蹴り飛ばす。
「君の『正義』も『殺意』も」
直哉は続けた。
声に熱がない。作業をこなすような、静かな言葉だった。
「俺の視界の中では、ただの静止画なんよ」
ステインが舌を伸ばした。
血に触れようとしている。凝血の発動だ。
だが、直哉の血は路地には落ちていない。傷一つついていない。
(そこが、君の詰みなんや)
直哉の術式は、「触れさせない」ことを前提にしている。接触を許せば終わる。だから許さない。それだけだ。
感情的になっている飯田天哉との最大の違いがそれだ。兄を傷つけた相手への憎しみで、飯田は接近戦に踏み込もうとした。結果、一度は血に触れられた。
直哉には、そういう感情の揺れがない。
ステインが暴力的な速度で間合いを詰めてくる。懐刀を抜いた。剣より短い。接近戦用の一撃だ。
直哉は投射呪法でその軌跡を追い、一フレームの加速で右に回り込んだ。ステインの左腕が空を切る。そのまま、直哉の肘がステインの胸骨を打つ。
呼吸が詰まる音がした。
「えらい必死やねぇ」
直哉はステインの背後に回り込んだ。
「信念のある人間が、こんなに必死なん? 俺、信念って、もっと余裕があるもんやと思ってたわ」
ステインが振り返ろうとした瞬間、直哉の指がステインの右手の指を二本、逆方向に折った。
短い悲鳴。
懐刀が落ちた。
「弱いなぁ」
直哉は呟いた。
侮蔑ではなく、ただの観察として言った。
「『ヒーロー殺し』て、大それた名前もろてるわりに、随分と……」
ステインが吠えた。
「お前は何も分かっていない! この腐ったヒーロー社会を粛清するために、俺は――!」
「うるさいな」
直哉の足が、ステインの鳩尾に入った。
膝が折れる。石畳に落ちる。
「聞いてへんから」
直哉はステインを見下ろした。
「君の思想とか、信念とか。俺に関係ない話やろ。雑魚の罪は強さを知らんことや。君はその罪を、社会への怒りで誤魔化してきただけやん」
ステインが顔を上げた。
血が口元に滲んでいる。目はまだ死んでいない。この男の芯の強さは本物だ、と直哉は思った。
思ったが、それは関係ない。
強さの質が違う。
(甚爾くんには、遠く及ばん)
直哉はステインの両腕を背後に捻り上げ、膝で背中を押さえた。
これ以上動けない体勢だ。
「……っ」
ステインが呻く。
「終わりやで」
直哉は静かに言った。
「騒いでも意味ないから大人しくしといて。喉が渇いてもここで血は舐めさせへんから」
路地裏が静かになった。
飯田、緑谷、轟の三人が、ぼんやりとその光景を見ていた。
直哉はそちらを一瞥した。
「飯田くん」
「……は、はい」
飯田の声がかすれていた。
「兄貴の仇、討てた?」
飯田が黙った。
「……俺が先に片付けてしまったから、不満かもしれんけど」
直哉は言葉を続けた。
「ほら、見た? 君らが苦戦してた『信念の男』とやらも、結局は俺に触れることもできんゴミやったわ」
「禪院、それは――」
「飯田くん、君の兄貴を壊したんは、この程度の男なん?」
飯田の表情が歪んだ。
直哉は続けた。
「……兄弟揃って、センスないねぇ」
「っ……!」
「けど」
一拍、置いた。
「君が怒って突っ込んでいったのは、弱くても馬鹿でも、兄貴が大事やったからやろ。それは」
直哉は視線をステインに戻した。
「……まぁ、俺の知ったことやないわ」
最後の言葉は、飲み込んだ。
「有象無象」と「ゴミ」の間にある、わずかな差。それを言語化する習慣が、直哉にはない。
足音が近づいてきた。
ホークスだ。直哉の投射呪法が気配を捉えていた。それより少し遅れて、轟が「誰か来る」と言った。
ホークスが路地の入口に立った。
状況を三秒で把握した。その三秒の間、表情は動かなかった。
「……無事?」
「見て分かるでしょ」
直哉は答えた。
「ステインは確保しました。傷はない。飯田くんらが少しやられてるから、救急頼んでください」
「……うん」
ホークスがスマートフォンを取り出した。
連絡している間、直哉はステインを押さえたまま、空を見上げた。
保須市の空は、どこか薄い青だった。
(たいしたことなかった)
そう思った。
戦闘の興奮もなく、達成感もなく、ただ「片付いた」という感覚だけがあった。
(甚爾くんと悟くん、真希ちゃんーあっち側はまだ遠い)
黒閃にも届いていない。領域展開どころか、展延の欠片もない。今日の戦いで使ったのは投射呪法と、足裏の呪力展開と、接触型の呪力集中だけだ。
ステインに通じたのは、相性がよかったから。ただそれだけの話だ。
(「信念の男」に、投射呪法が有効なのは当然や。信念は軌跡を変えへん)
剣の動き、重心の移動、体重の乗り方。それらはどれだけ「信念」があっても、物理法則に従う。投射呪法はその物理法則を読む術式だ。精神論は関係ない。
つまりステインが飯田たちに勝てたのは、飯田たちが「感情で動いていた」からだ。
感情は、軌跡を乱す。
直哉には、ない。
(その分、俺には別の弱点があるやろけど)
それは今日考えることではない。
救急車が来て、飯田たちが運ばれた。ステインは警察に引き渡された。
直哉はその一部始終を、路地の入口で立ったまま眺めていた。
ホークスが隣に来た。
「……本当に無傷なんだね」
「言ったやろ」
「ステインを一人で倒したの、雄英の一年生じゃ初めてだと思うよ」
「そうですか」
「すごいと思わない?」
「思わん」
直哉は空を見上げた。
「あいつが弱かっただけやから」
「……それ言ったら飯田くんたちが傷つくんだけど」
「もう言いましたよ」
ホークスが黙った。
「……まぁ、うん」
やがてホークスが苦笑した。
「君の性格、本当に難しいね」
「難しくないです。単純やろ」
「どこが?」
「強いのが好きで、弱いのが嫌い。それだけや」
ホークスは少し考えて、それからこう言った。
「じゃあ俺のことは好き?」
直哉は一拍置いた。
「……まぁ」
「まぁ、以上は?」
「以上はないです」
ホークスがまた笑った。今度は目も笑っていた。
直哉は関係ないと思いながら、ほんの少しだけ、この男が退屈しのぎ以上の何かを持っていることを、認めた。
認めたが、口には出さなかった。
出す価値が、まだない。
帰りの新幹線の中。
ホークスは報告書の下書きをしていた。直哉は何もせずに窓の外を見ていた。
「一個聞いていい?」
ホークスが顔を上げずに言った。
「なんですか」
「さっき飯田くんに『センスない』って言ったじゃん」
「言いましたね」
「あれ、本気で思ってる?」
直哉は少し考えた。
「……思ってますよ。才能があるかどうかは、今日の戦いを見たら分かる」
「でも飯田くんは、兄の仇を取りに行った」
「そうですね」
「それを頭ごなしに否定した」
「否定してない」
直哉は静かに答えた。
「俺は事実を言っただけや。飯田くんが感情で動いて、ステインに血を舐められた。それは事実。センスがないのも、今の段階での話や」
「……今の段階、か」
「成長するかもしれんし、せんかもしれん。俺には関係ない話やけど」
ホークスが少し笑った。
「優しいじゃん、そういうとこ」
「優しくないです」
「いや、優しいよ」
「…………」
直哉は何も言わなかった。
窓の外を、夜の景色が流れていく。
保須市が遠ざかっていく。
(あっち側は、まだ遠い)
直哉はそれだけを思いながら、暗い窓ガラスに映る自分の顔を、眺めていた。
※ステインが暴れた時間帯に原作改変があります。
よろしくお願いします、
ステイン戦、これにて決着です。
「信念」だの「粛清」だの、御託を並べていた刃物男でしたが……直哉からすれば「弱いくせに理屈ばっかり、みっともない」の一言に尽きるようです。
結局、速い奴が一番偉い。そんな直哉の横暴なまでの強さに「スカッとした!」と思ってくださった方は、ぜひ評価付与をして応援いただけると嬉しいです!
彼の「投射呪法」がさらに加速するかどうかは、皆さんの評価にかかっています……!
明日の次回は残りの職場体験での出来事についてのお話になります。
お楽しみに。